モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第7回 グラフィックを「もう一度,読み解く」 その効能

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

こんにちは。グラフィックファシリテーターの,やまざきゆにこです。 前回「クライアント座談会」のグラフィックをすべて(7連作)ウェブ上にアップしましたが,どんな感想を持たれたでしょうか? 絵から内容がすべて読み取れるわけではないので,もどかしく感じた方もいるかもしれません。早速,グラフィックを振り返りながら座談会の様子をご紹介します。今回は,その中でも特に白熱した議論を絵にした一枚を中心にお話しようと思います。

「もう一度見直した」とき,見えてくること

座談会の前半は,ご参加頂いた皆さんの自己紹介とあわせて,それぞれ「グラフィックファシリテーション」と出会ったきっかけや各社の活用方法などについて語って頂きました。そうしているうちに,座談会の話題は「組織」「個人」のコミュニケーションのあり方について移っていきました。皆さんそれぞれ組織を大きく動かす立場にいらっしゃるだけに,予想以上に盛り上がった意見交換。そのときの1枚がこちらの絵です。

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描かれた後のグラフィックの活用方法の1つは,絵をもう一度見直しながら語ることで議論を再現できること。しかし本当のグラフィックの威力はさらにその先にあります。

描かれた絵をもう一度よく見てみると必ず議論の最中には気付かなかった視点に気付かされたり,大きな流れが見えてくる(例えばみんなが言わんとしていた全体像が見えてくる)という体験ができます。今回のグラフィックを見てもそれはやっぱりありました。その内容は私にとっても今後の方向性を考えさせてくれる有意義なものとなりました。

さて,実際にどんな意見が交わされ,絵の中にどんな発見があったのか。グラフィックが教えてくれること,ご紹介します。

「耳がダンボ」

まず最初に左上のゾウの絵。これは「みんなの話を聞きながら同時に筆を動かしているときの,ゆにの頭の中はどうなってるの?」という質問に対する私の答え

「耳がダンボなんです」

をそのまま絵にしました。耳の大きなゾウ=ダンボのつもりで描きました。頭の上には私が乗ってます。

「筆を持つ手にはまった集中していなくて…,後ろから見たら,私はきっと耳がダンボになってる状態なんですよ」

と確か答えました。その後みなさんが何度も「耳がダンボのゆにちゃんは…」「耳がダンボになっているやまざきさんは…」とおっしゃっていたので,本当は普通に人間の私の絵を描くつもりだったのですが,思わずダンボにしてしまいました。

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「目指すのはモーツアルトかバイエルか」

話題は,コミュニケーション手段にグラフィックを活用したがっているのは組織だけではない,個人もその力を身につけたいという欲求が強くなっているという内容になっていました。いくつかそのときに出た意見を紹介します。

  • 「メールなどのコミュニケーション手段は増えているけど表面的なモノが多い。本当に伝わっているかどかでいうと薄まっているのでは?」
  • 「じぶんの中の○○らしさは薄まってない。ただ,感じあったり・共感したりする機会が減ってきているのでは」
  • 「『共有したい』というニーズは高まっていると感じる」
  • 「文字だけの企画書では上司にうまく説明できない。理解してもらいにくい。イラスト集だけでは限界。じぶんが考えていることを絵にするニーズは大きそう」
  • 「『描いてほしい』ニーズが広まることよりも,個人『描くスキルを上げたい』と思っている方が大きそう」
  • 「“描き方はみんな知りたがっている」etc.

そんな時代の流れの中で,今後,私が目指す方向性について「だれにもマネできないモーツアルトの領域を目指すのか,だれもがピアノを弾けるようになる一歩を踏み出せる練習曲をつくったバイエルになるのか」という,とても上手な例えをいただいて,そのまま絵にしたのが紙面右上の作曲にいそしむ天才モーツアルトと,紙面中央左側にいる教本「赤バイエル」を前にピアノの練習に励む女の子です。

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この「バイエル」という例えが素敵だなあ~と思って描き留めておきたくなりました。実は以前から,私のグラフィックファシリテーションを「個人も使えるように汎用性を持たせては?」というようなことを,いろんな方から言われていました。でもどうも私の中でピンときませんでした。「ルールはないの?」「フレームワークに落とせないの?」「パッケージ化できないの?」と言われても…。世の中には自分たちですぐにでも実践できる会議の上手な進め方やツールはいくつも開発され本になってます。「今さら私がやらなくてもねえ…」とあまり深く考えていませんでした。

しかし,「赤バイエル」を見て練習している女の子の絵を見て,今までの私の思い込みが一気に吹き飛んだ気がしました。個人的には私は「赤バイエル」で挫折しましたが,ピアノの世界,音楽の世界への入口として,上達していくことが楽しくなりそうな「赤バイエル」のイメージはとてもいいなあと思えたんです。「フレームにしてみたら?」「パッケージ化してみたら?」というアドバイスにはまったくピンとこなかったけど,これならなんだかワクワクしてきました。勝手な理想形ですが具体的なビジュアルとして,1つ自分の中に描けました。

それにしても…,改めてダンボに目を向けてみると,目の前の議論を絵にすることが楽しくてしょうがない様子。でも,それは能天気に目の前の出来事を楽しんでいるだけのようにも見え,モーツアルトの方向へ飛んでいくのか,それともバイエルの方向へ飛んでいくのか,特に決めることもなく,ただフワフワと宙に浮いているだけにも見えてきました。まさに今の私の状態です!この絵は別の意味で,私に「世の中が求めている声をきちんと聞いているの?」「もっと研究・開発するべきことはあるんじゃないの?」と問いかけてくる絵にもなりました。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • 大切なものは感じる力=センス

    第三者としての立場から言わせてもらうとゆにさんにはバイエルを目指してもらいたいと思います。グラフィック・ファシリテーションという手法にはなにか独自のものがあると思うからです。

    それはブレインストーミングという方法が持つ新しいものを生み出す力と同じような種類のもの。

    でもきっと多分、グラフィック・ファシリテーションという方法は実際に体験してみないとわからない。このブログはとても上手くこの方法論の姿を伝えていると思いますが、それは実際にその現場を見ているから言えることだと思われてなりません。見てない人にはそのグラフィック・ファシリテーションの持つパワーは本当にはわからないのではないかと。

    言葉の限界とも言えますが、たとえば絵画を言葉で説明して説明しきれるものかと言えばそれは絶対無理でしょう。

    そして実際に体験してみなければわからないグラフィック・ファシリテーションという方法を、そのある効果を持つ手法を広めるためには、ゆにさんの後継者をつくる、できれば量産するような伝道師になっていただきたいと思うのです。

    そういう意味でゆにさんにはバイエルを目指していただきたいと思うのですが、一方で、やっぱりゆにさんはモーツァルトなんだろうなとも思うのですよ。

    ゆにさんのグラフィック・ファシリテーションが独特なのはその手法が独特なのもさることながら、結局はゆにさんという人間の個性、独自性に基づいているのだと私には思えるのです。手法とか技術とかの問題ではなく、ゆにさんの持つ議論の流れをつかむ感性がきもなのだと思うのです。

    マーケティングのセンスというか。人間に対する興味の深さというか。ゆにさんの頭の中の構造が、グラフィック・ファシリテーションのユニークさを形成しているのだと思います。

    だからゆにさん、是非ぜひバイエルを目指してくださいまし。そっちを目指していてもきっとゆにさんは勝手にモーツァルトなんだから。

    Commented : #1  くろめがね (2008/01/13, 00:42)

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