グラフ仕事人六道数人~陥りやすいデータ分析の誤りと効率的なグラフの利用方法

第5回 因果関係はプロクルステスの寝台 その2:因果関係のポイント見つける

この記事を読むのに必要な時間:およそ 1 分

数人の言う⁠ちゃらい説明⁠というのは,一般的なビジネス書に見られる説明のことだ。基礎をおざなりにしているので,わかったような気になってもその実,何もわかっていない。

  • 「因果関係があると判断するポイントを説明しましょう。まず統計的に有意な相関関係があることが前提です。厳密に申し上げれば,時間性,密接性,特異性,普遍性,合理性あるいはさらに他の要因も加味して判断します。あくまで⁠ちゃらい⁠説明なので重要なことだけ申し上げると,時間性=どちらが先に起きたか,と,合理性=因果に合理的な説明がつけられるかが目安にと覚えておいてください」

画像

数人の説明を聞いた様也は,血の涙を流しながらメモを取り始めた。様也は感情が昂ぶると,血の涙を流すという特異体質なのだ。妻の美希が「またそそうしやがって」と吐き出すようにつぶやき,様也に「血の涙ふきん」と家庭内で呼んでいる専用のぞうきんを投げつけた。様也はそれを受け取って,テーブルに垂れた血をぬぐう。⁠ダッセエ」と娘の鳳晏が席を立って自分の部屋に入る。家庭崩壊のそこはかとない香りが様也の鼻腔をくすぐる。

  • 「次に,因果関係や相関関係の解釈で勘違いしやすいケースをご紹介します。偶然に相関関係が成立し,そこから因果関係があると勘違いしてしまう場合があります。相関の推定は統計的手法を用いますが,要するに統計的手法というのは確率の問題なので何回も同じ実験あるいは観測を行えば相関関係が偶然見つかることもあります。統計とはそういうものです。同様に本来相関関係があるのに統計を取ったら有意な結果が出なかった場合もありえます。
  • 続いて,対象としている2つの要因に影響を与える未知の要因があるため,相関関係が見られるケース。時系列が逆のケースなどもあります。それから複数の要因が影響しあって本来ある相関関係が打ち消されてしまう場合もあります。売上に対してプラスの影響を与えるものとマイナスの影響を与えるものがあり,それらが同時に発生すれば打ち消し合って売上に変化は見られなくなくなってしまいます。最悪なのは,調査対象や観測対象に偏りがある場合です」

立て板に水とは,こういうことを言うのだろう。数人の魅惑的な唇から,天使の奏でるハープのような声がとめどなく流れ出る。

画像

  • 「なるほど,わかりやすい! 父さんもこれならわかるよ」

様也は息子への疑問も忘れて,メモに熱中している。

  • 「理解できているか疑問です。そこで確認のため,あなたに質問します」
  • 「え?」

美貌の息子の頬に歪んだ笑みが浮かぶ。様也は昔いじめられっ子だったことを思い出して鳥肌がたった。鳥肌と言えば,妻の美希と初めて抱き合ったとき,⁠寒いのかい? 鳥肌たってるよ」と言って殴られたことがある。妻は鮫肌だ。

  • 「次のそれぞれのケースが正しいかどうか考えてみてください。間違っているとすればどのパターンの誤りを犯しているかを答えてください。いずれの場合もすべての情報,条件を厳密に提示しているわけではありませんので,誤謬である可能性が高そうな場合に間違っていると答えていただければ結構です」

ケース1:キャンディのパラドックス

ある広告代理店がキャンディの消費量について調査したところ,既婚者と未婚者の間で有意な差がありました。未婚者のほうが既婚者よりもキャンディの消費量が多かったのです。そこで広告代理店は,結婚するとキャンディの消費量が減ると考えました。本当にそうでしょうか?

ケース2:ニュースサイトのパラドックス

あるサイトで経済記事を掲載するとアクセスは増えないのに有料セミナーの売上が向上することがわかりました。しかし,直接の相関関係がないので偶然と判断することにしました。他の要因もいろいろ調べましたが,とくに見つかりませんでした。本当にそうでしょうか?

ケース3:ゲーム大会参加者のパラドックス

あるゲームメーカの大会で参加資格はそのメーカの2つのゲームの経験値の合計が10,000を超えていることでした。メーカが大会参加者の経験値について調査を行った結果,2つのゲームの経験値の間に相関関係が認められました。本当にそうでしょうか?

読者への挑戦

この3つのケースについてあなたの答えは? 下記URLにアクセスして回答してみましょう!

著者プロフィール

原隆志(はらたかし)

シンクタンクで7年間市場および新製品開発などの調査研究に従事した後に独立し,大手IT企業のコンピュータ・ネットワーク市場調査,新製品開発調査およびコンサルティングを行う。その後,インターネットプロバイダなどのネット関連企業の役員を歴任。『インディペンデントリサーチャー養成講座』など多数の調査分析セミナーの講師を務めた。2015年9月刊『直感でわかるデータ分析』(技術評論社)

コメント

コメントの記入