新春特別企画

2010年の中国携帯電話市場

2009年の最大のトピック―3Gライセンス認可

2009年の中国モバイル市場に取って一番のトピックだったのはやはり3Gライセンスが中国移動(China Mobile、以下:移動⁠⁠、中国聯通(China Unicom、以下:聯通⁠⁠、中国電信(China Telecom、以下:電信)の3大キャリアに認可され、その運営が開始されたことにあります。3大キャリアはそれぞれの3G通信方式が異なり、移動がTD-SCDMAと言う中国独自規格、聯通がWCDMA、電信がCDMA2000と言う形で展開されています。

免許が交付されたのは1月7日でしたが、テスト的な運用が開始されたのは5、6月で北京や上海など一部の都市にサービスは限定されていました。本格的に全国展開されたのは10月で、各社ともに2009年は3G基地局、設備への投資に積極的でその投資総額は1,023億元(約1兆3,560億円)と言われ本稿執筆時点では各都市で3Gサービスを享受できる最低限の環境は整ったと言えます。

3Gのユーザは伸びなかった?

ただ、それに合わせて3Gのユーザが飛躍的に伸びたかというと、期待したほどの飛躍的な伸びはなく10月末時点の3社を合計した3Gユーザは987万人と情報産業部から公式発表されました。987万人というと一定の規模があるように感じるかもしれませんが、中国で携帯電話全体のユーザ数は7.2億人といわれています。その7.2億人と言う規模で勘案すれば3Gユーザの比率はわずか1.4%程度です。これには、ユーザ自身が3Gサービスが開始されたことは知っていても、その利用が通話とSMSに限定されているユーザも多く、3Gに変えるメリットを感じない、また3Gにすることによって電話番号が変わってしまうのが面倒、と感じている人が多いことに起因していると感じています。

OPhone、iPhone 3Gの登場

ただ、変化の兆しも見え始めており、3Gの目玉となる端末として、8月に移動がOPhone、10月に聯通がiPhone 3Gを発表し、聯通のiPhone 3Gは実際に10月末から発売開始をし、立ち上がりこそ苦戦しましたが12月10日の発表ではユーザ数が10万人を突破したとが発表されました。また、移動が3G推進の主力と位置づけているOPhoneは多普達(HTCの大陸ブランド⁠⁠、レノボ、DELL、サムスン、モトローラ、TCLなどから相次いで端末が発表されましたが、製品の出荷が遅れ、2009年3Gユーザ増の起爆剤にはなれませんでした。

ただ今後、とくにモトローラ、サムスンなどは明らかに中国市場に重きを置いているので、移動とのOPhone端末に限らず、彼らがワールドワイドで展開しているAndroid端末とあわせて3G開拓の旗手となっていくことは間違いありません。モトローラやサムスンのようにワールドワイド展開するベンダーが3G市場で展開する際に、先にあげたどの通信方式でどの通信キャリアと組むかと言うことがキーとなってきますが、ノンカスタマイズで展開できるという意味では聯通のWCDMAが一番親和性が高く、次に電信のCDMA2000が続いてくるかと思います。

中国移動の場合はTD-SCDMAと言う中国独自規格のため、中国で移動と組んで3G市場を開拓する場合、特別なカスタマイズが必要となってきますが、そこは7.2億の携帯ユーザー数のうち実に5億強のユーザーを有する移動の財産は、カスタマイズをしても尚お釣りがくるくらいの魅力ある市場です。

そういった意味では、中国政府も力の均衡、拮抗を3Gで図るために上述のとおりの通信方式の割り振りを行ったのかもしれない、などと考えてしまいます。

3Gの推進を後押しするWAP、モバイルインターネット

3Gの推進を後押しするものとしてWAP、いわゆるモバイルインターネットの存在が大きいと思いますが、中国移動もCMMBと言うモバイル端末向けTVを展開したり、インターネット上での動画、音楽などのサービスもモバイル端末向けに数多く提供され出しており、そういったコンテンツをモバイル端末で楽しむユーザが80後、90後と呼ばれる若年層を中心に増えており、今や中国ではモバイルインターネットのユーザは2億人に迫る勢いで、市場規模も43.9億元(約581.92億円)に達しています。

閲覧するコンテンツが今後ますますリッチになれば、より通信速度が肝になってくるので、それをきっかけに3Gに乗り換えるユーザが若年層を中心にさらに増えてくるかもしれません。

中国ではパソコンよりもモバイルの通信速度のほうが速い

また、モバイルインターネットの普及→3Gユーザの拡大を支える1つの要因として、中国ではパソコンのインターネット環境が、上海など都市圏でもADSLの1~2Mバイトが主流で理論値上は3Gの通信速度のほうが早いということもあります。これは内陸など地方に行けばより顕著になり、3大キャリア各社は中国全土にくまなく3G基地局、設備を築いていっているので内陸ではパソコンの通信環境よりもモバイルインターネットの通信環境、3Gのほうが普及していくのではないかとも思っています。

コンテンツ(アプリケーション)の拡充からも目が離せない

ネットワーク利用という意味では当然コンテンツだけではなくネットワーク型のアプリ、ゲームなどのニーズも伸びてきますが、これらのアプリケーションストアを移動は既にMobile Marketと言う名称で提供していますし、聯通は沃(WO)というサービスの提供を、そして電信も独自のアプリケーションストアを展開していく事を表明しています。移動のMobile MarketもApp StoreやAndroid Marketに代表される、いわゆる7分3分の利益分配を採用していますし、聯通や電信もそれに追従していくと言われています。

また、3大キャリア各社ともにアプリケーションストアの推進には設備投資含め非常に積極的ですし、当然プロモーションも積極的に展開されています。これから中国をと考えている皆さんは、コンテンツビジネスもそうですが、アプリケーションサービスなどで中国進出を目指せば、コンテンツ・アプリなどが十分でない、少ない今のうちがキャリア各社のプロモーションに乗っかれることもありチャンスかもしれません。もちろん参加する場合は中国における拠点及び登記、営業許可証が必要ですが、そこを手軽に取り組んでいけるコンサルティングサービスなどを弊社で提供していますので、ご興味あればぜひリンクをご高覧ください(Anhui OSSコンサルページ:http://www.anhuioss.com/consulting.html⁠。

2010年の展望:真の3G市場の元年

さて、中国における2010年は3大キャリアによる3G推進がさらに続いていくのと、その投資が基地局や設備から、モバイルインターネット、とくにコンテンツ、アプリケーション、ゲームなどの準備、またそれを受け止める端末を各社携帯メーカと連携して準備していく方向にシフトしていきます。

誤解を恐れずに言えば中国3G市場の立ち上がりは2010年こそが⁠元年⁠と言えます。日本でたくさんのノウハウ、資産をお持ちの皆さん、大きな海原に進出してみるのはいかがでしょうか。

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