ライフハック交差点

第18回iPhone 「革命」代表する新世代の仕事術アプリ

7月11日にiPhone 3Gが発売されて1ヶ月以上が経ちました。発売当初こそ非常に注目されましたが、いまでは話題も落ち着いてきて、⁠iPhone、思ったほどでもないな」と感じられた人も多いのではないでしょうか。

しかしiPhone 3Gには遅効性でじわじわと効いてくる、他の携帯にはない大きな特徴があります。それはiPhoneが常にパソコンと連携して使用されることを意識していて、ファームウェアからアプリケーションまで、すべてをアップデートできるという「プラットフォーム」であるという特徴です。

発売されてすぐに指摘されたGPSの不具合や、日本語入力の問題なども、その多くが1ヶ月のうちにアップデートで修正されましたし、iTunes Apps Storeを通じて数多くのサードパーティーアプリケーションが毎日のように登場し、かつアップデートされています。

今回はiPhoneという「携帯以上、ノートパソコン未満」の端末が開いた新しい仕事術アプリ3つの比較を通して、プラットフォームとしてのiPhoneがもつ可能性について見てみたいと思います。

「いま」「ここで」できることを表示する:OmniFocus for iPhone

「やらなければいけないことがたくさんあることはわかっている、でも、⁠いま』⁠ここで』できることは何だろうか?」

時間管理やタスク管理の目標は、つまるところこの質問に対してできる限り少ないストレスで答えを出すことです。デビッド・アレンさんのGTDが大きな注目を集めているのも、コンテキストや「次のアクション」といった概念で「いま」⁠ここで」できることに集中するシステムを作っているからです。Omnifocus for iPhoneはそうしたGTDのシステムをiPhone上に持ち出すためのアプリケーションです。

OmniFocusはもともとMac OS X上で数々の素晴らしいアプリケーションを制作しているOmni Groupの作ったGTDアプリケーションで、それ自体が完成度の高いアプリケーションです。

しかし、いかに便利でもデスクトップアプリケーションですので、これまではMacの前に座っているときしか使えず、せっかく作ったプロジェクトリストやアクションの一覧表を手軽に持ち出すといったことはできませんでした(情報カードなどへ印刷する機能はありますが⁠⁠。

OmniFocus for iPhoneはこのデスクトップ版のOmniFocusで入力したタスクをMobile MeのiDiskやWebDAVサーバーを通じてシンクロさせる機能をもっています。デスクトップ版で行える操作はiPhone上でもできますので、時間をかけてレビューしたタスクをiPhone上に持ち出すことも、出先で思いついたタスクをiPhoneで入力してMac上へシンクロさせることも可能です。

そして、OmniFocus for iPhoneの最大の魅力は、iPhoneのGPS機能を利用した「位置情報を意識した」タスク管理です。

たとえば、いつも買い物をするお店や、いつも向かう取引先があったとして、そこで実行するタスクを忘れないようにするために「店」⁠取引先A」といったGTDのコンテキストを作っていたとしましょう。

OmniFocus for iPhoneではこのコンテキストだけのToDoリストを表示することも可能ですが、GPS機能を利用した場合、その店や取引先に近づいたときに、⁠この近くで実行すべきタスク」としてそのToDoリストがリストの一番上に浮上してくるのです。

私は「職場」「家」とを時々歩いて往復しますが、GPS機能をつけたまま歩いていると、職場を離れて家に帰る中間地点を過ぎたあたりで、先ほどまで「職場」のコンテキストのリストが一番上に表示されていたのが、今度は「家」が上にやってきて、何も考えずとも「次にこの場所の近くでできることはなんだろう?」という答えが一番上に表示されるように作られています。

omnifocus
omnifocus

GPSを利用した携帯端末はこれまでにもありましたが、こうした、位置情報からユーザーに利便性を提供するアプリはなかなか登場しませんでした。OmniFocusに限らず、GPSを利用したアプリが今後数多く登場して、こうした位置情報の価値をさらに深めてくれるはずです。OmniFocus for iPhoneはそうしたニーズを開拓した最初のアプリと言ってもいいと思います。

OmniFocus for iPhoneにはこの他にもモバイル端末であることを意識した、タスクの詳細を音声と写真で説明するという機能があります。急いでいてタスクの詳細をメモする時間がないときには、なかなか重宝する機能です。

