モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第5回 優秀なリーダーの話は絵にしやすい!

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「いいなあ,その思い!」

次の絵は,ある結婚式の様子を描いたものです。

事業を率いるトップの方の発言「結婚式という場を,家族の絆をもう1度見直す場にしたい」という言葉を聞いて思わず描いた一枚です。この絵の中で注目してほしいのはリボン結びをしているところ(あまり画像を大きくできないんですが見えますでしょうか⁠⁠。

「⁠⁠絆をもう一度見直す⁠⁠」という言葉を聞いて「絆という赤い紐を結び直す」絵が思い浮んで一気に描きました。しばらく疎遠になっていた親戚や友人と結婚式という場で再会し,新郎新婦が感謝しながら,ちょっと緩くなっていた絆という赤い紐を結び直しているという絵です。

ただ,このとき筆がグイグイ進んだのは,描きやすい絵が思い浮んだからではありません。正確には「いいなあ,その思い!」と思って「何か描き留めておかなくちゃ!」と発言者の思いに筆が共感したのが先でした。そこでなんとか絵にした,という順番です。

トップの人ほど<思い>が強いと感じたことはありませんか?⁠本気度⁠が違う。本気でその目標を実現しようと思っている。まさにこの絵を描いたとき,私の筆が感じたのもその熱い本気の<思い>だったと思います。

そして,熱い<思い>を語る人の発言が,こうも描きやすいのは,なぜか。

それはこのトップの方の頭の中に,すでにこの幸せな結婚式の[シーン]がしっかり思い描けていたからだと思います。それを頭の中に思い描きながら事業への<思い>を語っているので,聴いている私の頭の中にも自然と(私なりの映像ですが)結婚式シーンがイメージできたんだと思います。だから私の筆は勝手に走り出した。

ちなみに,優秀なリーダーだからといってだれもが表現上手というわけではありません。熱い<思い>がうまく表現できない方もいます。<例え話>が上手くない方もいます。しかし,私の経験上,その人の頭の中に理想的な[シーン]が描けていればいるほど,語られる<思い>は強くゆるぎないものになり,結果として私の筆もグイグイ勝手に走り出します。

「いいなあ,その世界!」

[ゴールシーン]がすでに頭の中に描けているということ。それが優秀なリーダーの共通点なのではないかと思うんです。

「いいなあ,その例え!」⁠いいなあ,その発想!」⁠いいなあ,その思い!」すべてはその理想的な[ゴールシーン]を想定して発言されているから,聴いている私は描きやすい。

さいごにもう1つの絵を紹介します。これは「夫婦共働きでも安心して子育てできる社会」についての議論を絵にしました。

このときは議論がとても盛り上がりその熱気に筆が追いつくのもやっとでした。⁠子育てを終えたお母さんたちに,子供を預かってもらえたら安心だよね」⁠地元の職人さんと気軽にふれあえたらいいよね」⁠そんな支援があったらいいね」⁠そんなサービスがあったら今すぐ利用したい!」などなど。紙面も足りなくなってしまうほど。

一気に描き終わってみると,そこにはみんなが「いいなあ!」と思い描いた<世界>が一枚に込められていました。その後,議論をされていた方たちはこの絵をデジカメに撮って自分達の事業が目指すべき社会[シーン]として掲げてくださいました。⁠いいなあ,その世界!」が描けると,その絵には目標数字などで語られる[ゴール]とはまったく違った,組織全体を導く力があることを,私自身が教えられた経験でもありました。

「いいなあ」が見えると,変わる

さて,筆が喜ぶ「いいなあ」を前回から振り返ってみると

  • 「いいなあ,その疑問!」
  • 「いいなあ,その違和感!」
  • 「いいなあ,その例え!」
  • 「いいなあ,その思い!」

(ほかにもまだまだありますが)どれもが最終的に

「いいなあ,その世界!」

に向って転がっていく様子が見えてきました。

そして,実際,具体的に「いいなあ,その世界!」が描けると,メンバーの意識や行動まで変わってくる。そんな変化を見るにつけ,人はいくら理論を並べて目標を置いたとしても,結局は「いいなあ」と感じる世界に心も体も喜んで動いていってしまうのではないかと思っています。そしてそんな多くの人の共感を呼ぶ<世界>を具体的に思い描いて,みんなに語れるのが,優秀なリーダーたちと言えるのではないでしょうか。

優秀なトップの人ほど,突然思わぬ角度から議論に切り込んでくる。そんな場面に立ちあった経験はありませんか?近くにいる優秀な上司や先輩がどんな[ゴールシーン]を描いているかちょっと頭の中をのぞいてみてください。すると例えば「上司があのときなぜ提出した資料にあんな指摘をしてきたのか」とか「なぜこういうツッコミをしてくるのか」そのヒントが見えてくるかもしれません。


さて次回は,ちょっと趣向を変えて「クライアント座談会」をお届けしようと思っています。実際に私のグラフィックファシリテーションを活用してくださる企業の担当者の方たちに「実際のところ効果のほどはいかに」ということを正直に語っていただく予定です。ぜひ楽しみにしていてください。

ということで今日のところはここまで。グラフィックファシリテーターのゆにでした(^-^)/

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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