モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第12回 ビジョンを絵にして共有したい!~自分でも絵を描いてみたいけど絵心がないと思っている人へ(2)~

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「ビジョン」が一枚の絵である必要はありますか?

Q3:研修で組織の今後の『ビジョン』をみんなで議論して決めました。それを最後にみんなの共通認識として1つの絵にしたいと思っているのですが,ぴったりの絵が見つかりません

A3-①:「1つの絵」にして共有したいことは何ですか?

「10年後,組織はどうありたいか」⁠5年後の事業目標を達成するために自分達はどんな行動を取りたいか」そういった議論の「最終的なアウトプットを絵にしてほしい」ということから議論に立ち会うことがほとんどです。

ただ実際には,最初はバラバラだったみんなの意識や気持ちが1つになったり,会議室全体の雰囲気がグイッと1つの方向に動き出すのは,必ずしも理想的な「未来図」が描けたときとは限らないんです。

例えば,今のモヤモヤとした状態を雲の上から俯瞰できた絵だったり,⁠俺達はこんなことしている場合じゃないんだ!」といった心の叫びを描いた絵を見て,途端にみんなの表情や意識,発言,行動までが変わる,なんてことは多々あるんです。

わざわざ描く必要のないような議論の中に,じつは後々,ぐっと大きな行動変化をもたらす時間が隠れているんです。そしてそのことを組織長クラスの方々も,じつはよくわかっています。その証拠に,⁠研修で話したことを残したい」⁠この議論で生まれたものを残しておきたい」と口々に話されています。⁠最終的なアウトプット」よりもじつはその「過程」が大事であることを理解されているんです。

ただ,⁠絵にすること」とは「最後に一枚の絵にする」ものだということに囚われて,⁠絵になるか心配だけど」⁠描きにくいかもしれないけど大丈夫?」と心配してくださる方もいます。でも,⁠ご心配なく」というのが私のいつもの返事です。議論があれば必ずそこに時間が流れ,何かは必ず生まれているんです。

逆に言えば,共通認識として「1つの絵にする」ことは便利かもしれませんが,浸透しない「ミッションステートメント」のようにならないよう,その絵に至るまでの道も残しておくことをぜひお薦めしたいです。

A3-②:共有したいのは"一枚の静止画"というよりは
"ストーリーが流れる動画"のイメージ

「未来図」「ビジョン」って一体どんな絵になるんでしょうか? ⁠グラフィックファシリテーター」として私がいつも感じるのは「1枚の紙では足りない!」ということです。

GFでは,⁠未来図」を探しながらたくさんの絵を描き続けるうちに,必ず何度も似たような絵が現われたり,みんなが何度も振り返っては指を差す絵や,みんなに共通して記憶に残る絵というものが存在します。

それらを抜き取って並べてつなげるだけでも,⁠絵としての完成度は低いですが)メンバーにとって,とても納得のいく絵に仕上がります。そして,それは必ずストーリーのある絵になっています。

もしかすると「未来図」とは"一枚の静止画"ではなく,メンバーが通った道を共有できる"動画"のようなものなのかもしれないと思うんです。

A3-③:「未来図」はみんな"自分で"描きたい

「ぴったりの1枚絵が見つからない」と思うのではなく,メンバーと共にビジョンを探して歩いてきた道をもう一度思い出せるものをつなげてみる感覚でつくってみてはどうでしょう。

絵や写真でなくてもいいんです。例えば,これまでの議論の流れを思い出させてくれる見出しのようなキーワードや,実際に議論の最中にメンバーが発言した言葉をそのままフキダシにしてつなげてみるだけでもいい。

単語がスライドショーのように出てくるだけでも,メンバーにとって十分納得感の高まるストーリーが見えてくれば,その先の「未来図」は自然と,一人一人の頭の中に思い浮かんでくるのではないでしょうか。

その中で,具体的に絵にしたいものがあれば,イラストレーターや画家の方にイメージを伝えて描いてもらってもいいと思います。それはきっと,組織長が一人で依頼して描かれた「未来図」よりずっと好評です。自分達の思いが,きれいな絵に描き直されたときほど,メンバーはみんな「そうそう!こんな感じ!」とうれしそうな顔をして言ってくれるはずです。

プロの描き手に頼まなくても,まずはメンバーみんなでその言葉やイメージにふさわしい絵を議論してみるというのもまた大事な「時間の共有」ができます。実際にネット上や本屋,図書館で資料を探してみる,じぶんたちで写真を撮ってみる,下手でもいいから描いてみる,作ってみる。そうした「時間」がまた後々とても大きな行動変化をメンバーにもたらすかもしれません。

一枚のきれいな絵に仕上げられたらそれは便利かもしれませんが,その前に「共に歩いて探すこと」⁠その「時間の共有」が今の時代,とても求められているんだと感じてなりません。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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