グラフ仕事人六道数人~陥りやすいデータ分析の誤りと効率的なグラフの利用方法

第2回 棒グラフの甘い罠 その2:比率の意味

この記事を読むのに必要な時間:およそ 1.5 分
  • 「データの神様が泣いてますよ」

夕食を食べ終えた数人は,父の手からパソコンをひったくると構成比を計算してみせた。

表2 前回の表1を構成比率に変えたもの

クリック数1週2週3週4週合計
特集54.15%21.27%29.23%51.14%34.46%
イベント23.81%61.10%51.83%29.23%46.41%
ニュース8.17%2.49%4.03%6.09%4.55%
連続インタビュー4.90%1.56%2.53%4.04%2.85%
コラム4.20%1.36%2.02%3.65%2.44%
編集後記4.76%12.22%10.37%5.85%9.28%
合計100.00%100.00%100.00%100.00%100.00%
  • 「お父さんが実数で作った表を構成比に変更しました。察するところ,週による記事へのアクセス傾向の違いを確認したいのですよね」

数人の手際の良さに父である様也は言葉が出ない。理解できていないのだ。

  • 「第2週と第3週ではイベントページへのアクセスが最も多いですが,第1週と第4週では特集ページへのアクセスが多い。そういうことを確認したいのですね?」

画像

数人は,まだホワイトシチューをクチャラーしている父に冷たい視線を向ける。様也の脳裏に,こいつは自分の子ではないのだという黒い疑惑がむくむくと頭をもたげてくる。

  • 「じゃあ,ちょっとご自身でやってみていただけますか? 自分でできないといつまでたってもアシスタントのままですからね」

数人は辛辣な言葉を父に投げつけると,たった今作った表とグラフを消して,珈琲を淹れるため,席を立った。同じく食べ終えた鳳晏は,ご馳走さまも言わずに,スマホをいじりながら自分の部屋に戻っていった。母の美希は感極まって踊り出していた。

様也はクチャラーのまま,パソコンをいじる。

数人が淹れ立ての珈琲を手に席に戻ったころ,様也の表とグラフは完成していた。

  • 「あの,さっき数人が言った傾向とは違うみたいなんだけど」

少し得意そうに数人に話しかける。数人は,息子の失敗を見つけて喜ぶ父を横目に画面に顔を向ける。

表3 様也が計算した結果

クリック数1週2週3週4週合計
特集27.85%22.57%24.37%25.21%100.00%
イベント9.09%48.13%32.09%10.70%100.00%
ニュース31.82%20.00%25.45%22.73%100.00%
連続インタビュー30.43%20.00%25.51%24.06%100.00%
コラム30.51%20.34%23.73%25.42%100.00%
編集後記9.09%48.13%32.09%10.70%100.00%
合計17.72%36.56%28.73%16.99%100.00%

画像

  • 「いいかい? このグラフを見れば一目瞭然だけど,全体的に特集はそんなに多くないんだ。週ごとの変化に注目すると,第1週では特集がちょっと多いけど,それでもニュース,連続インタビュー,コラムに負けてる。第2週と第3週にイベントへのアクセスが多いのは数人が指摘した通りだけど,実は編集後記もかなり多かったんだ」⁠

    少し興奮気味に語る父親を,数人は冷笑を浮かべてながめる。まるで哀れな道化を見る貴族のような眼差しだ。

    数人が無言で珈琲をすすっている間,様也は説明を続けた。やがて,様也の説明が終わると,数人は口元に手を当て,くすくすと笑い出した。

    • 「え? なにか違ってたかい? おかしいな。ちゃんと表もグラフもできてるはずなんだけど」

    様也は不安にかられて画面を見直す。

    • 「おろかあるいは哀れと表現すべきなんでしょうか」

    数人は氷のナイフのごとき言葉で父親を切り刻む。

    • 「だ,だって……」

    様也がさらになにか言おうとしたとき,

    • 「ナーンセンス!」

    数人は叫んだ。

    • 「僕の作った構成比の表と,あなたの作った構成比の表は計算方法が全然違います」

    数人はそういうと,目にもとまらぬ速さでさきほど自分が作った表とグラフをもう一度作り直して見せた。

    • 「さあ,お父さん,なにが問題なのかわかりますか?」

    そして父にそれを突き出す。

    読者への挑戦

    様也と数人の表とグラフのなにが違っていて,どこが問題なのでしょうか?

    目的である「週による記事ジャンルのアクセス傾向の違い」を見るために適している構成比とグラフはどれでしょうか?

    考えてみましょう。

    (つづく)

著者プロフィール

原隆志(はらたかし)

シンクタンクで7年間市場および新製品開発などの調査研究に従事した後に独立し,大手IT企業のコンピュータ・ネットワーク市場調査,新製品開発調査およびコンサルティングを行う。その後,インターネットプロバイダなどのネット関連企業の役員を歴任。『インディペンデントリサーチャー養成講座』など多数の調査分析セミナーの講師を務めた。2015年9月刊『直感でわかるデータ分析』(技術評論社)

コメント

コメントの記入