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第2回サーバ仮想化の鍵を握る「アプリケーション視点」②アプリケーション視点からの仮想サーバ構築

第1回で述べたように、サーバ仮想化を導入して、業務システムを構築、運用するには、仮想化ソフトが対象としないアプリケーション周りの構築・運用作業が課題となります。 日立のCosminexus V8.5は、仮想化環境で必要な「アプリケーション視点での仮想化」に対応することで、シンプルで効率的な仮想化システムの構築・運用を実現しています。

「仮想サーバマネージャ」による仮想化管理

Cosminexus V8.5では、⁠仮想サーバマネージャ」を備え、仮想サーバやその上で実行されるアプリケーションの構築・運用を管理します。仮想サーバマネージャの一番の特徴は、同じ業務アプリケーションを実行する仮想サーバを「管理ユニット」という1つのグループとして扱うことです。

サーバ仮想化の環境では、性能と可用性を確保するため、業務アプリケーションは複数の仮想サーバにスケールアウトされて配置されます。そのため、実運用で必要となるのは、仮想サーバの業務アプリケーションごとの構築・運用の容易性です。⁠管理ユニット」という考え方がこの課題を解決します。

図1 仮想サーバマネージャによる仮想サーバ運用管理
図1 仮想サーバマネージャによる仮想サーバ運用管理

図1は仮想サーバマネージャの働きを示したものです。仮想サーバマネージャにより、⁠管理対象マシン」である物理マシン上に、⁠管理ユニット」に対応した仮想サーバを構築・運用できます。

アプリケーション視点での仮想サーバ構築

仮想サーバマネージャを使うと、OSだけでなくアプリケーションも含めた仮想サーバを「管理ユニット」単位で構築作業を行うことができます。このため、前回紹介した「仮想サーバの構築において、業務アプリケーションを含めた構築に手間がかかる」という課題を解決できます。

仮想サーバの一括構築

Cosminexus V8.5では、管理ユニットごとに業務アプリケーションを含めたすべての構築作業を一括して行うことができます。VMwareなどの仮想化ソフトと連携して、一括構築を可能にしています。

図2 CosminexusV8.5の仮想サーバ構築
図2 CosminexusV8.5の仮想サーバ構築

仮想サーバの一括構築のサポートにより、以下の2点を可能にし、構築上の課題を解決します。

①構築作業の自動化・並列化による時間短縮
従来のように仮想サーバをコピーした後に仮想サーバごとにアプリケーションをデプロイするのではなく、あらかじめ仮想サーバにアプリケーションをデプロイしておき、それを自動的にコピーすることで、デプロイの時間を短縮します。また、全ての仮想サーバの設定やロードバランサの設定を自動的に並列して行うことで、設定の時間を短縮します(図3⁠⁠。
②構築作業の自動化によるミス低減
従来、手動で実施していた設定作業を一括して自動的に設定可能なので、設定漏れなどのミスを防ぐことができます。
図3 構築作業の短縮
図3 構築作業の短縮

仮想サーバ一括構築の実際

仮想サーバの一括構築は、仮想サーバマネージャが管理ユニットごとに行います。マスタイメージやアプリケーションサーバの定義情報など仮想サーバを構築するのに必要なベースを作成し、管理ユニットをデプロイする流れになります。

では、実際の構築をもう少し詳しく追ってみましょう。

仮想サーバマネージャの設定・起動

仮想サーバマネージャを起動して、管理対象マシンの情報(マシン名称、IPアドレス)を登録します。

マスタイメージの作成

アプリケーションサーバを動作させる仮想サーバのイメージファイルを「マスタイメージ」と呼びます。仮想マシンにOS、Cosminexusなどをインストールしサーバの環境を整えたあと、VMwareなどの仮想化ソフトウェアの機能を利用してマスタイメージを作成します。これをまとめると、各仮想サーバの構築のベースとなるマスタイメージは図4のように作成されます。

図4 マスタイメージ作成の流れ
図4 マスタイメージ作成の流れ

アプリケーションサーバの定義情報作成

各仮想サーバ上でアプリケーションサーバを設定するため、次のような定義情報ファイルを作成します。

①アプリケーションサーバの定義ファイル作成

Webシステムの構成情報や管理ユニットのデプロイ時に、仮想サーバのセットアップを自動で行うために必要な情報を定義ファイルに記述します。具体的には、以下の情報を設定します。

  • ネットワーク設定
     管理ユニットで使用するIPアドレスの範囲など
  • OSのセットアップ情報
     OSライセンス情報の設定、ワークグループの設定など
②アプリケーションサーバ情報ディレクトリ作成
必要なアプリケーションやアプリケーションサーバの定義ファイルなどを格納するアプリケーションサーバ情報ディレクトリを作成します。

管理ユニット作成

仮想サーバマネージャ上に管理ユニットを作成するこにより、実際に動作する仮想サーバを自動的に構築することが可能となります。

管理ユニットは、これまでに作成したマスタイメージとアプリケーションサーバ情報ディレクトリに「管理ユニット運用ルール」を適用して作成します。⁠管理ユニット運用ルール」とは、管理ユニットに属する仮想サーバをいくつまで起動させるかといった運用の規則をまとめたもので、管理ユニット運用ルールファイルで定義します。

図5 管理ユニット作成の流れ
図5 管理ユニット作成の流れ

管理ユニットの作成を行うと、仮想サーバマネージャはマスタイメージ、指定されたアプリケーションサーバの定義ファイル、およびアプリケーションから仮想サーバイメージを作成し、仮想サーバマネージャは管理ユニットごとにこの仮想サーバイメージを保持します。

管理ユニットのデプロイ

システム管理者は管理ユニット作成や更新の後、仮想サーバマネージャに管理ユニットのデプロイの指示を行います。デプロイの指示があると、仮想サーバマネージャは、管理ユニットの仮想サーバイメージを各管理対象マシンにコピーします。その後、仮想サーバ設定(OS、Cosminexusの設定⁠⁠、ロードバランサ設定を行い、仮想サーバを起動可能な状態にします。

図6 管理ユニットデプロイの流れ
図6 管理ユニットデプロイの流れ

最後に

仮想サーバマネージャを使うことで、アプリケーションまで含めた仮想システムの一括構築ができることがおわかりになったでしょうか。次回は、運用面でも利用できる仮想サーバマネージャの機能について説明します。

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