書いて覚えるSwift入門

第28回 WWDC 2017特集

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今回は久しぶりに新ハードウェアがどっさりと発表されました。それも2時間30分超えのキーノートの大半の時間を使って。新OSもつつがなく発表されたとはいえ,iOS 11はとにかくmacOSはHigh Sierraとは,あまり新しそうに見えません。

とは言っても現行MacはCPUがKaby Lakeにアップデートされただけのように見えますし,iMac ProもHomePodも発売開始は今年末であり,その意味で真の新製品はiPad Pro 10.5ということになるでしょう。筆者も1台入手しました写真1)⁠

写真1 真の新製品iPad Pro 10.5

写真1 真の新製品iPad Pro 10.5

なぜAppleはこれらの新製品発表の場としてSpecial EventではなくWWDCを選んだのでしょう?――ほかの誰よりも開発者達がそれを欲していた,というのが筆者の読みです。とくにiPad Pro 10.5は,よりMac寄りに近づくことが確定的になったiOS11 for iPadのレファレンス・マシンとしての役割を担っています。ドラッグ&ドロップ可能なマルチタスク画面にDockまで。iPadはコンテンツを消費するデバイスからコンテンツを制作するデバイスへという流れをより鮮明化させてきました。これでXcode for iPadがあれば,Macフリーなエコシステムができあがるようにすら見えるほど。

本番は「プラットフォーム一般教書演説」

むしろWWDCとしての本番は,Platforms State of the Unionでした。ベタな直訳で「プラットフォーム一般教書演説」⁠機械学習APIであるMLKitと拡張現実APIであるARKitは他社の後追いのようにも感じられますが,本連載で何度も繰り返しているように,Appleは最も保守的なプラットフォーム企業。そのAppleが標準APIを用意するというのは,それが今後の業界の標準となることを示唆せずには入られません。

Swift Playgrounds meets robots

本連載の主題はAPIではなくSwiftという言語。そこに焦点をあてるとSwift PlaygroundsでドローンやLEGO MINDSTORM EV3をプログラムできるようになるという発表写真2は,IT業界よりも教育業界にとって朗報でしょう。筆者の次女が通っている中高一貫校の高等部ではiPadが必須の教材となっているのですが,彼女たちもきっとその恩恵を受けることでしょう。

写真2 LEGO MINDSTORM EV3をiPadでプログラミング

写真2 LEGO MINDSTORM EV3をiPadでプログラミング

Swiftで書き直されたXcode Source Editor

とはいえ本連載をお読みの読者のほとんどは,XcodeでSwiftしているはずです。そのXcodeは9でどう変わったか。一番の注目は,Swiftで全面的に書き直されたソースエディタでしょう。妙な言い方になりますが,ソースコードを「理解」するようになっています。言葉で言うより,スクリーンショットをご覧いただいたほうが早いでしょう図1,図2)⁠

図1 コンテキストメニュー表示(その1)

図1 コンテキストメニュー表示(その1)

図2 コンテキストメニュー表示(その2)

図2 コンテキストメニュー表示(その2)

iOSアプリでもあるSwift Playgroundsと同様,ソースの構造を適切に解釈したうえで,その構造に即したコンテキストメニューが表示されます。

圧巻なのは,プロトコルとの組み合わせ。本連載でもSwift はProtocol Oriented Languageであると繰り返し申し上げてきましたが,言語自身はとにかくこれまでのエディタのサポートは貧弱なもので,不適合なら⁠Type T does notconform to protocol 'P'⁠というエラーメッセージを表示する程度でしかありませんでした。

それが,図3のとおりに変わります。

図3 エラーメッセージの変化

図3 エラーメッセージの変化

プロトコルを追加した時点で適合性がチェックされるところまでは今までどおりですが,足りないプロパティをすべて洗い出したうえでスタブを追加してくれるのです。あとはそれを埋めるだけ。ああ,PONSを開発中にこの機能があったらどんなに楽だったか!

エディタの機能が増えると心配なのが「それでますますもたつくのではないか」⁠うれしいことに,機能が豊富になったにもかかわらず,編集からビルドまでほぼすべての面で高速化しています。とくに長いコードが入ったPlay groundは,Xcode 8までは明らかにもたついていたのが,ほぼ何をしても瞬殺という感じで非常に快適。正直,High Sierraを待たずに先に正式版リリースしてほしいぐらい。

著者プロフィール

小飼弾(こがいだん)

1969年生まれ,東京都出身。元ライブドア取締役の肩書きよりも,最近はPokemon GOのガチトレーナーのほうが有名になりつつある……かもしれない永遠のエンジニアオヤジ。

活躍の場はIT業界だけでなく,サブカルからアカデミックまで多方面にわたり,ネットからの情報発信は気の向くまま毎日毎秒! https://twitter.com/dankogai,ニコニコチャンネルは,http://ch.nicovideo.jp/dankogai,blogはhttp://blog.livedoor.jp/dankogai/

当社刊行書籍は『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』『小飼弾のコードなエッセイ』など。他にも著書多数。

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