モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第2回 議論を“絵”にする,その効果!

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこ,です。第1回で「その場で議論をにしています」と自己紹介しましたが,今回はもう少し具体的に私が日頃,どんなを描いていて,にすることによって,何が見えてくるのか,どんな効果が得られるのかということについてご紹介します。

「カスタマー」を描く 「ユーザー」を描く

「“絵にしてほしい」と企業から依頼を受ける中の1つに,「“カスタマーを描いてほしい」という声があります。

もう少し具体的に言うと,例えば,新商品を検討する企画会議や社員全員でこれからの事業ビジョンを描くといった研修の場で,

  • 「我々がサービスを提供しているのはどんなカスタマーなのか,具体的に絵にしたい」
  • 「どんな顧客がターゲットになりうるのか,絵を使ってメンバー全員できちんと共有したい」

といった声です。「カスタマー」「ユーザー」「生活者」「消費者」「お客様」…呼び方はいろいろですが,その背景には,事業のトップやプロジェクトを引っ張るリーダーにはメンバーをまとめるうえで共通の悩みがあるようです。

  • 「みんながそれぞれ勝手な顧客を想像して話をしている」
  • 「そもそもお客様の顔が見えていない」
  • 「共通認識を持たないままではいつまでたっても議論がズレる」
  • 「何度ターゲットについて話しあっても職場に戻ると忘れてしまう」
  • etc.

そこで,事業やプロジェクトを遂行するために,メンバーと共通認識を持つ1つのツールとして「“絵を使いたい」という声です。

あなたが想像している「カスタマー」ってどんな人?

ある会社の研修で「カスタマー」を描くことになりました。集まったのは,年次も職種もバラバラの40人ものメンバー。そこで実際,私は何をどう描いたか。ここで少しご紹介したいと思います。

参加者は入社したての新人から,社歴の浅い転職者,20年以上のベテラン社員まで本当にいろいろ。職種も,営業や企画,制作,開発と,とにかくバラエティーに富んだメンバー構成でした。

その研修では,ある高額商品を購入する「カスタマー」について話し合っていました。

  • Aさん:「購入するのは子どもを持たない共働き夫婦(DINKS)が多いんじゃない?」
  • Bさん:「お金を自由に使える独身男性はどう?」
  • Cさん:「でも一番多いのはやっぱりファミリー層でしょう」

私はまずはひたすら,その場の会話や議論から聞こえくるものを,次のような絵にしていきます。

左から「子どもを持たない共働き夫婦(DINKS)」「独身男性」「ファミリー層」と聞いて絵になったものです。

左から「子どもを持たない共働き夫婦(DINKS)」「独身男性」「ファミリー層」と聞いて絵になったものです。

ここで「え?こんななの?」とガッカリした方がいるかもしれません。イラストの仕事をしている人が見たら「へ?この程度?」と拍子抜けするかもしれません。でも…私の絵はこの程度のなのです。

これはまったくの言い訳ですが(!),どんどん議論は進んで行ってしまうので,前回も書いた通り,私にとってにする作業は脊髄反射”。このときも確か「DINKS」と聞いて頭に思い浮んだ夫婦像を描いただけ。正直,上手に描くのは二の次,三の次。

前回いただいた感想メールの中には「ゆにさんの仕事はマインドマップみたいなものですか」とか「議論を絵によるロジックツリーまたはピラミッドストラクチャーにプロットしていくことと理解しましたがあっていますか?」といった質問がありましたが,(マインドマップのことをよく知らないので,はっきりした違いは言えませんが)私の描き方には,特にルールもないんです。というと,これまた期待ハズレでしょうか。

ただ,とにかくこの「DINKS」の絵を描いたときは,恐らく私の頭の中ではその瞬間に「子どもが居ないので結構気楽なカップル?」「じぶんたちの趣味を思う存分楽んでそう」「犬を飼ったり週末はゴルフに行ったり?」といった具合に思いつくまま描いただけ,だったと思います。

「キザな男!」

でも,こんな程度のでも,絵にすることで気付きや発見,議論の広がりを起こすことはできるんです。

「この男性,ちょっとキザすぎな~い?!」

参加者の1人が私の独身男性の絵を見ながら指差して笑いました。

画像

これはうれしいツッコミでした!その理由はまた後ほど説明しますが,その場が目指すゴールとはまったく関係ないようなことでも,を媒介に会話が盛り上がっていく様子は,グラフィックファシリテーションの醍醐味でもあります。

もう1人がこんなことを言いました。

「こういう一人暮らしの男性の部屋って,結構プラズマテレビとか高性能のオーディオとか置いてそうだよねー」

「うんうん」「居そう居そう!」と頷くみなさん。さっきまで「転職してきたばかりでよくわからない」と自信無さそうに発言していた人も楽しそう。

「例えば○○くんとか?」

これは内勤社員の発言。身近な人の名前まで出てきたら,もう,キザだナンダと言われ放題だった「独身男性」のカレ(?)も,絵になった甲斐があったというもの!今までただの「独身男性」という単語だったカスタマーの顔が,具体的に参加者に見えてきたと言えるのではないでしょうか。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

バックナンバー

モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

バックナンバー一覧

コメント

  • なるほどねー

    グラフィック・ファシリテーターの解説第2回、とても興味深く読ませていただきました。

    たしかに会議、議論の中で流れていってしまうことは多いと感じます。特にひとつの発言に複数の要素、ポイントが含まれていたりする時に、そのうちのひとつにフォーカスが集中してしまったり、それはポイント(本質)じゃないんだけどなぁ・・・という方向に議論が流れてしまうこともある。

    そういう議論の流れを流れに任せてそのまま流すのではなく、それを定着させる方法として視覚化という方法が有効なのかもしれません。

    それともうひとつ感じたのは、普通、部外者の入らない会議の中にいる第三者としての立場の独自性もあるのかもしれません。(部外者なんて失礼な言い方かもしれません。ごめんなさい)

    でも部外者でありながら、そのような会議にたくさん参加しているプロとしてのゆにさんの感性が独自の存在感というか、役割になっているのかもしれませんね。

    議論を絵にする、という行為には、右脳を刺激するような何かが、確かにあるような気がします。

    Commented : #2  くろめがね (2007/07/15, 18:13)

  • ブログと似てる!?

    いつも楽しく読ませていただいてます。

    「不完全・不正解な絵」っていいですね。
    言い訳のように見えて、実はファシリテーションの本質的なところな感じがしますね。触媒であることみたいな。

    ゆにこさんのこの話を聞いて、最近のブログに対するスタンスとの共通項を感じましたよ。最近読んだ本にもあったんですが、ブログって推敲に推敲を重ねて、アップするというよりは、意見が50%しか固まっていなくてもアップすると、いろんな人からのコメントを通じて、磨かれますよね。

    なんかそんな感じと同じ印象をうけましたよ。

    Commented : #1  HORRY (2007/07/05, 14:28)

コメントの記入