OSSデータベース取り取り時報

第29回MySQL & PostgreSQL & Cassandraの主なニュース⁠PGConf.ASIA 2017イベントレポート

本年もこちらの連載をよろしくお願いいたします。今回はMySQLならびにPostgreSQL、そしてCassandraの2017年の主なニュースをご紹介してまいります。また、2017年12月に開催された「PGConf.ASIA 2017」では、PostgreSQLをテーマに豪華なスピーカー陣によるセッションが行われました。

[MySQL]2017年12月の主な出来事

2017年12月はMySQLサーバーやMySQL Clusterのリリースはありませんでした。11月30日にMySQL Shell 1.0.11およびMySQL Connector/J 5.1.45が、また12月9日にMySQL Connector/Net 6.10.5のバグ修正を中心とした各マイナーマイナーバージョンがリリースされました。また、商用版の監視ツールMySQL Enterprise Monitorは同梱されるOpenSSLやApache Tomcatをバージョンアップした4.0.2, 3.4.5, 3.3.7の各マイナーバージョンがリリースされています。特にMySQL Enterprise Monitorは同梱される製品のセキュリティ脆弱性への対策ともなっていますので、ご利用中のお客様はバージョンアップをご検討ください。

また、12月21日にNECから「Oracle MySQL(技術相談セット⁠⁠」として、商用版MySQLと独自の24時間365日の日本語技術相談対応をセットにした商品を2018年1月から提供開始する旨が発表されました。

2017年MySQL重大ニュース

ここでは2017年のMySQLに関する出来事を振り返ってきます。

1MySQL 8.0 Release Candidateリリース
次世代版MySQLサーバーの開発が進み2017年10月にリリース候補版に
2MySQL InnoDB Cluster GA
グループレプリケーションとMySQL Routerを組み合わせた高可用性パッケージリリース
3クライアントプログラム&接続部品のバージョンルール変更
MySQL 8.0の新機能をサポートするクライアント側のモジュールは8.0に統一
4Docker Images for MySQL Clusterリリース
Dockerの公式イメージとしてMySQLサーバーに加えてMySQL Clusterも提供開始
5MySQL 5.7 Secure Deployment Guide(英語版)
第28回でもご紹介したMySQLサーバーをセキュアに運用するためのガイドを公開
6NEC、商用版MySQLと24時間365日の日本語技術相談対応をセット化した商品を販売開始
MySQL Specialized PartnerであるNECによるMySQLソリューション
7MySQL 8.0での日本語関連機能の強化
MySQL 8.0にて日本語用Collation(照合)の追加やUTF-8利用時の性能向上など
8MySQL Clusterへの対応を強化したMySQL Enterprise Monitor 4.0リリース
GUIデザインの改良とMySQL Cluster構成の自動検出機能を追加

2018年は、MySQLは次期メジャーバージョンの8.0の製品版リリースに向けた開発が佳境を迎え、MySQL 8.0の製品版リリース後にはMySQL Clusterのメジャーバージョンアップも想定されます。クライアントプログラムなどのバージョンルール変更の記事の中では、バージョン番号の例として9という文字も登場していました。MySQL 8.0の先の世代の仕様策定に向けたコミュニティからの機能追加要望のヒアリングも重要な活動となっていきます。MySQL 8.0で実現するアプリケーション開発効率の向上から、より新しいアプリケーション開発への対応、さらにはクラウドプラットフォームやサービスのための改良など、この先もMySQLの進化から目が離せません。

[PostgreSQL]2017年12月の主な出来事

2017年11月22日にPgpool-II 3.7がリリースされました。このリリースでは10月にリリースされたPostgreSQL 10に対応したほか、Amazon Aurora対応、クオーラム合意方式のフェイルオーバ、ロジカルレプリケーション対応など多くの機能追加、バグ修正が行われております。

