新春特別企画

LibreOffice/Apache OpenOfficeの2014年の推移と2015年の展望

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2014年のApache OpenOffice

続いてApache OpenOfficeです。

リリース状況

リリースは4月29日の4.1.0と8月23日の4.1.1です。一昨年のリリースも3回なので,こんなものではないかと思います。

ダウンロード状況

Apache OpenOfficeはダウンロード数を公開しています。これによると,4月17日に1億ダウンロードを達成しました。

ダウンロード数の推移は次の表を見てください。

日付 ダウンロード数
2013年12月31日 8,500万
2014年1月31日 9000万
2014年3月7日 9500万
2014年4月17日 1億
2014年5月21日 1億500万
2014年7月4日 1億1,000万
2014年8月24日 1億1,500万
2014年9月27日 1億2,000万
2014年11月4日 1億2,500万

日本の総人口が一人一回ダウンロードしたという計算ですから,すごいことだと思います。なお,原稿執筆時点でデータが12月1日までのものしかありませんが,昨年のうちに確実に1億3,000万は超えているでしょう。

開発状況

LibreOffice, OpenOffice, and rumors of unification(LibreOffice,OpenOfficeと統合の噂)という記事が話題をさらいました。IBMがApache OpenOfficeの開発から撤退(withdrawal)したのかもしれないというのが根拠で,その証拠としてIBMの社員がメーリングリストに登場していないというのが挙げられていました。しかし,これは証拠としては薄いどころか誤りであり,全体の信憑性も微妙です※10)⁠IBM社員が開発に参加しているのは事実ですが,あくまでコミュニティメンバーの一員としてであり,IBMは企業として参加した事実がないのに撤退なんてしようがない,というのがIBMの言い分なのか,この件に関する積極的な発言はあまり多くありません。

客観的な事実としては,最初のリリースからリリースマネージャーを務めたJurgen Schmidtさんが辞任することがありました※11)⁠Jurgen SchmidtさんはIBMの社員であり,何か続けられない理由ができたのかと勘ぐってしまいます。

もう1つ客観的な事実として,svn trunkへのコミット回数の減少があります。一昨年は1,325回のコミットがありました※12)⁠しかし去年は639回しかありません※13)⁠一昨年から半減もまぁそういうこともあるのかなという感じですが,月別にグラフにすると次のようになります。

図1 2014年の月別コミット回数

画像

リリースの前後で落ち込むのはそれほど不自然ではないにせよ,9月以降に回復してしかるべきですし,この話題が出た10月には一時的に復活しているのは不自然です。ちなみに一昨年(2013年)のグラフは次のようになりました。

図2 2013年の月別コミット回数

画像

Apache OpenOfficeの巨大さを考えると,毎月1桁のコミット回数では控えめに言っても少なすぎると思います。

これで実のところどうなのかがある程度推測できますが,この件に関してはJurgen Schmidtさんがコメントしているので,そちらも参照してください※14)⁠

※10
そのあたりは噂ということで。
※11
文面を素直に受け取れば,辞任のための相談です。
※12
昨年のグラフの数値とは異なりますが,原稿執筆後に5回コミットがあったので,その分が追加されています。
※13
12月27日現在です。
※14
打ち切りマンガの最終回みたいだなと思ったのは大人気ないので伏せておきます……。

LibreOffice vs Apache OpenOffice ラウンド3

前回まではここでLibreOfficeとApache OpenOfficeの比較を行っていましたが,今回ばかりは全く意義を感じないので,1つエピソードを紹介します。

7月16日にNoto Sans CJK/Source Han Sansフォントがリリースされました。高品質なフリーフォントであり※15)⁠利用者も多いのではないでしょうか※16)⁠しかし,LibreOffice/Apache OpenOfficeでこのフォントを使用してPDFにエクスポートすると,クラッシュする不具合が発見されました。

LibreOfficeへのバグ報告は7月19日になされ,その後パッチが提出。これが適用されます。しかし,フォントを読み込めないならともかくクラッシュするのはおかしいというコメントが出て※17)⁠その問題も解決されます。この修正は4.3.1/4.2.7に盛り込まれ,リリースされました。すなわち,現在は修正されています。

一方,Apache OpenOfficeへのバグ報告はあるものの,その後全く動きがありません※18)⁠すなわち,現在でも修正されていません。

Noto Sans CJK/Source Han Sansを埋め込んだPDFを作成したい場合にはLibreOfficeを使用しましょうということになりますし※19)⁠LibreOfficeの開発が活発に行われている何よりの証左でもあります。

※15
自由と無料の両方の意味でのフリーです。
※16
LibreOfficeで使うと,縦書き非対応なのが気になります。
※17
ちなみにMichael Stahlさんは元Sun/Oracle社員で,現在はRed Hat社員です。その後に登場するStephan Bergmannさんも同じです。
※18
確かに4.1.1に間に合わせるには微妙な時期ではありました。
※19
もちろん自分でビルドできるのであれば話は別です。

2015年のLibreOffice

明確に決まっているのは4.4と4.5のリリースです。4.4は早ければ今月中にもリリースされます。4.2でもそうでしたが,第一四半期にリリースされるメジャーバージョンアップ版はGSoCの成果を含んでいるため,いろいろと興味深い新機能があります。ブランチは切られているので,4.5の開発もすでに始まっています。

あとはLibreOffice Conference 2015がデンマークのオーフス(Aarhus)で開催されることが決定しています。9月23日から25日までということは,LibreOfficeの5周年はこのイベント開催中に訪れることになります※20)⁠

寄付も順調に集まっているようなので,これをうまく使ってなにか面白いことをするのではないかと期待しています※21)⁠

※20
LibreOfficeは2010年9月25日に開始しました。
※21
さらに多くの寄付が集めて,より多くのフルタイム開発者を雇用できるようになるのが一番いいことなのでしょうが。

2015年のApache OpenOffice

4.1.2のリリースが提案されています。今年も最低でも1回のリリースはありそうです※22)⁠

このほか,Apache OpenOfficeの前身であるOpenOffice.orgの前身であるStarOfficeの前身であるStarWriter※23がリリースされてから30周年という話が挙がっています。しかし,StarWriterはApache OpenOfficeの直接の先祖ではなく,その5年後のStarWriter for Windowsが直接の先祖なので,25周年とすべきであるという実に興味深い投稿がありました※24)⁠いずれにせよ,記念の年と言えるでしょう。

それよりもなによりも,もう少し開発が活発に行われることを期待したいところです。

※22
あくまで希望的観測です。
※23
ややこしいですね……。
※24
元SunのStarOfficeチームのうち14人が,Open-Xchangeという会社で働いていることも明らかになりました

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。

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