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第3回日本に注ぐ熱い期待!『Touchanote』『Dolphin Browser HD』来日インタビュー

2011年10月、シリコンバレーで行われたNinja Challengeの参加企業2社が日本最大級のWebアプリケーションコンテストMA7においてテーマ賞(Mashup Innovation on Android賞⁠⁠、協力企業賞(Evernote賞)を受賞しました。

MA7授賞式のために来日した『Touchanote』⁠Dolphin Browser HD』にMA7授賞式会場でインタビューを実施し、現在、彼らが日本に注ぐ熱い期待に迫ります。

Mashup Innovation on Android賞(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ)受賞
Touchanote
Founder Hamid Zaidi氏
VP Marketing Cyril Chaib氏
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
スマートコミュニケーションサービス部コンテンツ推進室コンテンツ支援担当部長
山下 哲也氏
サービス概要NFCタグに「タッチする」ことによって、アンドロイド端末から素早く簡単にEvernoteにアクセスすることを実現したアプリケーション。

Touchanote
Touchanote

日本の人々は、道具の使い方が上手く、ユニークで面白い利用方法が生み出されるので非常に参考になります

左:Hamid Zaidi氏 中央:Cyril Chaib氏 右:山下 哲也氏
左:Hamid Zaidi氏 中央:Cyril Chaib氏 右:山下 哲也氏
Q:Touchanoteが日本市場に注目する理由は何ですか?

Hamid Zaidi氏: Touchanoteは、カナダに本社を持つ企業です。2ヵ月前、米国でのローンチを皮切りに、日本、ロシアでリリースしています。言語は、現在、英語、フランス語、日本語、中国語、韓国語での5言語で展開しています。

現在、日本はマーケティング戦略上、重要な地位を占めています。

Touchanoteを利用するためには、NFCサービスが普及していることが前提となります。他の国と日本との最も大きな違いは、おサイフケータイなどにより、人々がモバイル端末を「タッチして」情報をやり取りすることに慣れていることです。ユーザのリテラシーの高さは他の国と比較になりません。

Touchanoteは、NFCにより、タッチするだけで、わずか0.2秒で情報にアクセスできます。⁠Touchanoteを入手したらどのように使いたいですか?」という質問を行ったところ、面白いアイデアが集まりました。中でもユニークな利用方法のひとつが日本の女性から寄せられたもので、TouchanoteのNFCタグを自分の勉強ノートに貼ってEvernote に保存するというアイデアです。

日本の人々は、道具の使い方が上手く、ユニークで面白い利用方法が生み出されるので非常に参考になります。

たくさんの女性デベロッパーが活躍していることに感動しました

Q:MA7授賞式の感想はいかがでしたか?

Hamid Zaidi氏: MA7授賞式では女性が多いことに驚きました。アメリカやカナダの北米でも、こういったIT系のカンファレンスに参加している女性を見かけるのはせいぜい2~3名位です。たくさんのアプリケーションが女性デベロッパーの手によって作られているのを目の当たりにし、多くの女性が活躍していることに感動しました。

Cyril Chaib氏: マーケティングの観点からも技術への関心があまり高くない女性の方々が我々のサービスに触れてくれることは重要です。

Touchanoteがギークな男性だけのものでなく誰でも使うことができるサービスであることを表しているからです。日本のプライムタイムのテレビCMを見ていても、ビデオゲームやテクノロジー関連のCMが多いことも印象的です。自然にデジタルに接する機会が多い背景の違いを感じます。

Touchanoteは、NFCの利便性をモバイル端末で実現する、良い見本を見せてくれました

Q:今回、NTTドコモがTouchanoteに賞を授与された理由は何ですか?

NTTドコモ 山下哲也氏: NTTドコモは、常に新しい革新を求めています。

我々は、おサイフケータイのようなイノベーションを起こすことに成功しましたが、どうしたら次のステップに進めるか大きな壁に直面しています。何故なら、NTTドコモで採用しているICカードシステムはナショナルスタンダードであり、グローバルスタンダードではないからです。

まだ、グローバル展開に向けた次世代への糸口を解決できていませんが、私はその答えをNFC技術に見出しています。NFCは、グローバルスタンダードであり、Google を始めとするプレイヤーも多数存在しています。彼らは、NFCを使った新しいビジネスを創造するために挑戦して、我々もグローバルスタンダードのレバレッジを製品に活かす努力しています。Touchanoteは、NFCの利便性をモバイル端末で実現するよい見本を見せてくれたと思います。

また、日本の主なICカードサービスは、おサイフケータイなど、Eコマースマーケットの用途にほぼ限定されています。私は、Eコマースは大きなマーケットの一部に過ぎないと考えていて、さらに広い活用方法を示していかなければならないと考えています。Touchanoteのように、より実践的なサポートを提示することで、彼らが世界を変えてくれることを期待しています。

