読者の皆さんこんにちは,「テストリーダへの足がかり,最初の一歩」と題したこの連載も7回目となりました。
第一話(第1,2回)で「テスト計画」,第二話(第3,4回)で「テスト分析」,そして第三話(第5,6回)で「テスト設計」を取り上げました。今回は,実際にテストケースを作成する「テスト実装」を取り上げます。
テストケースを作成する工程では,すぐにテストケースの網羅性などの話になりがちですが,ここではそのようなテストケースを作るためにリーダが行うべきことや,テスト実装そのものの工程の運営上リーダが行う必要があることを解説していきます。テスト技法の話はあまり出てきませんので,気をつけてくださいね。
さて,さっそく今回も中山君の例で考えていきましょう。
【今回の登場人物】
- 大塚先輩:
- 入社10年目。5年前に柏田マネジャーと一緒にソフトウェアテスト事業を立ち上げた。カメラが趣味で,暇さえあれば写真を撮りに出かける。
- 中山君:
- 入社5年目。本連載の主人公。入社以来ソフトウェアテスト一筋で経験を積んできた。そろそろ大きい仕事をしたいと考えている。
- 小川君:
- 入社2年目。新人研修後,その有望さから半年間顧客先に常駐。テスト業務の他,設計作業も経験を積んできた。趣味はベースで,定期的に仲間とライブを行うなど仕事と趣味を両立している。
- 松本千秋:
- 入社2年目。通称「千秋ちゃん」。小川君の同期で,開発部門所属。今までコーディングと単体テストは経験があるが,システムテストに関わるのは初めての経験。趣味は自分磨き。


テスト実装
ようやくテスト設計まで終了し,いよいよテスト実装に移ります。
テスト実装は,テスト設計で検討したテストケース作成方針に従ってテストケースを作成することになります。この作業は一人で行うわけではなく,通常,複数の人員で手分けして作成します。
中山君はこれまでのところ,テスト計画・テスト分析・テスト設計の各工程で失敗だらけでした。しかし,大塚先輩の(大きな)サポートのおかげで何とか進められてきました。中山君は,今さらながらに大塚先輩の偉大さを骨身に感じる今日この頃です。
大塚先輩:- さて,いよいよテスト実装。この工程は今までに担当者として作業をしたことがあるよね?
中山君:- はい,この工程は先輩達の指示に従ってテストケースを作成していました。
大塚先輩:- ならば大丈夫だろう。この工程は大きな心配はないかな。
中山君:- そう思います。今度こそはしっかりやってみせます!
中山君は今までに自分が行ったことがある作業にようやく入って,安心しています。
大塚先輩:- 中山君はテスト実装なら大丈夫だと思っているだろう。でもな,今までとひとつ違うことがある。今回は君はリーダ,つまり君に指示をした先輩達と同じ役割を担うことになる。たとえば先にチームに合流した小川君に指示を出す必要があるんだ。
そう,今までは指示通りに作れば良かったのですが,リーダはメンバに適切なテストケースを作らせなければなりません。同じ工程ですが,必要とされる振る舞いが異なることに注意しましょう。
ただ,中山君はすっかり安心しきってしまい,すっかりテスト実装が成功する気分になってしまいました。
大塚先輩:- では,今回は大丈夫そうだから,中山君の方ですすめてくれ。何かあれば,すぐに声をかけること。
大塚先輩は心配ながらも,ここは過去の経験を信じて中山君に作業を任せることにしました。
席に戻ってきた中山君,すっかり作業が終わった気分になっています。
中山君:- これまでにやったことがある作業だし,指示出すだけなら楽だよね。
机の上には苦労し作成したテスト設計書があります。とりあえず,小川君へテスト実装の指示を出すべく,会議室に移動することにしました。
中山君:- …というわけで,このテスト仕様書をもとにテストケースの作成をお願いできるかな。期限は……明後日。
小川君:- 明後日ですか!? 幸いテスト仕様書の作成から関われたのである程度なんとかなるかと思いますが,この内容だったら1週間は必要です。明後日でしたら3分の2くらいしか対応できません。できる限り頑張ってはみますが…。
中山君:- (うっ)そ,そう? じゃぁとりあえずこのページまでお願いできるかな。残りはちょっと考えてみる。
小川君:- わかりました。とりあえず早急に作業を見積もってみますが,もしかなりの無理がある場合は相談させてください。
そう言うと,小川君は険しい表情で足早に会議室を出て行ってしまいました。

