[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第二十三回「地図」

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「地図が読めるようになると楽しいですよ」

そう教えてくれたのは,お世話になっている自転車ショップの常連Nさんだった。

地図を読む,ということは,地図に記された情報から土地の様子を思い浮かべるということ。

自転車ツーリングのコースは,自分の体力,同行者の体力を考えながら一日にどのくらいなら無理なく走ることが出来るかを判断して決めなくてはいけない。

距離と一緒にコースの起伏がどうなっているのかも検討する。

一日に平地を100km走ることが出来ても,途中に標高100mの地点から標高1000mまで登る峠があれば,登りに使う体力と時間を考えに入れて50kmにしておいた方がいいかもしれない。

食事をするタイミングも,昼ご飯&大休止の後すぐのガッツリとした登りはお腹に響くから昼食は早めにこのあたりでとることにしようか,それとも遅くなっても登りきって見晴らしのいいところにしようか,でも,慣れてない人がいるから,きつい登りの後だと食欲が出ないかも知れないからいっそ下ってしまって,集落の飯屋で暖かい物を食した方がいいのでは……地図はそんなときも相談にのってくれる。

地図には,走るべき道はもちろん,道の勾配,あたりの様子,集落の位置,病院や警察署の場所,遺跡(石碑,城址,廃線道,暗渠)などの見所情報も載っている。

載っている情報を読み取るために必要なのは少しの知識と慣れだけ。

この"慣れ"の部分でめげてしまう人が結構多い。同行者に地図を読める人がいると,あてにしてしまって自分では地図を持参しない人もいる。

自転車に乗って,遠乗りするなら,いや,ご近所のポタリングの時こそ,地図とおつきあいを始めるいい機会になる。

見慣れた風景が地図の上ではどう表現されているのか。いつもきついなあ思う坂道の等高線はどうなっているのか。

地図と照らし合わせながら走っていると,地図の上に風景を描くことが出来るようになる。

それが「地図を読む」ということ,そうなると,地図を見ているだけで楽しくなって,走ったコースを思い返すのはもちろん,いってみたい土地の地図をそろえるのも楽しくなってくる。地図を見ているだけでその土地にいったような気になって,もういかなくてもいいや,という気持ちになって……くることはありません。

ここでいう『地図』とは,国土地理院発行の二十万図,五万図,二万五千図のこと。

全体構想には二十万図,コース設定と持参するのは五万図,より細かい情報が必要な,林道や登山道がコースに入っているときと街中のポタリングには二万五千図を使う。

コースを決めたら,距離を横軸。標高を縦軸にした折れ線グラフに,等高線をうつしとるコースの断面図『プロフィールマップ』を作ってみると,より地図に親しむことが出来るようになる。

パソコン用地図ソフトが充実して,ポイントをチェックするだけで距離が積算され,所要時間の予想もプロフィールマップもリアルな3D画像も,グーグルで街の風景を写真で見ることもできる。GPSを使えば,現在地もなんなく確認できる。

僕もパソコンやGPSを便利に使わせてもらっている。

でも,コースを決めるときは地図を開く。キルビメーターで距離を測る。等高線をせっせと読む(読み間違いも多いけど)⁠

ツーリングにもポタリングにも地図は欠かさない。自分の人差し指先端部の横幅が五万図での1kmにあたることも知っている。あたりの様子から大体の現在位置を割り出すことも出来る。コンパスがあれば進むべき道を探すのはもっと容易になる。

それは,山の中で電池切れに泣くのは嫌だ,という危機回避もあるけれど,なによりも地図を読むのが楽しいから。

片言ながらも地図と話が出来るのが楽しいからに他ならない。

それに,大型書店の地図売り場で,国土地理院・地図専用のキャビネットから地図を選んでいる姿ってかっこいいと思いませんか。

著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com

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