ライフハック交差点

第4回人生を思い通りに生きてみる:ライフスタイル・ハックのすすめ

いきなり大時代的な問いかけで申し訳ないのですが、思い通りに生きている人というのは、どういう人のことだと思いますか?

ぱっと思い浮かぶのは他人の指図を受けなくてもいいほどに社会的に偉くなった人、あるいは、ほしい物はなんでも手に入るほどの経済的な自立を果たした人でしょうか。

その両方にあこがれを感じないでもありませんが、より大きなとらえ方をするなら、私はそれを「自由な人間」のことではないかと思っています。全ての人が好きなだけ偉くなれたり、経済的に無限に豊かになれたりするわけではありません。しかし、与えられた制限の中でも、何事も自分流でこなすことができる人はある意味「思い通りに生きている人」なのではないでしょうか。一介のライフハック・ファンとして、これは私の目標でもあります。

「ライフハック」は、つまりはライフ(人生)をハックするということですから、身近なことや毎日の仕事をハックするのもいいのですが、どうせなら自分の人生のスタイルそのものだって思い通りに改造してみるというところまでやってみるのもよさそうです。名付けて、ライフスタイル・ハッキングです。

ライフスタイルを変えるといっても、それは新しい習慣を導入するということに他なりません。今回は数ある自己啓発書や、仕事術のなかから3つの典型を選び、それらを自在に組み合わせる方法についてご紹介します。

7つの習慣:「大きな構図」の仕事術

「自分は何のために仕事をしているのか。」⁠自分にとって人生の目標とは何か。」こうした難しい疑問に正面から取り組むことで、自分が立たされているBig Pictureつまりは「大きな構図」をとらえる仕事術が数多くあります。スティーブン・コヴィーらによって提唱された「7つの習慣」⁠キングベアー出版)などはこの代表例といっていいでしょう。

絵で言うなら、まず全体の構図を頭にいれ、自分はいったいその構図のどこに立っているのかを把握し、そして思い描いた人生目標に向かうために必要な最も重要なタスクを考えていきます。⁠7つの習慣」は簡単にまとめると以下のようになると思います。

  • 自分がもっている価値観を探り、自分がやるべき最重要タスクが常にそこから生まれるようにする習慣
  • 仕事だけでなく、⁠家族」⁠友人」といった役割(ロール)に対してそれぞれ目標を立てることで、バランスのとれた成長を目指している
  • 自分自身の主体性の確立から始まり、周囲の人との相乗作用を活かしてチームの生産性をあげるところまで、一つの成長プロセスとして盛り込まれている

有名な企業で言うなら、たとえばGoogleは企業としてのミッションを「世界中の情報を体系化し、アクセス可能で有益なものにすること」としています。多岐にわたるGoogleの全てのサービスが、この30字にも満たないミッションで総括できるのは驚きですが、私たちも自分自身にたいしてこのようなミッションを与えることで、何が自分のミッションで、何が関係ない寄り道なのかをはっきりさせることができます。

価値観から始まる仕事術は、今日始めて明日成果が生まれるという短期的なものではありませんし、決して楽なプロセスではないのですが、まるでお金の長期投資のように年月とともにかならず大きなプラスとなるのが魅力です。

Getting Things Done:徹底した現場主義の仕事術

いまやライフハックの代名詞ともなったGetting Things DoneはDavid Allenが提唱して、アメリカのブログでカルト的な人気を獲得した仕事術です。この連載の第一回でもご紹介しましたし、GTDでお仕事カイゼン!の連載でも具体的な進め方がまとめられています。

実践の仕方や、GTDツール・アプリをどう使いこなすか、というレベルで紹介されることの多いGTDですが、ライフスタイルとしてのGTDは次のような特徴を持っていると思います。

  • やってくる仕事、メール、約束ごと、じぶんのやりたいと思っていることなどをいったん自分の頭から信頼できる別の場所に保存してから処理するという、現実への対処法をシステム化する習慣
  • 仕事やプロジェクトを管理するのではなく、自分が行う具体的な行動(アクション)を管理する
  • 一人だけでも実践可能ですので、いってみれば仕事の能率のチューニングの側面が強い

