OSSデータベース取り取り時報

第52回 MySQL Innovation Day 2019,PostgreSQL Conference Japan 2019開催

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[PostgreSQL]2019年11月の主な出来事

前回お知らせした日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)のカンファレンスの注目セッションを報告します。また,PostgreSQL本体のマイナーバージョンアップがありました。

PostgreSQL Conference Japan 2019のテーマは「PostgreSQLは生き残れるか?」

日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)が 11月15日にPostgreSQL Conference Japan 2019を開催しました。今年は「PostgreSQLは生き残れるか?」を合言葉に,大きく変化するコンピューティング環境にどう対応するかというテーマでも講演が行われ,約220名が集まるイベントとなりました。ここでは講演内容をいくつか紹介します。

PostgreSQLの皮を被った次世代RDBMS ―Project Tsurugi(劔)について

ノーチラス・テクノロジーズ 神林飛志氏

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が採択したことでも話題となりましたが,OLTPとOLAPを一体で処理するHTAP(Hybrid Transaction/Analytical Processing)を実現するために既存のアーキテクチャを抜本的に変えたデータベースが必要との考えから開発しているとのことで純国産にこだわっていないと強調されていました。また,すでに十数社参加するユーザー会を立ち上げ今後はオープンなコミュニティを形成していくようです。

なお,SQLや管理機能にPostgreSQLの実装を使うことで既存のユーザーやアプリケーションへの影響を抑えようとされているようです。

クラウド時代のPostgreSQL ―Hyperscale (Citus)

日本マイクロソフト 藤田稜氏

Azure Database for PostgreSQL でスケールアウト前提に設計された Hyperscale(Citus)が新たに提供されることが発表されました。Citusではコーディネーター1台+ワーカーノードN台で構成され,コーディネーターが受け付けたクエリーをワーカーノードへ分散させて水平型のスケールアウトを実現します。

Microsoftでの事例として全世界のPCで実行されるWindows Updateの操作ログをCitusに投入し,その分析結果をもとにWindows Updateの実行タイミングを調整しているとのことで,Microsoftの業務もCitusなしでは成り立たなくなっているそうです。

PostgreSQL 12 and beyond

ミカエル・パキエ氏

パーティショニング,Bツリーインデックス,REINDEXといった既存の機能改善を着実に進めつつ,列指向等の用途に特化したストレージエンジンを追加できるTable Access Methodのような新しい仕組みが紹介されました。Table Access MethodはPostgreSQLのアーキテクチャを大きく変える試みでもあり,ここでも将来の拡張を見据えた動きが進んでいることがうかがえます。

PostgreSQLのための共有ディスク型スケールアウトの開発

綱川貴之氏

PostgreSQLでもOracle RACのような共有ディスク型スケールアウトを実現すべきでは?という課題提起からスタートし,スケーラビリティの3つの選択肢について,さまざまな観点で比較しながら各方式が持つ特徴が説明されました。

  • シングルサーバーのCPU,メモリ増強によるスケールアップ
  • シェアードディスク(共有ディスク)型のスケールアウト
  • シェアードナッシング型のスケールアウト

また,PostgreSQLで共有ディスク型スケールアウトを実現するための変更点が示され,最後に再度「PostgreSQLに共有ディスク型のスケールアウトが必要か?」が問いかけられました。その結果聴衆の 7~8 割の方から「必要」という反応が得られたため,引き続き共有ディスク型スケールアウトの実現をPostgreSQLのコミュニティに働きかけていきたいとのことでした。

今回は「PostgreSQLは生き残れるのか?」が合言葉になりましたが,これは「PostgreSQLが商用データベースを目標に成長してきた反面で今後成長する方向性が見えない」ことへの課題意識が背景にあったようです。このイベントで紹介された新たな取り組みでPostgreSQLに起こるイノベーションが期待されます。

PostgreSQL 12.1,11.6,10.11,9.6.16,9.5.20,9.4.25公開

11月14日,PostgreSQL Global Development Groupは,PostgreSQLのマイナーバージョンアップを公開しました。先月正式リリースされたバージョン12についても,12.1となりました。以前のこの連載でも取り上げたように,PostgeSQLのマイナーバージョンアップでは新機能の搭載は基本的にはありませんので,今回もバグ修正が中心です。

PostgreSQL 9.4系のサポート終了

上記と同じ発表記事の冒頭で,9.4系のサポート終了が2020年2月13日であるとアナウンスされています。9.4系を稼働させている方はご注意ください。

2019年12月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

インストールから始める Laravel 超入門 with PostgreSQL(ハンズオン)

日程 2019年12月5日(木)19:00~20:30(開場18:30)
場所 株式会社デジタル・ヒュージ・テクノロジー
東京都千代田区岩本町1-4-4 神田第4パークビル3F
内容 OSSコンソーシアムのデータベース部会が主催するハンズオンセミナーです。MySQLとPostgreSQLの利用シーンなどをお話しした後に,ハンズオン研修に入り,Laravelの環境構築と,実際に動作するアプリケーションを作成します。ハンズオン形式で少人数のため,定員に達してご参加いただけない可能性があります。キャンセル待ちの方が多くなった場合には,別途追加開催の機会を用意する予定です。
主催 OSSコンソーシアム データーベース部会
協力:株式会社デジタル・ヒュージ・テクノロジー

第11回 PostgreSQLアンカンファレンス@東京

日程 2019年12月7日(土)13:30~17:29
場所 株式会社アシスト
内容 「PostgreSQLについてしゃべりたいことがある,聞いてほしいことがある!⁠⁠PostgreSQLについて聞いてみたい,相談したい!」など,PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK!

PostgreSQL / PowerGresハンズオンセミナー

日程 2019年12月12日(木)15:00~17:00 他
場所 SRA グループ池袋オフィスビル
内容 PowerGres の全体像を理解しつつ,実際に機能を体験できるコースで,ノートPCを持参すればインストール・設定までを行うことができます。
主催 SRA OSS Inc.

MySQL Technology Cafe #6

日程 2019年12月18日(火)
場所 日本オラクル株式会社 本社 13F
東京都港区北青山2-5-8
内容 オラクルのテクノロジーに限定しない,開発者による開発者のための開発者向けコミュニティ Meeutp セミナー「Oracle Code Tokyo Night」の企画として開催されているMySQL Technology Caféの第6回開催。内容はMySQL 8.0で強化された地理情報システム(GIS/Geographic Information System)の予定です。
主催 Oracle Code Night

オープンソースカンファレンス 2020 Osaka

日程 2020年1月24日(金)13:00~17:15予定(展示は2日目のみ)
2020年1月25日(土)10:00~18:00(展示:10:30~16:00)
場所 大阪産業創造館 ⁠OSC受付:1/24(金⁠⁠-5F,1/25(土⁠⁠-3F)
内容 OSSコンソーシアムのデータベース部会が出展参加します。また,日本オラクルのMySQLチームによるMySQLに関する講演とブース展示,JPUGによるPostgreSQLに関する講演とブース展示が予定されています。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


中西剛紀(なかにしよしのり)

TIS株式会社

TIS(株)においてOSSの技術コンサルティングや保守サポートに従事。過去にさまざまなデータベースと苦楽を共にしたが,現在は日本PostgreSQLユーザ会,PostgreSQLコンソーシアムといったコミュニティでの技術検証や講演を通じて,PostgreSQLの普及活動に力を注いでいる。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長,オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)副理事長。その他,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラムなどにも少しずつ関与。勤務先メンバに,PostgreSQL,Zabbix,Ansibleやコンテナ技術などに強みのある癖のある芸人を抱え,タレントマネージャ業が中心になりつつある。