機能と技術からわかる!システム基盤の実力

第13回SCM構築における課題と解決策を紹介「日本の製造業をNEXT STAGEに!」セミナーレポート

フレームワークとしての性格を併せ持つ「MCFrame XA」

株式会社日立製作所と東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、11月10日に「日本の製造業をNEXT STAGEに!」と題したセミナーを開催、それぞれのソリューションである「Cosminexus」「MCFrame」の強みを解説しました。本稿では、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 プロダクト事業本部 営業本部 マーケティングアライアンス部 部長の川村将夫氏と、株式会社 日立製作所 情報・通信システム社 ソフトウェア事業部 AP基盤ソリューションセンタ 近藤睦子氏のプレゼンテーションを紹介します。

まず登壇した川村氏は、⁠日本の製造業250社以上の導入実績の集大成! MCFrame XAが提唱する『これからの製造業に必要となるSCM基幹システム』とは」と題し、プレゼンテーションを行いました。

東洋ビジネスエンジニアリング 川村将夫氏
東洋ビジネスエンジニアリング 川村将夫氏

まず川村氏が指摘するのは、円高ドル安という現在の為替レートの厳しさ。製造業各社は、海外からの部品輸入の拡大などによる生産・調達の見直し、外貨を中心とした財務戦略の策定、そして追加のコスト低減や値上げなどといった円高対策を講じていると紹介します。

ただ、円高が進めば国内で製造した製品の海外での価格競争力の低下はまぬがれません。この状況にさらに追い打ちをかけているのが、低価格製品における海外勢の追い上げでしょう。つまり、従来のような価格勝負ではなく、顧客目線での商品開発や、グローバリゼーションに対応したものづくりにより、競争力を取り戻さなければならないわけです。

こうした状況において、製造業で使われている「SCM(Supply Chain Management⁠⁠」には、⁠変化に対する柔軟性と現場業務への対応力」が求められていると語ります。そこで東洋ビジネスエンジニアリングが提供しているのが、単なるパッケージではなく、柔軟なカスタマイズを可能にするフレームワーク構造を持ったSCMである「MCFrame XA」です。

優れたアーキテクチャを持つ「MCFrame XA」

MCFrame XAは、J2EE(企業向けJava開発プラットフォーム)をベースにしたフレームワーク構造を採用し、パッケージでありながら、お客様の多様なニーズに対応しながら、拡張性の高い基幹システム構築を実現します。また、長年の経験とノウハウを蓄積したERPxSCMシステムとしての基本機能を装備し、リッチクライアントによる優れたユーザビリティを実現しています。その上、グローバルSCMシステムの構築で求められる拠点間・企業間連携機能が充実しているほか、製品に同梱される独自の開発支援ツールを活用して、個々の拠点の持つ強みは損なわずにITにより全体の統合を行うようなシステム構築が可能です。

また、ERPやSCMをはじめとする基幹システムを運用するインフラには、⁠仮想化環境への対応」「外部システムとの連携⁠⁠、そして「安定稼働の実現」が求められると川村氏は指摘します。これらを実現するために、MCFrame XAの基盤として活用されているのが日立製作所の「Cosminexus」です。川村氏は「MCFrame XAとCosminexusを組み合わせれば、さまざまな変化に柔軟に対応できる仕組みを整えられる」と話し、プレゼンテーションを終えました。

統合プラットフォームとしての機能を備える「Cosminexus」

日立製作所 情報・通信システム社の近藤睦子氏は、⁠SOA・仮想化時代の基幹システムを支えるインフラ要件と具体策 ~MCFrame XAを支えるCosminexus~」と題したプレゼンテーションを行いました。

日立製作所 近藤睦子氏
日立製作所 近藤睦子氏

Cosminexusはアプリケーションサーバを中核とする、SOA・クラウド型のシステム構築基盤です。特徴としてシステムの柔軟性を高められる点や、日立Java VMとJavaEE(Java Enterprise Edition)サーバとの連携により、高い信頼性を実現していることが挙げられます。

Cosminexusで提供されている機能や仕組みは多岐に渡ります。中心となるJavaアプリケーションの実行基盤(アプリケーションサーバ)のほか、システムをESB(Enterprise Service Bus)で接続するシステム間連携基盤、そしてアプリケーション連携において欠かせないマスタ連携基盤を提供しているほか、文書管理や帳票出力までカバーしています。このように、基幹システムの構築において求められる機能を幅広く提供しているのがCosminexusの特徴の一つです。

2010年2月には最新版である「Cosminexus V8.5」をリリースし、仮想環境への対応強化や、既存システム活用による業務開発の生産性向上など、新たな魅力を付加しています。

では、東洋ビジネスエンジニアリングの川村氏が基幹システムのインフラに求められる仕組みとして指摘した、⁠仮想化環境への対応」「外部システムとの連携⁠⁠、そして「安定稼働の実現」に対して、Cosminexusはどのように対応しているのでしょうか。