ウェブサービスとシンクロする:Appigo ToDo

OmniFocusはMac OS X用のアプリケーションですので、Windowsでは使えないではないかという声が聞こえそうですが、これは現時点でOmniFocusだけでなく、多くのiPhoneアプリがかかえている問題です。

iPodがMacの売り上げを伸ばしたように、iPhoneもMacとの連携を強くする位置づけで開発が行われています。iPhoneのアプリは今のところMac上でしか開発できませんし、Windows上のデスクトップアプリケーションとの連携はMacに比べると難しいという現状があります。

そこで多くのiPhoneアプリは、プラットフォームを気にすることのない、ウェブサービスとの連携を主眼に作られています。その一つが、数あるToDoアプリの中でも最も利用しやすいものの一つ、Appigo社のToDoアプリです。

Appigo ToDoはそれ自体軽快に動作するToDoリストですが、その最も便利な点はRemember the MilkあるいはToodledoと連携するという点です。Remember the MilkやToodledo側で入力したタスクや、繰り返しのあるタスクがiPhone上のAppigo ToDoの方に表示されますし、逆にiPhoneの方からタスクを入力することも可能です。

Appigo ToDo
Appigo ToDo

シンクロしている先はウェブサービスですので、もともとパソコンとインターネット接続さえあればどこからでも使えるという利点があります。Remember the Milkには有料会員用のiPhone版のサイトさえありますが、これらはオフラインでは使えないという弱点があります。Appigo ToDoはこの穴を埋め、⁠ウェブサービスに接続するアプリ」を提供することで、インターネット接続がなくても電波の届かないところでもToDoを持ち出し可能にしたわけです。

このあたりの設計に「携帯以上、ノートパソコン未満」というiPhoneの位置づけが見事に結実しているのを見て取れます。

ネットで共有するToDoリスト:Zenbe List

同じくToDoリストになりますが、zenbe listはRemember the milkよりもさらに他人との共有を考えにいれて作られたToDoリストです。 利用の仕方はAppigo ToDoとほとんど変わりありませんが、Zenbeのアカウントを作成すると、作成したToDoをネット上で共有することが可能になります。

たとえばイベントの会場などで、同時にたくさんのチェックすべきタスクが進行中ではあるものの、誰がそれを完了させるのかは特に問題にならない場合があったとします。こうした場合、メンバー全員でZenbe Listを共有しておけば、全員が一つのToDoリストのもとで行動をすることが可能になります。

完了したタスクはすぐにZenbeのサーバーにシンクロされ、それぞれのメンバーのiPhoneへとシンクロされますので、互いに離れて行動しているチームでも、互いに声を掛け合うことなく残っているタスクがどれかわかるようになるのです。あなたがこうしたイベントのリーダーなら、リストが消化されてゆく様子を確認しつつ、適宜指示を与えることも可能でしょう。

ToDoリストはこれまで一人で作って、一人の仕事を効率化するために利用されていましたが、⁠ネットでリストを共有する」という考え方を導入し、常にネットにアクセスできるiPhoneという端末が登場したことで、新しい使い方が生まれたといえるのです。

zenbe list
zenbe list

まとめ

以上、GPSを使ったロケーションを意識したタスク管理、ウェブサービスと連携することで楽に使えるモバイルアプリ、ネットで共有するToDoアプリと、3種類のケースを見てきました。

もちろんこのなかにはiPhoneでなくても実現できるものが含まれていますし、紹介したアプリ以外にも有力な候補は存在します。しかしiPhoneの登場によって新しいモバイル仕事術の可能性が開けたということはいえそうです。

今年の終わりから、来年にかけて、GPSとネットを駆使したこうした新世代のアプリケーションが続々と登場してくるとみて間違いなさそうです。仕事に使えるアプリから、単に遊びのために使うアプリまで、さまざまなアプリで手の中で端末が進化してゆく。これが真のiPhone「革命」なのです。

この「革命」がiPhoneだけにとどまらず、他の携帯電話やモバイル端末も刺激して、新しい世代のモバイル活用術が開けることに期待したいですね。

では次回まで。Happy Lifehacking!

おすすめ記事

記事・ニュース一覧