GTDは徹底した現場主義の仕事術です。いま・ここで・どんなアクションをとれば良いのかをはじき出すシステムを作ることで、ストレスなく仕事を進められるようにしてゆくことを目標としています。

価値観やミッションといった大きな構図ばかり追っているのでは日々の仕事は片付かないと感じている人にとって、現実の問題を片付けてゆくことから始められるGTDの習慣は大きな即戦力となります。

The 4-Hour Workweek:今話題の、仕事を減らす仕事術

今アメリカで大きな話題を呼んでいるのが、弱冠29歳の起業家Tim Ferrisによる週に4時間しか働かない仕事術です。Timは複数の製品やサービスを売っている起業家ですが、アウトソーシングや、利益をもたらさない顧客を切り捨てるなどといった手法でビジネスを極限まで効率化する方法を一冊の本にして多くの人を驚かせました。

邦訳の待たれる彼の本には非常に多岐にわたる実例が載っていますが、とくに今回の話と関係するところでは4HWWは次のようにまとめられます。

  • 仕事であれ、自分の趣味であれ、全ての時間投資に対してパレートの法則(別名80:20の法則)を適用して厳格に無駄を省いていく習慣
  • 遠い未来に目標を実現するのではなく、短期的で具体的な目標をたて、それを実現するために必要な時間・投資額を算出して行動する
  • 他人に任せたり、アウトソーシングしたりすることができる仕事なら、可能な限りそちらに任せてしまうスタンスを取る

4HWWの本には論議を招きそうな内容が数多く含まれていますが、その根底にあるのは、たくさんのタスクを実行することは美徳ではなく、最小の努力で目標を達成して残りの時間は余暇に充てられるくらいにするべきだという考え方です。この余暇は実際に遊んでいる時間と考えてもいいのでしょうけれども、さらに次の目標に向かって飛躍するための「溜め時間」と考えても良さそうです。

すべてを組み合わせる

注意深い読者は、この3つが互いに矛盾していないということに気づいたかもしれません。

この3つの仕事術の特徴が頭に入れば、⁠自分が仕事に求める価値観」⁠人生における目標」といった大きな構図を「7つの習慣」でおさえつつ、現実レベルの仕事の能率をGTDでレバレッジして、かつ、自分にとってメリットにならないタスクを容赦なく4HWWの考え方で減らしていくといった組み合わせが、割合簡単にできるようになります。

多忙な局面ではGTDの活躍する度合いが多いけれども、ちょっと時間がある時期にはより長期の目標について考えてみる、といったメリハリだって可能です。

こうした組み合わせが可能なのは、それぞれの仕事術が解決しようとしている焦点が微妙にずれているからです。実践する側として私たちは、おいしいところ取りをすれば全てのメリットを受けることができます。

今回は「7つの習慣」⁠GTD」⁠4HWW」の3つを例にご紹介しましたが、世に溢れているビジネス書や自己啓発の方法論はすべて、どれか一つだけを鵜呑みにしなくても、自分にとって都合よく組み合わせて利用できます。自分の好みにあわせてカスタマイズした習慣で人生を変えてゆく、これこそがライフスタイル・ハッキングの醍醐味です

「人生を変える」というとおおげさに聞こえるかもしれませんが、それはようするに、自分の意志で新しい行動パターンを導入することに他なりません。まずは本などで学んだ小さな習慣を、⁠これ、やってみようか」⁠これは自分にはあわない」と取捨選択してゆくことから始められます。次にビジネス書やライフハックの関連本を読むときには、ぜひそんな視点も取り入れてみてください。

ちょっと話が大きくなりすぎましたので、次回はまた目線を手元に戻して日々の情報管理の話をしてみたいと思います。

それではまた。

Happy Life(style) hacking!

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