左:Hamid Zaidi氏 中央:山下 哲也氏 右:Cyril Chaib氏
左:Hamid Zaidi氏 中央:山下 哲也氏 右:Cyril Chaib氏
Q:日本のユーザ向けてメッセージをお願いします。

Hamid Zaidi氏: ⁠タッチする」サービスにおいて日本ほど馴染みやすい国は他にありません。他のどんな国でも、まずタッチするという概念を浸透させることに対して極めて初歩的な段階からプロモーションする必要があり、多大な広告費を要するでしょう。日本は、我々にとって非常に価値のあるマーケットだと言えます。

TouchanoteとEvernote のアプリケーションは無料で手に入ります。NFCタグとNFCに対応したアンドロイド端末を持っていたら誰でも簡単に始められますので、ぜひトライしてください。

Evernote賞受賞
Dolphin Browser HD
Mobo Tap Inc.
ゼネラル・マネージャー
ビジネス開発責任者
Teak Chung氏
Evernote
Director, Partner Relations
佐藤 真治氏
サービス概要ジェスチャーでの操作を取り入れたスマートフォン向け高機能ブラウザアプリ。拡張可能なアドオンが特長。

Dolphin Browser
Dolphin Browser

モバイルリテラシーが高く、世界シェアの内、米国に次ぐ第2位を占める日本市場

左:佐藤 真治氏 中央:Teak Chung氏 右:プレゼンター
左:佐藤 真治氏 中央:Teak Chung氏 右:プレゼンター
Q:Dolphin Browser にとって、日本のマーケットはどのような位置付けですか?

Teak Chung氏: 日本は非常に重要なマーケットです。

日本でのDolphin Browserのダウンロード数は、日本語版公式リリース前に既に150万DLに達し、世界シェアの内、米国に次ぐ第2位を占めています。

元々、日本のモバイルリテラシーの高さには注目していたのですが、実際にダウンロードされた件数の多さは大きな自信につながりました。

現在、18言語で展開しているのですが、それらは公式ではなくボランティアベースでファンの方たちの厚意によって翻訳されたものでした。日本語版アプリは、ちょうど2日前(2011年12月9日)に韓国語版と同時に公式にリリースしたところです。

ジェスチャーを取り入れたユニークなユーザインターフェースも評価につながりました

Q:MA7受賞式の感想は、いかがでしたか?

Teak Chung氏: 日本でアワードを受賞するのは初めてだったので、とても嬉しいです。MA7の授賞式は、海外のイベントとはまったく違いました。エンタテインメント性が高く、まるで日本のテレビ番組を見ているような感覚でインスパイアされます。

Q:Evernote賞を授与された理由は何ですか?

Evernote 佐藤 真治氏: Evernoteのご利用方法として、Webブラウザからクリッピングする機能をお使いいただいている方が非常に多く全体の10~20%近くを占めます。WebクリッピングはEvernote にとって非常に重要な機能なのですが、モバイルに関しては、Evernoteでは上手に活かしきれていませんでした。

プラットフォームを提供するEvernoteとしては、ユーザにとってより有益なサービスを提供するため、我々からだけでなく、サードパーティの方にも便利なアプリケーションを提供していただくことがとても大切です。Dolphin BrowserのEvernoteアドオンのようなアプリケーションを今後もバックアップしていきたいと考えています。

従来のブラウザも使いやすさを訴求していたと思うのですが、Dolphin Browserはジェスチャーを取り入れることで、今までとはまったく違う大変ユニークなユーザインターフェースを実現しているところも評価につながりました。

Teak Chung氏と佐藤氏
Teak Chung氏と佐藤氏
Q:日本のユーザ、デベロッパーに向けてメッセージをお願いします。

Teak Chung氏: Dolphin Browserでは、ユーザにさらに満足していただけるよう、Evernote のようなビジネスパートナーを常に求めています。Dolphin Browser は、アドオン機能等によって、サードパーティーのパートナーとの協力がとても簡単です。今後も、Evernote アドオンを始めとした日本市場に合ったアドオンを提供していきたいと考えています。

また、我々は、⁠WebZine』というモバイル用のWebサイトをわざわざ作らなくてもモバイルで見やすく最適化して表示するサービスを提供しています。日本のメディア企業は、新しい感動体験を提供するのに積極的なので、ぜひ、WebZineにご登録いただければと思います。

Dolphin Browserでは、常に新しいサービスを実現しています。まずはその良さを知ってもらいフィードバックをいただきたいです。これからも改革を続けていくので楽しみにしていてください。

――ありがとうございました。

「Ninja Challenge」を機に「MA7」に参加した、TouchanoteとDolphin Browser。デバイスやWebサービスのグローバルな流れはすでに定着しています。海外から日本へ、今後の活発な交流に目が離せません。

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