新春特別企画

LibreOffice/Apache OpenOfficeの2017年振り返りと2018年

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マスコット騒動

LibreOfficeのコミュニティで揉め事が起こることはあまりないのですが,ついに起こってしまいました。

LibreOffice Design Teamが主体になってLibreOfficeのマスコットを決めることになりました。

6月28日にマスコットの募集が行われ,9月28日から10月8日まで一次投票11月13日から12月17日まで二次投票が行われる予定でしたが,さまざまな理由,特に二次に残った12個のマスコットの選定理由が不明瞭であるということから「炎上」してしまいました。ほかには注意深く排除したはずの他者の権利を侵害しているものもあるのではないかという懸念もありました。

この懸念を指摘したブログ記事やOMG! Ubuntu!での記事ではとても多くのコメントがついています。これは,Libbieというキャラクターが決勝に残らなかったのも大きな不満点の一つのようです※6図2)⁠

※6
Libbieは相当に人気があるらしく(もちろん筆者もお気に入りですが)⁠いくつかのファンアートを見かけましたし(その)⁠LibreOfficeの画像をLibbieのものに差し替えてしまうスクリプト(と画像)まで存在しています。作者はKDEのキャラクターであるKonqiやKritaのキャラクターであるKikiのデザイナーでもあるTyson Tanさんです。

図2 Libbieのイラスト。ライセンスはCreative Commons 0,すなわちパブリックドメインである

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11月16日に事態の説明がされますが,事態は収束せず,結局11月20日には投票中止となります。

12月22日には最後の説明がありましたが,The Document Foundationのボードディレクターの意向によって今回の投票が行われたというさして重要とは思えない情報の開示があって幕引きとなりました。

今後マスコットはタブー化されるのか,あるいは仕切り直すのか,今後の展開を見守っていきたいです。

なお,過去に2回デフォルトでインストールするImpressのテンプレートを決めるコンテストは行われていますが1回目2回目)⁠こちらはおおむね問題なく終了しています。

カンファレンス

昨年もローマでLibreOffice Conference 2017が行われました。そのレポートその1その2が公開されていますので,ご覧ください。

このイベントで発表されたもののいくつかは「台湾での動き」の項でも取り上げましたが,やはり重要なカンファレンスであるという認識を新たにしました。

日本での動き

10月22日にopenSUSE.Asia Summit 2017でLibreOffice mini-conference 2017 Japanが行われました。スタッフの一人である小笠原さんのレポートによると,外国からの登壇者もあり,国際的なカンファレンスだったようです。

なお,今年も国内向けのイベントを大阪で開催する予定があります。

Ubuntu Weekly Recipeの記事

Ubuntu Weekly Recipeに掲載されたLibreOfficeの記事をここで振り返ってみましょう。

いずれも主にApache OpenOfficeにはない機能を紹介しています。

2018年のLibreOffice

6.0リリース

今月1月末あるいは2月初旬にリリース予定のメジャーバージョンアップ版は6.0です。とはいえ昨年紹介したユーザーインターフェースを選択できるMUFFINを有効にするといった大きな変更はなく図3)⁠おおむねいつもどおりのアップデートです。ただし5.4ではあまり大きな変化がなかったため,新鮮に感じるかもしれません。

図3 LibreOffice 6.0 RC1でMUFFINを有効にし,ノートブックバーを表示したところ。実験的機能のままではあるが,開発自体は継続している

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筆者視点で一番大きな変更点は,Calcの計算エンジンがマルチスレッドに対応したことですが図4)⁠どうやら6.0リリース時点ではデフォルトで無効になりそうです。Calcで1万レコードを超えるデータを扱うと動作が重くなり,OpenCLで高速化できるものの安価なビデオカードでは焼け石に水,という経験をお持ちの方は筆者以外にもいるのではないかと思います。そういったユーザーにはこのような変更があるだけでも朗報です。

図4 LibreOffice 6.0 RC1のLibreOfficeについて。設定を変更してマルチスレッドサポートを有効にしたので,⁠Calc: group threaded」となっている

