Windows Phoneアプリケーション開発入門

第10回Windows Phone 7 Seriesが登場

はじめに

3/15に米ラスベガスで開催されたWeb開発者とWebデザイナー向けのカンファレンス「MIX10」において、Microsoftは最新プラットフォームの「Windows Phone 7 Series」を発表しました。

図1 MIX10の基調講演中の会場
図1 MIX10の基調講演中の会場

初日に行われた基調講演の中で、⁠Windows Phone 7 Series」における開発プラットフォームについての詳細を初めて公の場で発表しました。セッションでは実際に試作機を使ったデモが行われました。

「タイル」「ハブ」を使ったまったく新しいデザイン

完全に刷新されたUIは、Windows Mobile 6 シリーズとは一線を画したものになりました。レイアウトや機能、ハードウェアの徹底した標準化により、ビジュアル的にもデバイス的にも魅力溢れるスマートなデザインに生まれ変わりました。

タイル

スタート画面には従来のTodayアプリケーションは存在せず、変わりにリアルタイムでコンテンツの確認が可能なライブタイルと呼ばれる「タイル」を見ます。

図2 スタート画面
図2 スタート画面

例えば、友人がFacebookなどのソーシャルサービスに投稿した日記や、写真を一目で確認することができるのです。

Windows Phone 7 Seriesのもうひとつ特徴として、人々のタスクや行動をサポートする「Windows Phone hubs」という機能があります。6つのテーマによって分類された「ハブ」は、関連するWebサイトやアプリケーションを1つの共通したタスクとしてまとめることができます。

それぞれのテーマは以下のとおりです。

ソーシャルネットワークサービスでの記事など登録した人に関するコンテンツを集め、FacebookやWindows Liveへの投稿をワンステップで行うことを可能にした「People」

図3 People Hub
図3 People Hub

ソーシャルネットワークサービスでの写真やビデオの共有を可能とした「Picture」

図4 Pictures Hub
図4 Pictures Hub

携帯マルチメディアプレーヤーZuneのサブセットを搭載し、PC上のコンテンツを聴いたり見たりできます。楽曲再生機能や音楽配信サービス、内臓のFMラジオを一体化させた「Music+Video」

図5 Music+Video Hub
図5 Music+Video Hub

Xboxで作ったアバターを持ち歩くことができます。高性能なGPUにより、Xbox Liveのゲームや、アバター、実績を携帯電話上で楽しむことができる「Game」

図6 Game Hub
図6 Game Hub

Windows Phone 7 Seriesに対応したアプリケーションやゲームを入手することができる「Marketplace」

図7 Marketplace Hub
図7 Marketplace Hub

外出時の移動中でもOneNoteやSharePointにアクセスし、ドキュメントの閲覧、編集、共有が可能な「Office」

図8 Office Hub
図8 Office Hub

イマドキ?Windows Phone 7 Seriesのハードウェアスペック

Windows Phone 7 Series以前のWindows Mobile端末は、実装を担当するメーカーによって異なるデバイスが搭載されていました。そのためかアプリケーション開発においても機種依存の部分が目立ちました。

Windows Phone 7 Seriesでは、搭載するデバイスのガイドラインが定められ、ハードウェアを使ったアプリケーション開発が容易になるように共通化されています。それに伴いiPhoneやAndroidといったスマートフォンと同等かそれ以上のハードウェアスペックとなっています。

センサー類は、A-GPSや加速度センサ、電子コンパス(地磁気センサ⁠⁠、光センサ、近接センサが搭載されており、ハードウェアボタン関係では、⁠スタート」⁠検索」⁠戻る」の3つとのボタンと、カメラ専用のシャッターボタン。カメラは5Mピクセル以上のもので、かつフラッシュ付きでなければいけません。

また同時に4点以上検出可能な静電容量式のタッチスクリーンも必須となります。スクリーンの解像度は2種類あり、当初は480x800のWVGAまたは320x480のHVGAのいずれかで、後から増える予定らしいです。

CPUは、クアルコム社が開発したT-01AやX02Tに搭載されているチップセットSnapdragon(Scorpion)と同等のもので、GPUはDirectX 9相当のハードウェアアクセラレーションを持つもの。

メモリは256MB以上、ストレージは8GB以上と大容量になっています。Windows CE 5.0までは32MBに制限されていた各プロセスの仮想アドレス空間が、Windows CE 6.0では2GBに拡張され、よりリッチなアプリケーションの作成が可能です。

Windows Phone 7 Series 開発者向けの無償ツールの公開

開発者にとって嬉しい話題です。Microsoftはアプリケーションの拡充を図るため、Windows Phone 7 Series上でのSilverlightを使った開発支援のため、⁠Visual Studio 2010 Express for Windows Phone」と呼ばれる開発ツールパッケージを公開しました。

このパッケージ単体でXNAやSilverlightを使った開発が可能ですが、⁠Expression Blend for Windows Phone Community Technology Preview」と併用することでデザイン性にすぐれたSilverlightアプリケーションを作成することができます。

Windows Phone 7 Seriesで非対応となったもの

Windows Phone 7 Seriesになって嬉しいことだけではなく、残念な点もいくつかあります。現時点での情報となりますが、非対応となっている項目をピックアップしました。

まず、ネイティブコードを扱うことができません。ネイティブアプリを作成することができないだけではなく、Silverlight等のマネージドコードからP/Invokeを使って、WIN32APIを始めとするネイティブ関数やシステムコードを扱うことができません。

さらにSilverlightとXNAを動作させるランタイムとして、.NET Compact Framework 3.7が搭載されていますが、残念ながらWindowsフォームベースのアプリケーションが動作しません。既存のWindows Mobile向けのアプリケーションは、Windows Phone 7 Seriesでは動作しません。

また、ユーザー間にてインストールファイルを配布・公開するいわゆる「勝手アプリ」が使えなくなります。これからはWindows Phone Marketplace経由でのみ、インストールが可能となります。

さいごに

Windows Phone 7 Seriesの登場によって、Microsoftの提唱するパソコン、携帯電話、テレビの3つのデバイス(のスクリーン)の壁を意識せずにインターネット(上のクラウド)と繋がる「3 Screens+1 Cloud」の世界に一歩近づきました。

SilverlightとXNAの対応によって、まだ完全にとは言えませんが、モバイル開発者、Webアプリケーション開発者、ゲーム開発者といった壁は着々と無くなりつつあるのかもしれません。

日本での実機の発売予定は現時点ではありませんが、Windows Phone 7 Series上で動作するアプリケーション開発が可能な「Visual Studio 2010 Express for Windows Phone」が無償で公開されています。

一足先にWindows Phone 7 Seriesを体験したい方は、是非ダウンロードしてお試しください。

本連載でも次回から数回に渡って、Windows Phone 7 Series エミュレータを使用したアプリケーションの作り方をご紹介したいと思います。

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