OSSデータベース取り取り時報

第41回MySQL& PostgreSQLの2018年の主なニュース

本年も、OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーによる本連載をよろしくお願いいたします。今回はMySQLならびにPostgreSQLの2018年の主なニュースをご紹介してまいります。

[MySQL]2018年12月の主な出来事

2018年12月のMySQLの製品リリースは、MySQL Clusterの管理ツールMySQL Cluster Manager 1.4.7のみでした。2018年はOracle OpenWorld 2018ならびにOracle Code One 2018、db tech showcase 2018やMySQL Innovation Dayなどイベントで、株式会社ロコンド株式会社スクウェア・エニックスLINE株式会社GMOインターネット株式会社ミーカンパニー株式会社など数多くの導入事例が紹介された1年でした。

2018年MySQL重大ニュース

ここでは2018年のMySQLに関する出来事を振り返ってきます。MySQL 8.0のリリースにちなんで8件の出来事を取り上げてみました。

1
MySQL 8.0リリース

2018年4月19日にMySQL 8.0がリリースされました。このリリースでは以下の機能追加と改良が行われました。

MySQL 8.0からはリリースモデルがContinuous Delivery Model(継続提供型)となり、次のメジャーバージョンを待つことなく大型の新機能が追加されることがあります。最初のマイナーバージョン8.0.12では既存のテーブルに高速に列を追加するInstant ADD COLUMN機能が追加されました。

2
サーバーとツール群のマイナーバージョンの統一

MySQL 8.0の正式リリースを機に、MySQLサーバーとクライアントプログラム、ツール群のマイナーバージョンが揃えられることになりました。これによりMySQL 8.0.11のリリースのタイミングでリリースされたほぼ全てのクライアントプログラムとツール群は8.0.11となっています。そのためMySQLサーバーは8.0.5から8.0.10まで、他のツールでもリリースされなかったマイナーバージョンができています。

商用版の監視ツールMySQL Enterprise Monitorだけはなぜかこの動きから外れていますが、次のマイナーバージョンで他と製品と揃える動きがあるようです。

3
次世代版Oracle MySQL Cloud Service発表

2018年10月に開催されたOracle OpenWorld 2018にて、MySQL Enterprise Editionをベースとした新しいDatabase as a Service、通称MySQLaaS(MySQL as a Service)が発表されました。ベアメタル・クラウドのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)に統合され、セキュリティと性能を大幅に強化したサービスとなります。

MySQL開発チームのリーダーはインタビューの中でMySQLサービスの第二世代を2019年の上半期にリリースする予定と語っています。

4
MySQL Analytics Service発表

上記のインタビュー記事の中でも触れられていますが、MySQL Cloud Serviceの技術的な最大のポイントは、オラクルの研究開発部門であるOracle Labsでの研究成果を取り込んだ大量データ分析基盤MySQL Analytics Serviceをあわせて提供することです。オラクルが持つクラウドインフラの拡張性を生かした分散並列処理をインメモリの分析エンジンで実行することで、MySQLのデータを移動することなく高速に分析できる仕組みを用意しています。

5
MySQL Enterprise Monitor(再)日本語対応

商用版の監視ツールMySQL Enterprise Monitorが日本語化されました。以前のバージョンでも一部GUIやメッセージが日本語化されていましたが、その後の修正が行われていませんでした。2018年7月末にリリースされたマイナーバージョンにて更新され、MySQL Enterprise Monitor 8.0.1、4.0.5以降の各バージョンにて日本語表示が利用可能です。

6
MySQL Enterprise Data Maskingリリース

2018年10月にリリースされた商用版のMySQL 8.0.13ならびに5.7.24から、個人情報や機密性の高いデータの隠蔽や匿名化を可能にするデータマスキング機能が実装されました。セキュリティ標準や法令などで義務づけられることもある要件を満たすことができます。現時点での実装はSQL関数を利用してアプリケーションから明示的にマスキングの利用を指定する必要がありますが、下記のMySQL Innovation Dayではユーザアカウントに応じて自動的にマスキングを行う動的データマスキング機能の実装について検討している旨がセキュリティ担当のプロダクトマネージャーから語られていました。

7
MySQL Innovation Dayを日本で春秋開催

最新の製品動向やロードマップ、導入事例などを紹介するイベントMySQL Innovation Dayが日本で開催されました。東京や大阪の開催ではMySQLの開発エンジニアやプロダクトマネージャーが参加し、またMySQLコミュニティの方々やMySQLを利用中のお客様も登壇していました。2018年5月には国内5都市で開催されました。11月は東京にてMySQLの開発チームのリーダーであるMySQLエンジニアリング担当VP Tomas Ulinが講演しました。2019年についても年2回の開催を検討中とのことです。