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LibreOffice OnLineの普及

今年はLibreOffice OnLine(以下LOOL)が普及する年になるのではないかと推測しています。というのも,現在各種LinuxディストリビューションではLOOLのパッケージがありませんが,ある問題が解決したのでパッケージとして用意されることが期待できるようになったのです。

ある問題とはライセンス問題で,LOOLに必要なPOCOというライブラリのJSONパーサーが悪名高いJSONライセンスだったのです。このライセンスの問題点はGNUプロジェクトDebianプロジェクトで簡潔に解説されているのでここでは繰り返しません。

昨年11月にリリースされた1.8.0でこの問題が解決され,すでにDebian不安定版(sid)ではパッケージとして提供されています。

DebianのLibreOfficeメンテナーはすでにパッケージ化の作業を進めており,近いうちにパッケージとしてリリースされることでしょう。ほかのLinuxディストリビューションでも同じ動きがあることが期待できます。

パッケージ化されると手軽に使用できるようになるため,今後の普及が見込めるということです※7)⁠

※7
個人的にはsnapパッケージになるとメンテナンスが簡単ですごくいいと思います。

2017年のApache OpenOffice

リリース状況

Apache OpenOfficeは,10月19日に4.1.4がリリースされました図5図6)⁠4つの脆弱性を修正しており,4.1.3以前のユーザーはアップデートを強く推奨します。

図5 4.1.4でも(ついでに4.1.5でも)Windows版のインストーラーは署名されておらず,本当にオフィシャルなインストーラーかユーザーが確認する必要がある

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図6 Apache OpenOffice情報ダイアログ。Apache Software Foundationのロゴが変更されている

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12月30日には4.1.5がリリースされました。主に4.1.4のリグレッションを修正しています。4.1.3から4.1.4への期間を考えるとずいぶんと短いスパンでのリリースですが,リリースノートによると修正された不具合が片手で数えられるほどしかなく,未修正のリグレッションもあり,急ぐ理由があったと推測できます。

開発状況

どのような角度から眺めても,Apache OpenOfficeの開発が活発であったとはとても言えるような状況ではありません。

8月2日にLWN.netで公開されたWaiting for AOOという記事では1日に10万回ダウンロードされるだけのユーザー数と開発状況がマッチしていないと指摘しています。

図7は昨年のtrunk※8へのコミット回数です。一昨年よりは2割弱ほど増えていますが,Apache OpenOfficeのコードの総量を考えると充分な数ではありません。

※8
今でもSubversionを採用しているので,trunkです。

図7 月別のApache OpenOfficeのtrunkへのコミット数

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4.1.4自体も難産で,4.1.4 RC1のビルドが提供されたのが8月4日で,リグレッションが見つかってRC2,RC3はスキップされて,RC4でもリグレッションが見つかって結局RC5までいき,これがリリース版となりました。RC1のバイナリの提供からリリースまで2ヶ月以上かかってしまいました。

そもそも前出のLWN.netの記事や筆者が指摘したように,1月の段階ですでに脆弱性があることを公表しています(そして後にその記述が削除されています)⁠1年近く脆弱性を修正したバージョンのリリースができないのは一昨年と状況があまり変わっていないということです。

PMC Chairの交代

昨年もPMCProject Management CommitteeのChairが交代になりました。事実上のプロジェクトリーダーです。

Carl MarcumさんとPeter Kovacsさんの2名の立候補があり,Peterさんが選ばれました。2名ともにApache OpenOffice自体の開発経験はないという共通点があります。CarlさんはApache OpenOffice API Pluginの開発者とのことです。後にPeterさんのさらに詳しい経歴も投稿されています。

2018年のApache OpenOffice

4.2 Beta

現在のtrunkを4.2 Betaとしてリリースする予定もあります。今年の内に4.2としてリリースされるのを期待したいところです。もしリリースが実現すれば,2014年の4.1以来4年ぶりのメジャーバージョンアップです。

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。

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