Microsoft BandならApple Watchの遅延問題からおさらば?

Apple Watchが発売されてから約2ヵ月。発売直後に手にした人は新製品を手にした熱狂も覚めて、落ち着いてこの商品を見ることができるようになった人もいれば、もう使わなくなってしまった人もいるのではないかと思います。

正直言えばほとんど話題に登らなくなり、その存在を忘れてしまっている人も多いかもしれません。そんな今だからこそ、Microsoft BandというAppleでもGoogleによるAndroid Wearでもない、IT業界のもう1つの雄、Microsoftによるスマートウォッチを紹介してみたいと思います。

Microsoft Bandのパッケージ
Microsoft Bandのパッケージ

ようやく入手できたMicrosoft Band

最近、Surfaceシリーズが絶好調だったり、まもなくリリース予定のWindows 10が注目を集めているなど、何かと元気なMicrosoft。そんなMicrosoftが2014年10月30日に発売を開始したスマートウォッチがMicrosoft Band。

残念ながら米国以外では発売されていないということもあり、この商品の人気には日本にはあまり伝わってきませんでしたが、発売以来ずっと品薄が続いていました。筆者は、今年3月に米国出張の際に購入しようとしましたが、サンフランシスコのMicrosoftストアでは売り切れ。店員さんに聞いてもずっと売り切れ状態が続いているとのこと。米国Amazonでは定価199ドルのこの商品が300ドル近いプレミアム価格で販売されていたほどです。

筆者がようやく購入できたのは、Apple Watchが発売される直前の4月16日のラスベガスのMicrosoftストアでのことでした。Apple Watchでの発売が迫り、ようやくMicrosoft Bandも買い控えが起きてきていたのかもしれません。

Microsoftストアでは、購入時にスクリーン保護シートを無料で付けてくれました。もっとも、オンラインで購入すれば消費税がかからないところも多いですし、形状的にスクリーンを傷つけやすいというユーザからのクレームもAmazonのレビューで多く見られましたので、消費税分おまけでシートを付けることで未然にクレームを防いでいると言えるかもしれません。筆者はこれまで、購入してから2ヵ月ほど利用しています。

Microsoftストアで購入した商品には無料で保護シートが付いてくる
Microsoftストアで購入した商品には無料で保護シートが付いてくる

Microsoft Bandの嬉しいところ

さて、このMicrosoft Bandの良いところ、残念なところを簡単に紹介してみたいと思います。まずうれしいのが、歩数計が常に動いており、いつでも歩数の状態が確認できるところです。シンプルなスマートウォッチとして名前が挙げられることの多い機種としてPebbleがありますが、Pebbleの歩数計はそのアプリを起動した状態でないと利用できず、他のアプリに切り替えてしまうとそのままでは継続して歩数のカウントをすることができません(ただし、Activity Trackerアプリを1種類指定でき、設定したアプリはバックグラウンドで動くので、歩数カウントのアプリを指定すれば、他のアプリを使いながら歩数のカウントが行えます※⁠⁠。

※:当初、Pebbleの歩数計はアプリを切り替えると継続して歩数をカウントできないと説明しておりましたが、正しくはこのようになります。お詫びして訂正いたします(2015年7月8日16:20分訂正⁠⁠。

歩数計は常に表示しておくことができる
歩数計は常に表示しておくことができる

また、Apple Watch同様、心拍数を計測するためのセンサが付いているため、カロリー消費がわかりフィットネスデータを記録するスマートウォッチとして良くできています。カロリー消費や歩数計のデータは本体だけでなく、アプリやPCのダッシュボードでも確認できるようになっています。とくにPCのダッシュボードはあまり紹介されていませんが、一覧性に優れとてもよくできています。

Microsoft Bandのダッシュボードの画面
Microsoft Bandのダッシュボードの画面

そして、アルファブロガーの徳力さんが、Apple Watchを使用したレビューを公開した際、時計の表示がワンテンポ遅れてしまい、肝心の時計としての機能がイマイチであると述べたことが(ネット界隈の一部で)Apple Watchの徳力問題と呼ばれて一時期話題になりました。

このMicrosoft Bandでは、有機ELでは黒色の表示が省電力でできるという特性を活かして、白黒での時刻表示とすることでつねに時刻を表示したままで利用しても1日以上、十分に利用することができます。

