エンジニアのための「失敗学」のススメ

第2回 失敗の「心理」学

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失敗学では,「失敗」を無闇に恐れる必要の無いありふれたものとして扱います。

ただし,どんなに失敗学に関する知識を蓄えても,自分の失敗を自分で認めることができなければ,分析することも対策を講じることもできません。スタート地点で転んでしまい,起き上がれないようなものです。

実際に失敗に直面した場合,主に心理的な理由から,自分の失敗(ないしは「失敗してしまった自分」)を直視できないケースが多々見られます。

本稿では,失敗に際しての心理について,筆者なりの分析・考察を述べたいと思います。

なお,「心理学」という表題を掲げてはいるものの,筆者自身は,心理学を体系立てて学んだわけではありませんから,学術的に見て誤りを含む可能性は多分にありますが,失敗時の心理に関する一考察としてお読みいただければ幸いです。

「落胆」のメカニズム

前回も触れましたが,失敗学提唱者の畑村氏が「千三つ」(成功するのは千回に三回)という言葉を度々引用しているように,(自分にとって)新しい事に挑戦するのであれば,成功よりもむしろ失敗することの方が多いはずですから,失敗しないのは,ずば抜けた才能に恵まれたか,あるいは新しい事に挑戦していないかのいずれかです。

「実力」「達成率」の関係を表すとすれば以下のようになるでしょうか? ここでは,「達成率」が1前後より大きければ「成功」としています。

式1 達成率

達成率
実力
難度

しかし,実のところ「難度」は,着手前に見えている「想定難度」と,着手して初めて見えてくる「潜在難度」から構成されます。

なお,自然災害や社会情勢変動といった壮大なものから,他人による妨害といった卑近なものまで,自分では制御できない「外乱要因」(「運」と呼んでも良いでしょう)や,自身の「実力」を過剰評価しているケースも,ここでは簡略化上「潜在難度」に含むものとします。

式2 実達成率

実達成率
実力
想定難度 + 潜在難度

つまり,実際の達成率(「実達成率」)は,当初期待していた達成率(「想定達成率」)よりも「潜在難度」の分だけ低くなるが一般的です。

新しい事に挑戦する場合,とりわけ技能が低かったり経験が浅い=「実力」が小さい場合は,なおのこと「潜在難度」の見積もり精度が低くなりますから,「実達成率」が低くなる=失敗するのは自明と言えます。

筆者自身が何か新しい事・難しい事をする場合は概ね,ある程度失敗するのは織り込み済みと考えていましたので,失敗の際に,傍から見て必要以上に落胆する人が多いことが不思議でした。

しかし,できると思っていたことができなかった場合であれば,確かに落胆する心理はわかります。

そこで,傍から見て必要以上に落胆するのは「想定達成率」「実達成率」との落差が関係しているのではないか,という仮定の元,「落胆」度合いに関して以下のような仮説を立ててみました。

式3 落胆

落胆 想定達成率 実達成率

実力
想定難度
実力
想定難度 + 潜在難度

実力
×
潜在難度
想定難度 × (想定難度 + 潜在難度)
(*1)
想定達成率
×
潜在難度
想定難度 + 潜在難度
(*2)
実定達成率
×
潜在難度
想定難度

少々複雑になってしまいましたので,以降では,わかりやすいように数値を当てはめてみます。

著者プロフィール

藤原克則(ふじわらかつのり)

Mercurial三昧の日々が嵩じて, いつの間にやら『入門Mercurial Linux/Windows対応』を上梓。凝り性なのが災いして,年がら年中アップアップな一介の実装屋。最近は仕事の縁が元で,OpenSolarisに入れ込む毎日。

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