グラフ仕事人六道数人~陥りやすいデータ分析の誤りと効率的なグラフの利用方法

第11回 思うような結果を手に入れる悪魔のテクニック その2:結果を誘導するテクニックを会員情報の設問に使ってはならない。取り返しのつかない偏りができる。

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本稿では直感でわかるデータ分析⁠2015年9月30日,技術評論社刊)の一部内容を参考にし,データなどを転載しています。

  • 「⁠威光暗示効果』⁠

様也はハンバーグを食べながらメモを始めた。

  • 「⁠威光暗示効果』というのは,記入しようとしている人に,⁠こっちのほうがいい⁠ということを暗ににおわせて記入内容を偏らせる効果です。たとえば,⁠一般的に⁠⁠最新の⁠⁠○○することがよくありますか?⁠⁠○○で済ませてしまうことがありますか?⁠といった文言は『威光暗示効果』につながりやすい」

銀河を流れる星のような流暢な説明に様也はほれぼれと聞き入ってしまう。

  • 「困ったなあ。どうしよう。もう会員登録データはどんどん溜まっていっているからなあ。これから修正するわけにはいかない」

その言葉を耳にした数人は,整った顔を軽く歪ませて嘆息する。

  • 「いいですか? お父さん,一回こっきりのアンケートならともなく,継続的に蓄積する会員情報で偏りのあるデータを集めてどうしようというのですか? 一度,バイアスがかかったデータを元に戻すことはできないんですよ。そんなビッグデータは使いものになりません」

数人が諭すように言うと,様也は突然立ち上がった。

  • 「こんなビッグデータは嫌だ! 偏った登録内容ばかりで実態を把握できないデータ」

そう言って描きかけの一コママンガを見せる。どうやら遠い昔流行ったお笑い芸人の真似をしようとしているらしい。

  • 「それはおどけているつもりですか? 回答を偏らせないためには『威光暗示効果』をなくすだけでは不十分です。4つの注意事項の残りの3つを説明しましょう」
特定の商品やサービスに対する質問の前に,それに関する情報を与える

たとえば,ある商品やサービスの認知度を訊く前に,それについて質問していたら当然認知度は上がります。意外と思われるかもしれませんが,こうしたうっかりミスはたくさん起きています。たとえば,⁠どこでこのサイトを知りましたか?⁠という質問の選択肢でさまざまなサイトの名前を出した後に,それらのサイトの認知度を尋ねてはいけません。

該当する選択肢がない

これもよく起こる失敗です。適切な選択肢がないため,無回答にならざるを得なくなります。人によっては適当に本来と異なる選択肢を選んでしまいます。

複数の解釈が可能な文章を使わない

どちらとも取れるような曖昧な文章だと回答する人間によって解釈が変わってしまい,結果として使えないデータになってしまいます。

そこまで説明した数人は,言葉を切るとじっと父である様也を見た。必死にメモを取っている。

  • 「お父さん,メモは終わりましたか? では,正しく理解できているかどうかお尋ねします」

読者への挑戦

数人が様也に出した問題にみなさんもチャレンジしてみましょう!下記URLから回答できます。

「グラフ仕事人六道数人 第四話」読者アンケート
https://jp.surveymonkey.com/r/kazuto04

※以下設問は先のURLにて回答できます。

下記の文章に回答を偏らせる表現が含まれていますか?含まれている場合には該当するものを選んでください。

ケース1:

ビジネス上つきあいのある相手に感謝の意を伝える方法について該当するものをいくつでも選んでください。
  1. 対面で直接伝える
  2. 手紙を送る
  3. 電話で直接伝える
  4. メールですませてしまう
  5. SNS(ツイッター,LINE,フェイスブックなど)ですませてしまう
  6. その他
上記の課題文章について,あなたの考えにもっとも近いものをひとつ選んでください。
  1. 特に問題ない
  2. 該当する選択肢がない回答者がいると考えられる。そのため,無回答になったりは適切でない選択肢を選んでしまったりする
  3. 複数の解釈が可能な表現があるため,人によって解釈が分かれてしまう
  4. 『威光暗示効果』のある表現を用いている
  5. その他の問題がある
    具体的にご記入ください

ケース2:

現在ご使用中のパソコンやタブレットなど(スマホも含む)のインターネット接続機器はどこで購入しましたか? 該当するものをひとつ選んでください。
  1. ネット通販
  2. 家電量販店
  3. パソコン専門店
  4. 会社などからの支給品
  5. その他
    具体的にご記入ください
上記の課題文章について,あなたの考えにもっとも近いものをひとつ選んでください。
  1. 特に問題ない
  2. 該当する選択肢がない回答者がいると考えられる。そのため,無回答になったりは適切でない選択肢を選んでしまったりする
  3. 複数の解釈が可能な表現があるため,人によって解釈が分かれてしまう
  4. 『威光暗示効果』のある表現を用いている
  5. その他の問題がある
    具体的にご記入ください

ケース3:

ツイッターでつぶやく頻度について,もっとも近いと思う選択肢をひとつ選んでください。
  1. 1日30回以上
  2. 1日1回以上
  3. 週に数回以上
  4. 月に数回以上
  5. ほとんどつぶやかない
  6. 日によって異なる
上記の課題文章について,あなたの考えにもっとも近いものをひとつ選んでください。
  1. 特に問題ない
  2. 該当する選択肢がない回答者がいると考えられる。そのため,無回答になったりは適切でない選択肢を選んでしまったりする
  3. 複数の解釈が可能な表現があるため,人によって解釈が分かれてしまう
  4. 『威光暗示効果』のある表現を用いている
  5. その他の問題がある
    具体的にご記入ください

著者プロフィール

原隆志(はらたかし)

シンクタンクで7年間市場および新製品開発などの調査研究に従事した後に独立し,大手IT企業のコンピュータ・ネットワーク市場調査,新製品開発調査およびコンサルティングを行う。その後,インターネットプロバイダなどのネット関連企業の役員を歴任。『インディペンデントリサーチャー養成講座』など多数の調査分析セミナーの講師を務めた。2015年9月刊『直感でわかるデータ分析』(技術評論社)

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