エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第5回 ファシリテーション基本スキルの全体像

2008年9月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

導入フェーズ

話し合いが始まって当初は,なかなか意見がでてこなかったりするものです。また最初から意見をまとめてしまうと,こじんまりした結論になってしまいます。

よい話し合いとは,最初に,たくさんアイデアを出し(発散させ)⁠その後アイデアを絞り(収束)⁠最後に結論を出すことです。

話し合いを発散させるために,次の3つのスキルがあります。

  1. 話を聴くスキル
  2. 質問するスキル
  3. 柔らかく主張するスキル

1.話を聴くスキル

よい意見を出しても,だれも聞いてくれない,無視される,そんな環境ではだれもアイデアを出さないでしょう。意見がたくさんでるような活発な話し合いにするには,まず話を聴いてくれる人が必要です。

ファシリテーターは,傾聴というスキルを使い,参加者の話を受けとめ,安心して話ができるようにします。この部分のスキルはコーチングのスキルと共通した部分が多いところです。

傾聴の他にも,参加者をよく観察し,手は挙がらないけど話がしたそうな人に,話をするように促したりもします。

2.質問するスキル

アインシュタインは『困難な立場で,60分間だけ与えられた時に,脱出するための時間配分は,55分は自分への最適な質問を考えるのに費やし,残り5分で解を求める』といったそうです。つまり適切な質問を考えることができれば,適切な答えが返ってくるということです。

ファシリテーターは,話し合いが深まるように,適切な質問を繰り出します。具体的にはオープンクエスチョン(答えが決まっていない質問)⁠クローズドクエスチョン(YesまたはNoで答えられる質問)を使い,話を掘り下げて言ったり,話を絞り込んだりし論点を明確にしていきます。

3.柔らかく主張するスキル

ファシリテーターは,ひたすら聴いて問いかけるだけではありません。話し合いの方向付けをするために,こちらから呼び水を投げかけることも必要になってきます。とはいっても,ファシリテーターは指示や命令をすることはできません。そのために柔らかく自分を主張する表現のスキルが必要になってきます。

整理フェーズ

導入フェーズでアイデアがたくさん出てきたら,次にそれを整理しなければなりません。話し合いを整理していくフェーズでは,次の3つのスキルがあります。

  1. 議論を描くスキル
  2. 議論を理解するスキル
  3. 図を活用するスキル

1.議論を描くスキル

たくさんのアイデアを整理するには,まず議論の視える化が必要です。たくさんのアイデアを人は覚えておくことができないからです(人の短期記憶容量はかなり小さいそうです)⁠

ホワイトボードなどを使い,話し合いを描くスキルは,奥が深く効果が大きい,ファシリテーターの非常に重要なスキルです。

2.議論を理解するスキル

話し合いがうまくいかないのは,意見がうまく噛み合っていないからです。あなたも,話していることがテーマとずれていたり,そもそも言っていることの筋が通っていない発言を聞いたことがあるのではないでしょうか?

ファシリテーターは発言の中で筋道が明確でない場合は,参加者に気づかせたりします。また話し合いの全体像の中で,発言を位置づけテーマとずれていないかを明確にしていきます。

この部分はロジカルシンキングと呼ばれているスキルです。

3.図を活用するスキル

図は,話し合いを整理するのに大変役にたちます。図に表せれば,ものごとの関連性,位置関係がひと目でわかるからです。エンジニアであれば日常いろんな図を使っていることと思います(フローチャート,業務フロー図,ER図など)⁠また,意見を引き出すときも,図があると発想が大きく拡がります。いまはやりのマインドマップなどはその代表でしょう。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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