2017年PostgreSQL重大ニュース

ここでは2017年のPostgreSQLに関する出来事を振り返ってきます。

1PostgreSQL 10リリース
2017年10月5日にPostgreSQL 10.0がリリースされました。このリリースではロジカルレプリケーション、宣言的テーブルパーティショニング、パラレル問い合わせの大幅な拡充、同期レプリケーションにおけるクォーラムコミット、SCRAM-SHA-256認証などの改良が行われました。
2バージョン番号付与ルール変更
PostgreSQL 10よりバージョン番号の付与ルールが変更となっております。これまではメジャー番号は9.4→9.5→9.6と増えていましたが、今後は10.0→11.0→12.0とあがっていきます。次のメジャー番号は11.0となります。
3PostgreSQL 9.2のEOL
2017年9月にPostgreSQL 9.2はEOLを迎えました。2017年11月にリリースされたPostgreSQL 9.2.24が最終のアップデートとなり、今後はアップデートやセキュリティパッチの提供は行われませんのでご注意ください。
4JPUGリニューアル
2017年3月にJPUGのWebサイトならびにLet's PostgreSQLサイトがDrupal 8ベースにリニューアルされました。
5PGConf ASIAが今年も日本で開催
昨年に引き続き、今年もPGConfASIAが日本で開催されました。

PostgreSQL関連イベントのレポート

PGConf.ASIA 2017

アジア圏最大級のPostgreSQLイベントである「PGConf.ASIA 2017」が、12月4日~6日に東京秋葉原にて開催されました。

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昨年同様となる開発者向けセッションとエンタープライズ向けセッションに加えて、今年はこれからPostgreSQLを導入するビジネスユーザ向けのセッションが追加されました。

基調講演では、Moscow UniversityのOleg Bartunov氏が拡張性の高いPostgreSQLのUniversal Databaseとしての未来を示し、Equnix Business SolutionsのJulyanto Sutandang氏がインドネシアにおけるPostgreSQL導入の成功事例を紹介しました。

日立製作所の稲垣氏NTT OSSセンタの澤田氏NTTデータの石井氏アシストの喜田氏SRA OSS, Inc. 日本支社の石井氏日本 PostgreSQLユーザ会の高塚氏など、非常に豪華なスピーカー陣となっていました。

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また、最終日であるDAY2のオフィシャルパーティでは、LT大会とともに仮面女子によるシークレットライブ&握手会が開催されるなど異常な盛り上がりの中で閉幕しました。

当日の講演資料は一部を除きPGConf.ASIA 2017のWebサイトで公開されています。

[Cassandra]2017年12月の主な出来事

2017年の締めに合わせてApache Cassandraの情報を久しぶりに発信します。2017年から開発の進め方が従来のtick-tockリリース方式から変わり、少し長めの期間をおいてリリースをする方向でコミュニティとしては進んでいますが、ここに来て少し大きめな機能追加等の提案がなされています。

その1つは、コミットログのプラガブルにする取り組みです。動機としてはコミットログの格納場所としてフラッシュデバイスなどを活用するために、デバイスの特性に合わせて処理を効率よく行えるようにコミットログの読み書きのロジックをプラガブルにするというものです。

もう1つは、ストレージエンジンをプラガブルにするという取り組みです。こちらも、動機としてはデバイスやトラフィックパターンの特性に合わせたものを実装できるようにするということや、Apache Cassandra独自のものに限定するのではなく、広くオープンソース等で開発されているストレージエンジンを組み込めるようにするというものです。これらについては現在、提案者によって少しずつ実装が進められています。

Cassandraのリリース情報(2017年12月28日最新情報)

Cassandra version 3.11.1 2017年10月11日リリース
Cassandra version 3.0.15 2017年10月11日リリース
Cassandra version 2.2.11 2017年10月5日リリース
Cassandra version 2.1.19 2017年10月5日リリース

Apache Software FoundationのダウンロードページにDebianパッケージ、RPMパッケージの取得とインストールの方法が記載されています。また、過去のバージョンを含め、tarボール形式のものは同ページからリンクされているアーカイブからダウンロードできます。

Cassandraのドライバーリリース情報(2017年12月28日最新情報)

Java Driver 3.3.2 Cassandra 1.2以降に対応 2017年11月21日リリース
C# /.NET Driver 3.4.0 Cassandra 1.2以降に対応 2017年11月13日リリース
Ruby Driver v3.2.0 Cassandra 2.1、2.2、3.x対応、Ruby 2.2、2.3、2.4に対応、JRuby 1.7、9000をサポート 2017年5月16日リリース
C/C++ Driver v2.8.0Cassandra 2.1以降に対応 2017年11月22日リリース
PHP Driver v1.3.2 Cassandra 2.1以降に対応 2017年8月14日リリース
Python Driver v3.12.0 Cassandra 2.1以降に対応、Python 2.7、3.3、3.4、3.5、3.6をサポート 2017年11月7日リリース
Node.js Driver v3.3.0 Cassandra 1.2以降に対応 2017年9月19日リリース
Spark Cassandra Connector Release 2.0.3 Cassandra 2.0以降に対応、Spark 1.0~2.0に対応 2017年7月8日リリース

