エンジニアのジレンマ ~悩む立ち位置と仲間の境界~

第10回 お客様から信頼されるエンジニアとは?

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多くのエンジニアを見て

最近,ある雑誌で『⁠ゆとり世代」がこれからの世の中で生き抜いていけるのか?』という特集を目にしました。その特集記事の要旨は,これまでの団塊世代が年功序列で無難に働いてきたのに対して,これからの若者は「成果主義」と向き合う必要があるが,⁠ゆとり世代」はその危機感が分かっていないのではないか,といったものでした。

筆者は仕事柄,多くのエンジニアに対して面談を行います※1)⁠面談した結果,⁠このエンジニアをプロジェクトに採用しよう」と決めても,期待通りのパフォーマンスがでないことが多いのも事実です。一方,面談を受ける側からすると,プロジェクトに対する自分の適応性をPRするのはとても難しいでしょう。エンジニアのスキルや適正を見極めるのはとても難しく神経を使うものです。

しかし,最初に面談を行った時に,⁠このエンジニアは他と違う。一本筋が入っているな」と感じた時には,多くの場合,期待通りの成果をあげてくれます。つまり,仕事に対する取り組み方,モチベーションが成果に大きく影響していることは言うまでもないでしょう。

今回は,エンジニアの求められる資質について考えてみたいと思います。

※1
多くのシステムエンジニア会社は常に人事異動を行っています。システムエンジニアは,⁠ヒト」が財産である一方,⁠繁閑調整」がとても難しい職業です。

小人数プロジェクトの特性

筆者が数年前に経験したプロジェクトは,開発規模はそれほど大きくありませんでしたが,他にもプロジェクトが複数あり,スキルも人数も足りない状況から開始しました。小人数のプロジェクトにおいては,メンバ構成の良し悪しでプロジェクト成功の大半が決まると言っても過言ではありません※2)⁠

そのため,プロジェクトメンバが決定していないことは,とても大きな課題でした。

※2
プロジェクトメンバが10名を超える場合は,個々のスキルよりもプロジェクトマネージメント力が問われます。一方,小人数プロジェクトの場合,プロジェクトメンバの選定が成功の鍵を握ります。個々人のスキルがプロジェクト全体に与える影響が大きいためです。

エンジニアの採用

筆者は,自社内でメンバを探しましたが,どうしてもスキルの合う方が見つかりませんでした。そこで,これまで取引のある数社の協力会社に連絡をとり,必要なスキルを伝え,対応の可否を問い合わせしました※3)⁠

しばらくして,問い合わせを行なった一社より,今回のプロジェクトにマッチする人材がいると連絡が届きました。確かに開発スキルや業務経験は問題なさそうです。

システム設計や開発を,はじめて一緒に仕事するメンバに任せるのはとても心配なことです。できれば,簡単な仕事を少し経験してもらった上で適正を見極めたいものです。しかし,すでにプロジェクトは開始直前でもあり,筆者は,紹介を受けた方をプロジェクトに採用することとしました。

※3
ソフトウェア開発は,⁠専門的な技能・知識が必要」と規定された特定26業種です。人材の派遣にあたっては,派遣法で細かく定義されています。

受身な設計

プロジェクトが開始して程なくした頃,成果物を見て違和感を感じました。⁠お客様の運用を考えた設計になっていない」そう思いました。真偽を確かめるため,色々と質問を行いますが,少しずれた回答が返ってきます。

「これで良いと言われた」⁠それは知らない」⁠自分の範囲はここまで」完全に受身な姿勢でした。システム設計において,お客様はすべてのことに気付かないものです。システムエンジニアは過去の経験や他社事例を駆使して,お客様から「要件」を引き出し「気付いてあげる」スキルが求められますお客様と議論をぶつけてこそ,信頼されるエンジニアとして認められるのです。

気を利かせるとシステム仕様が増えると考えがちですが,受身な姿勢で設計したシステムの大半は,実際の利用者がテストする段階で問題が噴出し,⁠言った,言わない」⁠仕様追加」で揉めることが多いのです※4)⁠

この段階で,プロジェクトの建て直しを行ったことは言うまでもありませんが,対処した内容については割愛します。

※4
システム設計が完了した時点で,仕様書に承認をいただくことが通常です。しかし,多くのお客様は難しいシステム用語が並んだ仕様書は雰囲気でしか理解できていない場合が多いと思います。

エンジニアマインドを育てる

先日,小学生の娘の運動会に行きました。筆者の運動会に対するイメージは,⁠勝ち」⁠負け」にこだわらず,できる限り競争心をあおらないように,小学校によっては,順位も「優勝」⁠準優勝」といったり,⁠1位」⁠2位」といったりするというものでした。

しかし,先日の運動会では,先生が率先して自分のチームを応援し,勝ったら生徒と喜び,負けたら本気で悔しがる姿を見受けました。生徒に,結果も大事だということを教えているようで,とても頼もしく見えました。

「草食系」が増えたと言われる時代ですが,いつの時代もエンジニアは「職人」であるべきだと思います。

もし,自分が受身な性格だと自覚があるなら,意識的に「自分事」として考えられるトレーニングをお奨めします※5)⁠

※5
自分事のトレーニングとして,いくつか思いつきますが,最近の流行は仮説検証をすることだと思います。⁠恐らく,お客様はこんなことを考えているのではないか?」と仮説を立て,その確認を行い質問をしていくことです。仮説を立てるためには,ロジックが必要となり,自ずと考えるクセが身に付きます。筆者は,仮説検証を繰り返し,システム仕様をきめていきます。

著者プロフィール

森平也寸志(もりひらやすし)

システムエンジニア経験が18年。資格としては,PMP Project Management Professionalや情報処理技術者試験(システムアナリスト)などを保有。

これまで数十人のプロジェクトマネージャから少人数での中小向けシステムの導入等の経験がある。過去には自身が担当するプロジェクトで数億の赤字プロジェクトも経験済み。SEがシステムを構築する際には,常に失敗との背中合わせである事を痛感し,お客様との関係や自社の営業との関わり方を日々考えている。

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