徳力氏のブログ記事:Apple Watchを72時間使ってみて、自分には完全に宝の持ち腐れになりそうなことが分かってきた件について
http://blog.tokuriki.com/2015/04/72.html
有機ELでの白黒による省電力表示
有機ELでの白黒による省電力表示

その他にも、シンプルで扱い易く見やすいモダンUIやランニング計測のアプリがよくできていてスマホなしでもGPS計測がされたり、調整バンドがよくできていて手にフィットしやすく、価格が手頃だったりと、この製品には大きな魅力がたくさんあります。

Microsoft Bandで残念なのは……

逆に、Microsoft Bandの残念なところはまず日本語に対応していないこと。そのためスケジュールのアラートがきても、予定のタイトルが日本語の場合は文字化けしていて何の予定なのかがわかりません。もちろんメッセージの通知についても同様です。筆者はメールの通知については煩わしいため、スマートウォッチには求めていませんが、カレンダーのアラートが日本語で表示されないのはかなり残念です。

通知系の機能は日本語だと文字化けしてしまう
通知系の機能は日本語だと文字化けしてしまう

次に、バッテリもApple Watch同様あまり持ちません。1日半は使えても、2日間は持たないという感じです。充電に必要なUSBケーブルは、時計側の端子がこの製品独自の特殊なものであり、日常的によく使われているケーブルで代用ができないというのがさらに不便なところです。

バッテリの持ちが良くなっていくのか、あるいは充電用のケーブルが使い回しがしやすい標準的なものになったり、安価で入手しやすいものにならないと充電の煩わしさが、こうした製品の利便性を上回ってしまうことになってしまいます。

Microsoft Band独自の充電ケーブル
Microsoft Band独自の充電ケーブル

最後に、これも日本ならではの欠点ですが、Microsoft Bandは技適マークを取得していないため日本での利用は電波法違反となる可能性があります。ただし、Microsoft BandにはBluetoothの通信をオフにする機内モードがありますので、こちらをオンにすることで法的な問題はなくなります。

とはいえ、この状態ではデータをスマホやクラウド上にアップロードすることができず、アプリの更新や変更を行うことはできません。

総括すると199ドルと安価で、高価なApple Watchに比べる手軽に使えるフィットネス用機器として気軽に扱える機種です。一方でPebbleよりも機能が絞られており、逆に言えば、フィットネス用途がいらない人にはできるのは最低限の通知と時計としての機能くらいです(睡眠時間の計測や、お天気情報の表示といった機能などもありますが⁠⁠。

スマートウォッチ全体で考えると「スマートウォッチには多機能性が必要なのか」という議論も耳にします。Apple Watchのように多彩なことができるようになったとしても、スマホでできるのであれば、スマホでかまわないという意見もありますし、⁠多機能になることで)価格が高価になってしまうよりも、シンプルな機能にとどめ、フィットネス製品として作り込んだほうが良いという意見もあります。

この、Microsoft Bandは後者の哲学が盛り込まれた製品と言えるでしょう。

ですので、日頃からスポーツを行っている人や健康を気にしている人にとってはシンプルで使いやすい端末です。たとえば、ランニングをしているのが日課であるような人には、スマホなしでもGPSがついており、毎日のランニングの記録を取ることができるこの製品はとても魅力てきな端末となります。逆に、スマートウォッチに多機能な役割を求めている人には物足りないでしょう。

すべてはビッグデータのために?

さて、この製品はいつ日本語対応して出てくるのでしょうか? 筆者はこの初代Microsoft Bandが日本市場向けに発売されることはないだろうと考えています。日本で発売されるとしたら二代目以降となるのではないでしょうか。

というのは、この製品を利用してみて強く感じてみたのが、この製品はMicrosoftがさまざまなユーザの健康情報を収集し、ビッグデータ活用の事例として経験値を積んでいくためのパイロット版的存在だと感じたことです。

ウェアラブルの製品がセンサーとして広く世界中にばら撒かれていくことで、将来的にどのようなビジネスが生まれていくのか。Microsoft Bandは、そうしたビジネスへの布石として出てきた製品であり、まだまだパイロット版的な位置づけではないかと感じました。

Apple Watchの発売や、Android Gearの動きを見ながら、Microsoftが次にどんな手を考えているのか。そうした次の動きが楽しみになってくる製品です。

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