2017年Apache Cassandraの重大ニュース

ここでは2017年のApache Cassandraに関する主な出来事を振り返ります。

1 Tick-Tockリリースの終了
機能追加と不具合修正がなされたバージョンを隔月で交互にリリースするTick-Tockリリース方式を終了させるという提案が、2017年1月10日にApache Cassandraプロジェクトの元チェアのJonathan Ellis氏からなされ、コミュニティに受け入れられました。Tick-Tockリリースは、新たに実装された機能をできるだけ早く利用してもらうことを目的として開始されましたが、現在のテストの方法などに起因して、リリースを決めてから実際に想定期間内にリリースをするまでに要する時間と労力が大きく、今の状況では無理があるということから終了することとなりました。以降は、大きな機能追加を出すまでの期間をもう少し長くしてほぼ半年もしくは1年ごと、不具合修正は隔月というようなペースで行う方向となりました。
2 NGCC(Next Generation Cassandra Conference)の開催
Apache Cassandraコミッターや関心を持っている人々が集まって開発コミュニティの現況やCassandraの将来の方向性について発表したり議論したりする場として毎年開催されているカンファレンスです。今回は、1960年代の西部劇「アラモ」で有名になったアラモ砦があるテキサス州サンアントニオで2017年9月26日に開催されました。Apple、Netflix、Uber、Bloomberg、Yahoo! Japan、The Last Pickle、DataStax、Scylla、Instaclustrなど各社から参加があり、プラッガブルなストレージエンジンの提案、CDC(Change Data Capture)機能の改善提案、ヒント格納専用ノードの検討、メトリック情報を格納するバーチャルテーブルの検討、テスト手法についての検討などがなされました。
3 マテリアライズドビューがexperimentalに
マテリアライズドビューはApache Cassandra 3.0で実装されましたが、現在もいくつかの境界条件で動作に問題があるということで、利用者に注意して利用することを認識してもらえるように、マテリアライズドビューをexperimentalとしてマークすることとなり、2017年10月にアナウンスされました。
4 Cassandra Summit Tokyo, 2017の開催
日本Cassandraコミュニティ主催で、2年ぶりにCassandra Summit Tokyoが2017年10月5日に開催されました。Apache Cassandraプロジェクトの新チェアとなったNate McCall氏が基調講演を行ったほか、国内外のスピーカーが登壇し、プロジェクトの現況や、新しく取り込まれた機能の紹介、ユースケースやベストプラクティス、各社の取り組みなどの紹介がありました。
5 Apache Cassandra 4.0に向けた実装が進捗
Apache Cassandra 4.0のリリースに向けて、コミットログの保存モードの追加、ノード間のメッセージングを高速化するためのメッセージング方式の書き換えのほか、上記「12月の主な出来事」の中でも書きましたが、コミットログ、データの双方について格納方式の選択肢を増やすために格納方式をプラガブルにする変更など、さまざまな機能の追加・変更の実装が進んでいます。

2018年1月開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

第2回 オープンソースデータベース比較セミナー

日程2018年1月26日(金)
場所TIS株式会社東京都新宿区西新宿8-17-1(住友不動産新宿グランドタワー)
内容各講演者の得意なDBについての講演を聞いて、それぞれのDBを比較できる「オープンソースデータベース比較セミナー」の第2回目開催。今回は、PostgreSQL, MySQLの、レプリケーション機能がテーマです。
主催OSSコンソーシアムデータベース部会

オープンソースカンファレンス 2018 Osaka

日程2018年1月26日(金⁠⁠、27日(土)開催予定
場所大阪産業創造館大阪市中央区本町1-4-5
内容オープンソースのコミュニティや協賛企業、後援団体によるオープンソース関連のセミナーや展示などをお楽しみいただけます。MySQL Community Teamと日本MySQLユーザ会による講演とブース展示、JPUGによるPostgreSQLに関する講演とブース展示が予定されています。
主催オープンソースカンファレンス実行委員会

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