[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第九回「初日」

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鹿留林道~二十曲峠 富士山拝顔ラン

国土地理院五万図:都留,山中湖

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何年前になるか,東京にも大雪の降った翌日,このコースに出かけていったことがあった。結果は惨敗。列車が東桂まで動いておらず,手前の谷村町から走り出そうとしたのだが,駅前からかなりの積雪でまともに前に進むことが出来ない。オマケに139号線は車線しか除雪が終わっていなくて,歩道には斜めに雪が積もっている始末。林道はあきらめ,えっちらおっちら雪をかき分け大月駅までなんとか走って,駅前のイタリア料理屋で新年会をして帰ってきた。

積雪の予想されるコースに出かけるときは前日の天候も考慮に入れるようにしてください。

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晴天の富士急行・東桂駅を出発。JRホリデー快速が直接乗り入れているのでアプローチはすごく良くなった。139号線に出たところのスーパーで食料を買っておく。余裕のあるときは,ここで鍋の材料を仕込んで峠で食べると旨いのだ。鍋とはいかなくても,サムーイ峠でのカップラーメンやスープなどの汁物,お茶の入れ立てくらいはあった方がうれしいから,邪魔になってもワンバーナーはバッグに入れておきたい。

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鹿留入口信号で139号とはすぐに別れて左へ,鹿留川沿いをいく。右手に立派な神社がおわしますので,初詣がまだの人は手を合わせていきましょう。

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大きな切り株が看板になっている材木屋を過ぎると,右手が切り立った崖,ホリデーロッジ(フィッシングセンター)を通り過ぎれば,もう峠まで車と出会うことはめったにない(といえ,ハンターや林業の方の車と出会わないとは限らないので油断は禁物)⁠気候によりけりだけれどゲートを過ぎてダートが始まる頃には,積雪も始まっていることと思う。凍結部分を避けてサクサクとした雪面を選んで走っていこう。

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てんげん橋を過ぎると右側に日当たりのいい広場見える。きれいな東屋も建っているので,ここらで休憩を取ることにしている。川沿いの樹林の中を散策できる木道も整備されているから,体を動かしながらのんびりしていくといい。

広場からすぐにグッと登りが来る。立派な木造(+鉄筋コンクリ)の橋を渡って標高を上げるに従い,少しづつ雪も増えてくる,が,これは序の口。左に大きく曲がりこむと尾根へと一気に引き上げてくれる激坂に出会う。同行者の中には,この坂を一気に登ることが出るかどうかでその年の体力を占うのだ(体力を占う……って,よくわからないが)⁠という人もいる。普段,ガンガン走っている人にはなんと言うこともないだろうが,私らには⁠激⁠なのだ。ガンガンの人は,タイムアタックで占って欲しい。

激坂を登り切ったところで一息。道はヘアピン状態で右に巻いてゆく,少し登るがこれで尾根へと出ることが出来る。

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尾根道に出ると雪も増える。アップダウンを繰り返し,くねくねと峠を目指して高度を上げてゆく。雪さえなければリラックスして走ることが出来る快適な道だ。路面は凍結して,その上にうっすらー⁠ー場所によってはたっぷり(ランドナーのガードに雪が詰まって,サイドブレーキ状態になり,仕方なくガードを外して背負って走ったこともある)ー⁠ー雪が積もっている。もう,峠までは4~5km。あせらず,積雪に注意しつつ,風景を楽しんでペダルを進めよう。⁠一度もこけずに峠まで行けるか」とか「一度も降りずに峠まで行けるか」などという大会宣言をすると,転倒者が続出して面白い。

尾根を回り込むと,一度ドンと富士山が顔を見せる。これは「峠か!」と思わせぶるために山の方が向こうからのぞきに来た感じで,すぐに山あいに隠れてしまう。でも,これは本当に峠の近い合図。人によっては何度かの転倒ですでに乗車をあきらめ押しに入っているかもしれないけれど,もう少しです。

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峠に着くと,西側の視界を遮るものは富士山しかない。この見事な富士を撮らえるために三脚がずらっと並んでいるところを見ても,ここが富士の絶景ポイントであることがわかる。

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ひとしきり富士を眺めたら,暖かい食事で元気を回復して,あまり体の冷えないうちに下ってしまおう。夕日が近づくにつれて,写真を撮るために上ってくる車が増えるし,夕日の絶好タイムが過ぎればドッと車が降りてくる。こちらがわに雪が着いていることは少ないが,それでも,路面がガチガチに凍っている部分が多い。カーブを曲がったとたん大凍結,大転倒もありえる。繰り返すが,こちらはメインストリートなので交通量が多く,大事故につながる恐れがあるから,臆病なくらいゆっくり下って欲しい。

ゆっくり下るので,かなり冷える。登り,休憩時,下り,平地走行で温度調整が出来るよう防寒対策は万全に。

峠を下りきって,つきあたりを右へ,道沿いに走れば忍野八海に出る。漬け物や味噌を売るお土産屋が軒を並べている。焼きお団子,そして名物のお蕎麦も堪能できる。富士の伏流水がこんこんと湧いているから,ボトルの水を詰め替えて,これをお土産にする。

この後は,めったに開いていない売り切れごめんの蕎麦屋がある峠を越えて,富士吉田に出るもよし,忍野の蕎麦を我慢して吉田のうどん※3をたぐり込んで下吉田や葭池温泉駅に出るもよし。ある程度自転車に乗っている人なら,午前中に東桂を出発していれば,おそらく日の高い内にここまで来てしまっていると思うので,そのまま大月まで走ってしまうといいだろう。

※0
冬期は林道のゲートが閉鎖されている場合があります。心配な方は都留市や富士吉田市の役場に問い合わせてください。
鹿留林道に限らず,積雪時の林道や山道は乗車率が低くなり,コースタイムは平常の倍以上かかるとみこんでください。時間と残りの距離を常に頭に入れて,日暮れ前に林道から抜け出すことが出来ないと判断したら引き返すこと。引き返すタイミングを計るときは,凍結していれば下りも乗車できない場合が多いことも忘れずに。
※1 常夜鍋
「下茹でしてもほうれん草のアクを吸うから常夜鍋には豆腐は入れないのだ。ついでにネギも」という方もいるかもしれないが,豆腐が無くてほうれん草と肉ばかり食べているとすぐ腹ふくれて呑めなくなるから,豆腐は必需品なのです。
※2
山頂には自転車を担ぎ上げても意味はないので下にデポジットしてきた。この後,毛布や寝袋で一寝入りして,城趾の尾根線をハイキングし富士山のご尊顔を仰いだ後,下山して帰路についた。

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※3
吉田のうどん 下吉田や月江寺などの近辺には(茹でキャベツの入った)名物うどんを出す店が50軒ほど軒を連ねている。駅で「吉田のうどん」マップを配布しています。

著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com

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