エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第6回 議論にはいる前の,ひと手間(準備フェーズ)

2008年10月15日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

会議とは,ある議題(テーマ)について話し合うものです。ですが議題にはいる前に,ちょっとした準備が必要です。今回は何を準備したらよいかについて解説しましょう。

いきなり中身に入る前に

私のこれまでの会議経験では,会議が始まると,いきなり議論にはいるケースが非常に多かったです。忙しくて一刻も早く中身の話し合いをしたくなる気持ちはわかるのですが,ここで少し時間を取って,ひと手間かけると,最終的な会議のアウトプットは非常に良くなります。

なぜひと手間が必要かというと,参加者のベクトルを合わせる必要があるからです。みんなが勝手な方向に走り出したら,まとまるものもまとまらないですよね。スムーズに走るためには,スタートラインにたったら,みんなで最初に意識を合わせる必要があります。

会議の目的

最初にすることは,会議の目的を確認することです。

ファシリテーションの研修をしていて研修受講者に普段の会議風景を聞く機会があるのですが,みなさん「目的がはっきりしていない会議が非常に多い」とよくいわれます。

それでは,目的の大切さが分かっていないのかと思いきや,目的は大切だと,みんな分かっているというのです。大切ということが分かっていながら,あいまいにした会議が非常に多い,考えてみたら,これは不思議ではないでしょうか?

例えばプログラムを作るとき,プログラムの目的(機能)はとても重要です。目的を決めずに作り始めることはないと思います。作りながら,なんとなく機能が定まってくる。そんなプログラミングは聞いたことがありません。

プログラミングの世界では不可能でも,会議では目的を決めなくても,できてしまうところに問題がありそうです。つまり,会議に参加し時間がたって,それなりに議論すれば,なんとなく何か結果を出したような気になるのです。しかし,これは有意義な会議には程遠い状態といえます。

また,目的は参加者がそれぞれ持っているというケースもよくあります。自分自身は目的がはっきりしているので,あえて全員で明確にする必要性を感じず,あいまいなまま進んでしまうのです。

会議とは,二人三脚のようなものです(五人の参加者がいれば,五人六脚ですね)。参加者それぞれ向かいたい方向が異なれば,スタートしても一歩も先に進めないでしょう。ゴールの方向は,最初に共有しなければ効率は非常に悪くなります。

会議の最初に参加者に向けて「この会議の目的は何でしょう?」と問いかけるのは,勇気が必要ですが,最終的には大きな違いを生み出します。

会議の目的=みんなの進む方向を確認する。

会議の目標

次にすることは,会議の目標を確認することです。

「会議の目的と目標の違いは何ですか?」という質問をよく受けます。目的が『ゴールの方向』ならば,目標は『ゴールの地点』といえます。

別のいい方をするならば,目的は『理想的なあるべき姿』,目標はそれを『測定できる形にしたもの』といえます。

例えば,要件定義フェーズの最初に行う会議を考えてみましょう,目的は顧客の要件を漏れなく聞き出すということになると思います。開発がはじまって,ポロポロ新要件がでてきてはたまりません。

この場合の会議の目標は,いろんな制約を考慮する必要があります。参加者の拘束時間が1時間しかとれなければ,その時間内に到達できそうな目標を設定します。例えば,今回の目標は,現在の業務の正常系の流れ(のみ)を聞き出すといった具合にです。

こうして目標を明確にしておくと,議題に集中することができます。例外的(イレギュラー)なケースは今回は対象外ということなので,まずは正常系の流れに集中して顧客から聞き取りを進めることが可能になります。顧客も例外ケースについては,別の機会が用意されているので安心してそれまで待つことができます。

目標をきめずに会議すると,顧客も今いっておかなければいう機会がないと思い,あせるあまり,いろいろなケースを話してしまい,その結果みんな混乱してしまうのです。

また,ゴールを決めておくと,会議が終わった後,会議の評価が行えます。正常系の流れをモレなく聞けたかどうかで会議の成果を測定し,次回の会議にむけての対策を練ることができるのです。

会議の最初に「今日は何について,どこまで話しますか?」と確認し,目標を決めましょう。目標はある程度想定したものを,参加者に向けて提案し,参加者の意見も聞きながら無理のないように決めましょう。

会議の目標=ゴールを明確にする事で議題に集中できる。さらに会議後に評価を行える。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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