[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第十五回「トラブル」

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鶴峠・松姫峠

地図:国土地理院五万図 ⁠上野原」⁠五日市」⁠丹波」⁠都留」

JR上野原駅~上野原美術館~大越路~棡原~田和峠~鶴峠~松姫峠~ふかしろ湖……猿橋……JR猿橋駅

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峠です。何度も繰り返していることですが,やっぱり峠はいいです。気分良く脚を使い切ったなあ,という実感を持ったコースです。

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今回は運転希望者がいたので,中央高速を使ってのアプローチ。上野原ICを降りて右折。中央高速の陸橋を渡ったらすぐに左へ。道沿いに大きなスーパーマーケットがあります。営業時間前なのに―銀行のATMがあるせいでしょうか―駐車場は開放されていました。ここで自転車を降ろして組み立てます。

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上野原の街中を抜けて,市役所の脇をかすめ,上野原中学校入口交差点を右へ。

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左手にすぐ上野原美術館があります。

小さな小さな美術館です。でも,一歩中に入れば「あ,この人知っている」と誰もが思う作家達の日本画,洋画,彫刻,生原稿などが珠玉のように並んでいます。自転車ルックは場違いだとばかりに,じろじろと不躾な目で見る係員もいないから,ゆっくりと鑑賞できます(時々,階上から子どもの声や足音がしてくるのはご愛敬)⁠

私たちが行ったときは,まだ開館時間前だったのに,表で残念がっている声が聞こえたらしく開けてくれました。そんな心遣いも小さな美術館ならではです。

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美術館を出て,上野原中学校にむかって上っていきます。歩道橋をくぐり,正門の真ん前が大越路の入口。

下っているから「あれ?」と思うけどご安心を(?)すぐにきつい上り坂になります。

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竹藪の中の道をえっちらおっちら,大越路の名にふさわしい登り道。

美術鑑賞から一転した環境に体が慣れようとした頃,ピークの奈須部配水池に到着。池といっても柵に囲われていてなにも見えません。ブレーキのトラブルでもおこしていないなら長居は無用。とっとと下りましょう。

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ゴルフ場に迷い込んだりしながら,アップダウンを繰り返し,といってもアップアップに近いのだけど,段々と標高を上げていきます。甲武トンネルとの分岐を過ぎ,小菅村方面へ。

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渓谷の瀬音を道連れに整備された道をさらに上へ上へ。このあたりは長寿で有名な棡原地区(ゆずりはら。親近感を覚える地名だなあ)⁠直売所には『超濃厚豆腐』だの『とろける超濃厚ゆば』だの気になる名産品が地元の夏野菜と一緒に並んでいました。豆腐は買わないとしても一息入れるには絶好のポイント。直売所の前からは,棡原の集落を望むことができます。

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長寿料理で有名(よくテレビの旅番組なんぞで紹介されている)な梅鶯荘も通り沿いに居を構えているので,前もって予約を入れて昼食タイムにするのもいいでしょう。

  • 〒409-0111 山梨県北都留郡上野原町棡原13228
    TEL0554-67-2933

私らはたっぷりと昼飯を準備してきているので,先を急ぎます。

この日は曇りがちで,時折小雨がぱらつくというあいにく……といいたいけど,真夏の自転車乗りにはもってこいのお天気。でも,ときおり雲が切れて太陽が顔を出すと,熱気がのしかかってくるようになります。それだけに,ずうっと寄り添って流れてくれる鶴川の水景がとても嬉しい。

その鶴川としばしの別れ,勾配11%なんて,お知らせしてくれなくても構わない看板を横目でにらみながら田和峠を越えます。

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再び鶴川に出会ってすぐ,右手に西原中学,左手に西原小学校。小学校の裏手に羽置の里 びりゅう館があります。

びりゅう館と小学校の間が素敵な草地になっていたので,そこで昼食にしました。サポートカーがいると昼飯も豪華です。自転車ランの最中に,野外でテーブルを広げ,茶碗にご飯をよそい,味噌汁つきの昼飯にありつくことなどめったにありません。

びりゅう館でも蕎麦を中心にした食事をとることができます。

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さあ,腹もくちくなったし(ちとなりすぎました)⁠本日のメインイベント。鶴峠を,松姫峠を目指しましょう。

鶴川といっしょに(といってもあちらは下っているのですが)ぐいぐいと標高をあげて,川がつきたところが峠です。まだアジサイの咲いている峠にはバス停があるだけ。なんだ,とがっかりさせられるかもしれません。しかし,この後,松姫が待っています。バスに乗って帰るなどといわず,きばっていきましょう。

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鶴峠の下り道から松姫峠への登りがちらほらと見えています。無駄に下っているような気がするけれど,その通り。下った分だけ登りが待っています。松姫峠へは吉野集落のT字路を左へ。

ここを右に行けば奥多摩湖へ出ることができます。松姫を越えるのに時間や体力的にしんどかったら深山橋を渡り奥多摩湖経由でJR奥多摩駅へ。元気がありあまっていたら,三頭橋を渡って風張峠を越え,数馬から秋川沿いに武蔵五日市。多摩川へ出て,土手のサイクリングロードに入れば,都内まで車を気にせず自走で帰ることができます。

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松姫峠に来るのは十年ぶり。記憶通りにしんどい道を休み休み漕いでいきます。まだかいな,いやんなってきたなあ,脚が残っていないなあ,と,気力が萎える直前。峠に着きました。

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前に来たときには,鬱蒼と茂った木に囲まれて眺望も悪く,松姫峠の由来となった武田のお姫様・松姫の碑が建っているだけだったのが,回りの樹を刈り取って峠から甲斐の山々と富士山を見通せるようになっていました。

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きれいな公衆トイレもできているから,女性にも評判が良いのではないでしょうか。

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この日は富士山を望むことはできなかったけれど,下りに入る直前の場所から,これから下っていく道が山あいを豪快につたっていくのが見え,疲れがすっとひき,気持もぐっとひきしまります。

ここから長い下りを経て,日本三大奇矯・猿橋を渡ってJR猿橋駅がゴール。

・・・の予定でしたが,

ひきしまりはしたものの,応急処置のブレーキで猿橋までの延々20数キロメートルに及ぶ(ほとんど)下りをこなすのもなんだし,車のリアウィンドウもないし,ここはふんぎりをつけて,前には無かった深城ダムにある小金沢公園をゴールに決めました。

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小金沢公園には無料の駐車場があるので真木小金沢林道,大峠をからめた周回コース(上級者向けだと思う)のデポジット場所にも使えそう。ダムができたから真木小金沢林道も通行できるようになっている。前に途中で引き返したことがあるのでリベンジ,と,思いきや,なんだまだ通行止めかあ。

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公園で自転車を車載。大月に出て,駅前のイトーヨーカドーでゴミ袋を買い,リアウィンドウもガムテープで応急処置をして帰路についたのでした。

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著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com