複数の仮想マシンを業務単位で一括管理

まず仮想化環境への対応については、アプリケーションサーバレベルでの仮想化対応を実現していると近藤氏は説明します。

仮想化には、サーバ統合によるハードウェアの削減やシステム拡張への柔軟な対応が可能といったメリットがあり、多くの企業で活用が始まっています。ただその一方で、運用が複雑になる、仮想マシンごとにOSやミドルウェア、アプリケーションをインストールする手間は変わらないといった課題があり、特に基幹システムに適用する場合にはそれらへの対応が求められます。

Cosminexusでは、まず運用管理の煩雑さを解消するため、⁠管理ユニット」という単位で仮想マシンを管理する仕組みを搭載しているとのこと。この仕組みを利用し、業務アプリケーションごとに管理ユニットを割り当てておけば、仮想マシンごとに対応するのではなく、業務単位での一括管理が実現できます。

仮想マシンごとにOSやアプリケーションをインストールしなければならないといった課題に対しては、事前に作成した「マスタ」を使って仮想サーバを構築できる機能で対応しています。これにより仮想マシンの迅速な展開を可能にするほか、設定ミスなどによるトラブルの不安も解消できます。

運用管理ソフトとして幅広く活用されている「JP1」との連携に対応しているのも、Cosminexusの仮想環境の魅力です。その具体的な活用事例として近藤氏から紹介されたのが、JP1を使って仮想マシンの性能情報を監視、リソースが不足しそうな場合はあらかじめ設定したスケジュールに従って自動的に仮想マシンを追加するといった連携です。

仮想環境では、各仮想マシンがどの程度リソースを消費しているのかを調べるのは煩雑な作業となります。しかしCosminexusとJP1を連携させれば、各仮想マシンがどの程度のリソースを使っているのをグラフィカルに確認できるほか、リソースの増強も自動化できるというわけです。

システムの安定性を高めるFull GCレス

外部システムとの連携については、既存システムと連携するためのアダプタを提供することによって対応しています。システム間連携のための連携プログラムの開発は、開発工数が増大する要因として知られています。しかしあらかじめアダプタが用意されているCosminexusなら、連携プログラムの作り込みは不要となり、開発工数の削減にもつながります。

システム間連携のためのESBが提供されていることも、外部システム連携におけるCosminexusのメリットでしょう。WSDL(Web Services Description Language)の読み込みにも対応しているため、SaaS型アプリケーションなどとの連携も実現することができます。

ただESBを利用した連携を行うようになると、32bitメモリ空間の制限が大きな壁として立ちはだかります。そのため、現在サーバ環境においてより大きなメモリ空間が使える64bit環境への移行が進められていますが、これは新たな問題を引き起こします。具体的には、Javaアプリケーションにおいて突然応答がなくなり、システムが停止したように見える時間が発生するというものです。これは「安定稼働」を実現する上での阻害要因と言えるでしょう。

Javaアプリケーションから応答がなくなるのは、Full GC(Garbage Collection)が関係していると近藤氏は説明します。

一般的にFull GCとは、不要になった使用済みのメモリ領域を整理し、空き領域を確保する処理ですが、この処理が行われている間はアプリケーションが停止してしまうという大きな問題があります。メモリ空間が広くなれば、当然Full GCの処理にも長い時間がかかり、それによりシステムの無応答時間も伸びてしまいます。この問題を解消するためにCosminexusが実装しているのが「Full GCレス」という機能です。

Full GCが発生する原因の1つとして、長時間使われるオブジェクトがメモリ領域(具体的には、Javaヒープ領域のうち、寿命の長いオブジェクトが保存されるOld領域)に溜まってしまうことが挙げられます。こうしたオブジェクトの代表的な例として、Webアプリケーションにおけるユーザーごとのセッション情報があります。

そこでFull GCレスでは、Javaヒープ領域とは別に作成したメモリ領域に寿命の長いオブジェクトを配置することで、Full GCの発生を抑止しています。このFull GCレスを実現できた理由として、日立がJavaVMを開発していることを挙げ、⁠ほかのアプリケーションサーバーでは搭載されていない、業界初の機能(近藤氏⁠⁠」と自信を見せます。

このFull GCレスで安定稼働を実現しているほか、手厚いサポートもCosminexusの特徴です。具体的には、製品出荷から標準で10年間もの長期間に渡って行われるサポートや、企画段階からの支援、不具合があった場合の迅速な対応、そして開発者によるきめ細かなサポートが受けられることを近藤氏は強調します。

また日立では、MCFrameを導入する顧客向けにシステム導入時のコストを削減できる「プラットフォームスタンダードモデル」を提供しています。これはハードウェアとOS、アプリケーション、ミドルウェアがセットになったパッケージで、サーバを完全に二重化し、高信頼性を実現したアッパーミドルモデルを筆頭に、ミッドレンジ、ローエンドの3タイプを提供しています。⁠見積や検証コストを削減するほか、ワンストップでのサポートを実施することから問題発生時のコストも削減できる」と、近藤氏はプラットフォームスタンダードモデルのメリットを説明し、プレゼンテーションを締めくくりました。

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