エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第2回 プロジェクトがうまくいく,問題早期発見のコツ

2008年6月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

発言を促すファシリテーション

ここでファシリテーターの登場です。ファシリテーターの役割は『安全な場』をつくります。会議などでメンバーが発言しやすくするのです。具体的には次の3つを行います。

1.責めない

進捗会議などで問題を報告した人を守ります。わざと問題を作る人はいないでしょう。仕事をする上でミスはしかたありません。ミスを責めずミスを発生したプロセスに目を向けるように促します。

たとえ一人のエンジニアが不具合を連発したとしても,その人を責めずに,チェックの方法や仕事内容の見直し,負荷が高くないかなど,原因を考え前向きな対策を考える雰囲気をつくります。

2.不利益を与えない

問題を報告した人に,不利益を与えないようにします。たとえ報告した人自身の問題だったとしても,その問題のリカバリーで,その人の作業負荷が高くならないように,調整するのです。自分のミスは自分で償う,その気持ちは大切ですが,無理をさせないように気を配ります。

3.無視しない。

問題を報告したことをいったん受け止め,問題の内容でなく,報告したという事実をほめるのです。

こうした事を行い,メンバーを守っていきます。プロジェクトの開始当初よりコツコツと続けることにより,メンバーとの信頼関係が育っていきます。信頼は一朝一夕にはできません。この信頼関係がプロジェクトの山場で大きな力になるのです。

だれがファシリテーターをするのか?

さて,それでは"だれがファシリテーター役をするのか?"という疑問があるかもしれません。普通に考えるとプロジェクトのリーダーですが,あえてリーダー以外の人がファシリテーターになることを薦めます。

プロジェクトリーダーは通常,忙しいものです。問題報告についてじっくりとつきあう時間はないでしょう。ファシリテーションとは本来時間のかかるものです(ただし最終的には大きな時間の節約になりますが⁠⁠。時間の余裕がないプロジェクトリーダーにその役をまかせるのは酷というものでしょう。

また,プロジェクトリーダーは締めるべきところでは,締めなければなりません。厳しい決断をくださねばならない時もあるでしょう。たとえば成績の悪いメンバーを担当からはずしたりする事などです。

そこで,リーダーがプロジェクトを締める役を担い,ファシリテーターがメンバーの安全保障をする役割をするのです。私がこれまで経験したうまくいったプロジェクトは,⁠ファシリテーター』という役割をはっきりと決めたわけではありませんが,暗黙的にその役割をしていたい人がいました。

「何か失敗しても,サポートしてくれる」⁠リーダーや顧客から厳しい指摘をされても,守って共に考えてくれる⁠⁠ その人のおかげで,私たちは失敗をおそれず思い切り仕事に集中することができ結果的にプロジェクトもうまくいきました。

ファシリテーターはメンバーに信頼されていなければなりません(でなければメンバーは安心して何でも報告しません⁠⁠。さらに,リーダーにも信頼されている必要があります(でなければメンバーを守れません⁠⁠。

ファシリテーターはプロジェクトの黒子です。リーダーのように目立つことはない,しかしその存在で,メンバーの力を引き出し,問題を早期に発見させプロジェクトを成功に導くのです。

ファシリテーターは特別な存在ではありません。もしかするとあなたのプロジェクトの中にも,メンバーを守り安全に発言を促すファシリテーターがいるかもしれませんね。

次回からプロジェクト内でファシリテーションがうまくいくためのヒントを解説していきます。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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