エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第11回 ファシリテーター型リーダー

2009年3月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

連載も11回目を迎えました。ここまで読んでいただいてありがとうございます。前回まで主にファシリテーションの技術について解説してきました。今回はファシリテーションのスキルを使う新しいリーダーシップのスタイル,ファシリテーター型リーダーについて解説していきます。

新しい時代のリーダー

リーダーといえば,メンバーに指示を与え,みんなを引っ張っていくスタイルがあると思います。ここでは,こういったリーダーを「指示命令型リーダー」と呼びます。

「指示命令型リーダー」は,進むべき目標がはっきりしている場合は,効果的です。メンバーもこのリーダーについていけば成果を出す事ができます。

私もかつてこのようなリーダーの下で働いた事があります。リーダーが正しい道を進んでくれる限り,リーダーについていけばよいので,ある意味,楽でした。

一方,みんなを引っ張っていくスタイルではなく,みんなの力を引き出し,人と人との関係,つまり人間関係を円滑にしていくスタイルのリーダーもあります。こうしたスタイルを「ファシリテーター型リーダー」と呼びます。

一方的に指示を与えるのではなく,問題点や解決策もチームで話し合って行動計画をつくります。ファシリテーションの技術を使い,メンバーにアイデアを出してもらい,納得がいくように議論をし尽くしてもらいます。

こちらのリーダーの下でも働きましたが,自分のアイデアが活かされたり,チームとして一体感を感じられたり,大変なところもありましたが,充実した時間をすごせ,成長する事が実感として感じられました。

どちらが良い,悪いというものではなく,状況によって使い分ける事が大切です。新人が多いようなチームでは,「指示命令型」である程度ひっぱっていく事が有効な場合もあるでしょう。しかし現在のように問題の答えが明確にない,つまりどこへ向かっていけばよいか分からないような時代は,メンバーの自律を促すファシリテーター型リーダーが活躍します。

特に専門度が上がり,技術革新が早い私たちの業界では,現場のメンバーの方がリーダーよりも,技術に精通している事が当たり前の状況です。もはやリーダーが的確に指示命令を与えるのは難しいでしょう。こういう時こそ,現場の力を活かすファシリテーションスタイルが効果的です。

幕末のリーダー

変化の激しい今の時代は,幕末の動乱期に例えられるかもしれません。幕末には様々なリーダーが出てきましたが,そのリーダーシップのスタイルを考えてみるのも面白いかもしれません。

例えば西郷隆盛。彼はどちらかというと「指示命令型リーダー」のように思います。圧倒的なカリスマ性と明確な指導力でみんなを引っ張っていった。そして,みんなも喜んでついていった。

一方,「ファシリテーター型リーダー」は誰かと考えてみると,坂本竜馬が思い浮かびました。彼は仲が悪かった薩摩と長州の間を取り持ち,関係性を改善し,双方の力を引き出し倒幕へのエネルギーに変えました。また西郷隆盛と勝海舟の間に入り,江戸城明け渡しの橋渡しをした事もありました。

いろんな人(志士)を結びつけ,議論させ,力を引き出し,みんなを納得させ,最終的にそれが大きな成果に結びついた。坂本竜馬こそ,幕末の時代におけるファシリテーター型リーダーといえるでしょう。

ファシリテーターという言葉は新しいですが,以前から,こうしたファシリテーター型リーダーは存在していました。もしかすると,あなたの身近にもいるかもしれませんね。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

コメント

コメントの記入

ピックアップ

EC事業者が注目,.shopドメインとドメイン名をとりまく新たな流れ

インターネットの可能性を広げる新たな動きが,ドメイン名をめぐって起こりつつあります。

エンジニア特化型Q&Aサイト「teratail」のトップランカーたちが語る,確実な力を付けるための“質問力”

エンジニア特化型Q&Aサイト「teratail」のトップランカーの方々に集まっていただき,座談会を開催しました。

Webサイトに“安心”をプラス―知らないでは済まされないSSLサーバ証明書の仕組み

いまやユーザといえでも必須の知識となったWeb通信の暗号化と,その信頼性を確保するための「SSL証明書」のしくみについて紹介します。

リクルートライフスタイルの技術力を追え!

ビジネスを拡大し続けるリクルートライフスタイルの技術力を,編集部の徹底取材により紐解きます。

開発スピードに限界を感じたときの処方箋

「JIRA」をはじめとするアトラシアンのツール群。多くのオープンソースソフトウェアを継続して提供する支えとなっている使い易さを探ってみます。

デジタルコンテンツを日本から世界へ―MyCommerceで始める越境EC

自社開発ソフトウェアを海外も含めてオンラインで販売したいというニーズに即したサービス「MyCommerce」を用いて,誰もが手軽に越境ECを実現するためのノウハウを紹介します。

バックナンバー

No12(2009.04)

今回のSoulHackで主に取りあげるのは,梅田望夫の「ウェブ時代をゆく」という本です。

No11(2009.03)

今回のSoulHackで取りあげるのは,阿部謹也の「世間学への招待」と他1冊の本です。

No10(2009.02)

今回のSoulHackで取りあげるのは,山本七平の「空気の研究」という本です。

No9(2009.01)

今回のSoulHackで取りあげるのは,アーノルド・ミンデルの「紛争の心理学」という本です。

No8(2008.12)

今回のSoulHackで取りあげるのは,河合隼雄氏の「カウンセリングを語る」という本です。

No7(2008.11)

特集:2008年度日本OSS貢献者賞受賞者インタビュー

No6(2008.10)

特集:エンジニアの実践的キャリアアップ思考法

No5(2008.09)

特集:事例でわかる,プロジェクトを失敗させない業務分析のコツ

No4(2008.08)

特集:ゼロからはじめるPSP

No3(2008.07)

特集:今こそ使える! プロトタイピング

No2(2008.06)

特集:「開発スタイル」開発法

No1(2008.05)

特集:エンジニアが身につけたい基本スキル 2008

-->