8
MySQL 8.0コミュニティ版のOpenSSL採用とライセンス変更

最後はあまり知られていないニュースですが、MySQLのコミュニティ版はMySQL 8.0は純粋なGPL v2ではなくなりました。2018年1月にリリースされたMySQL 8.0.4 RC(Release Candidate)からTLS/SSLのライブラリが従来のyaSSLからOpenSSLに変更されました。商用版のMySQLサーバーは従来からOpenSSLを利用していましたが、OpenSSLのライセンスとGPL v2の互換性が課題となりコミュニティ版はyaSSLを利用していました。これにともないMySQL 8.0コミュニティ版のライセンスは追加条項付きのGPL v2となっています。詳しくはコミュニティ版のライセンスファイルを確認してください。またMySQL 8.0からコミュニティ版、商用版ともにTLS/SSLライブラリがスタティックリンクからダイナミックリンクに変更されています。

新世代のMySQL Cloud ServiceとMySQL Analytics Serviceのリリースをはじめ、さらに進化を続けるMySQLにぜひご注目ください。

[PostgreSQL]2018年12月の主な出来事

PostgreSQL

2018年11月8日にPostgreSQL 11.1がリリースされました。また、同時にアップデートも実施され、バージョンはそれぞれ11.1, 10.6, 9.6.11, 9.5.15, 9.4.20, 9.3.25となりました。このリリースでは以下の1つのセキュリティ問題を含む多くのバグの修正が行われています。

  • CVE-2018-16850:pg_dumpと pg_upgradeにおけるCREATE TRIGGER…REFFERENCINGにおけるSQLインジェクションの脆弱性

PgpoolAdmin

2018年12月20日にpgpoolAdmin 4.0.1がリリースされました。このリリースでは以下の1つのセキュリティ問題を含む多くのバグの修正が行われています。

  • CVE-2018-16203:PgpoolAdmin におけるアクセス制限不備の脆弱性

2018年PostgreSQL重大ニュース

ここでは2018年のPostgreSQLに関する出来事を振り返ってきます。

1
PostgreSQL 11リリース

2018年10月18日にPostgreSQL 11.0がリリースされました。このリリースでは以下のような改良が行われました。

  • パーティショニングの強化
    • ハッシュパーティショニングの導入
    • パーティション数増加時の性能面に課題あり。12で改善予定。
  • ストアドプロシージャ
    • ユーザ定義関数内で独自のトランザクション管理が可能に
  • クエリの並列処理
    • 並列処理可能なクエリパターンが拡大
  • JIT(ジャストインタイム)コンパイラ
    • 分析用途の高性能化を目指すがまだ効果が限定的。今後の進化に期待。

その後、マイナーバージョンアップとして2018年11月8日にPostgreSQL 11.1がリリースされています。

2
Pgpool-II 4.0リリース

2018年10月19日にPgpool-II 4.0.0、pgpoolAdmin 4.0.0がリリースされました。このリリースはPgpool-IIをPostgreSQL 11.0に対応させたもので、以下のような改良が行われました。

  • 不正なプライマリサーバの検出
  • SQL負荷分散の高度化
  • PostgreSQL 11のSQLパーサを取込

その後、マイナーバージョンアップとして2018年10月31日にPgpool-II 4.0.1が、2018年11月22日にPgpool-II 4.0.2が、2018年12月20日にpgpoolAdmin 4.0.1が、それぞれリリースされています。

3
PostgreSQL 9.3のEOL

PostgreSQL 9.3はEOLを迎えました。2018年11月にリリースされたPostgreSQL 9.3.25が最終のアップデートとなり、今後はアップデートやセキュリティパッチの提供は行われませんのでご注意ください。

4
東京リージョンでAmazon Aurora with PostgreSQL Compatibility提供開始

2018年2月9日より、Amazon Aurora PostgreSQL-compatible edition が、東京リージョンでも利用可能となりました。通常のPostgreSQLに近いRDS for PostgreSQLと違い、AuroraはAWS前提でアーキテクチャが最適化されクラウド指向なデータベースの1つの実現形態と言えます。

5
Azure Database for PostgreSQLの一般提供開始

2018年4月18日より、Azure Database for PostgreSQL の一般提供が開始されました。Amazon Auroraと違い、PostgreSQLをそのまま使っているようですが、データの冗長化やインスタンスのコンテナ化といった下回りの基盤機能を活かしてダウンタイムなしでのスケートアップ/ダウンを可能にしているのが印象的です。

6
PostgreSQL Conference Japan 2018が開催

2018年11月22日に、PostgreSQL Conference Japan 2018が開催されました。過去のカンファレンスではPostgreSQLの内部構造や機能、チューニングといったDB管理者向けなセッションが目立ちましたが、今回はクラウド上で利用することを想定したセッションが増えました。

7
PGConf ASIAが今年も日本で開催

2018年12月10日~12日の3日間、昨年に引き続き、今年もPGConfASIAが日本で開催されました。

2019年1月開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

オープンソースカンファレンス 2019 Osaka

日程2019年1月25日(金⁠⁠~6日(土)開催予定
場所大阪産業創造館
大阪市中央区本町1-4-5
内容オープンソースのコミュニティや協賛企業、後援団体によるオープンソース関連のセミナーや展示などをお楽しみ頂けます。MySQL Community Teamと日本MySQLユーザ会による講演とブース展示、JPUGによるPostgreSQLに関する講演とブース展示が予定されています。OSSコンソーシアムも講演とブース展示を予定しております(教育ICT部会⁠⁠。
主催オープンソースカンファレンス実行委員会

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