[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第二十七回「辿る」

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辿る。

辿るのって面白いと思う。

小さいとき,アリの行列を見つけて辿ってみた経験は誰にでもあるんじゃないだろうか。

道に水の流れた後を見つけたときもなんとなく辿ってみたくなるし,学校の渡り廊下で石灰が転々とこぼれているのを見つけるだけで辿ってみたくなる。

鉄道のストライキの時には,学校からどんなに止められていても線路を辿ってみたものだ。途中でストが中止になって,あわてて線路から抜け出したはいいけど,自宅のある駅まで戻るだけの電車賃の持ち合わせが無くて,とぼとぼと線路脇の道を辿って帰ってきたこともあった。

特に男の子は「辿る」という行為が好きなのではないだろうか。

芥川龍之介の『トロッコ』は,少年二人がトロッコの線路を遊びながら辿り,泣きながら戻ってくる話だったと思う。映画『スタンド・バイ・ミー』も線路を辿っていく少年たちの話だし,銀林みのるの『鉄塔武蔵野線』も鉄塔を辿っていく少年の物語だった。

少年,ではとうになくなった今でも『辿る』のは楽しい。

自転車旅でも,絹の道や塩の道,旧甲州街道といった『古道』辿ってみたり,碓氷峠や村山貯水池への軽便鉄道跡,武蔵五日市線・岩井支線など『廃線道』をツーリングコースに加えたりして楽しんでいる。

そんな「辿る」旅の中で,自転車を使っての移動に醍醐味を一番感じるのは「川を辿る旅」だ。

ひとつの川を河口から源流まで辿ってみる。川を取り巻く環境は河口から源流までの間,様々に変化していく。自転車はちょうどいい速度でその変化を辿どってくれる。

多摩川,長良川,四万十川のような大河川を辿るのはもちろん楽しい。河原でキャンプしながらのんびりと辿ることが出来るなら,これほどの贅沢はない。

でも,そんな大きな川ではなくても,もっと近くにある川,それこそアリの行列に出会うくらいの気楽さで川とつきあってみると,⁠辿る」ことの楽しさを再認識することが出来る。

用水路でもいい,暗渠(フタがされてしまっている水路。遊歩道や路地になっている事が多い)になってしまっている川でもいい。一度,川を辿る旅……いや,お散歩に出かけてみませんか。

より面白くするポイントは「出来る限り川沿いを辿ること」です。

著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com

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