モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第13回 「ホワイトボード」を使って議論を上手に進めたいと思っている人へ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4.5 分

まとめようと先を急ぎ過ぎてはいませんか?

Q2:絵を描く時,何か決まったルールがあるんですか?

A2:「GF」では"ルール"や"フレーム"に
当てはめようとすると,ウソの絵になる!

GFを始めた当初は,例えば「メインテーマは真ん中に描こう」とか「重要そうな発言は赤色で描こう」と"ルール"を決めてから描き出したこともありました。

でも,実際に議論が始まると,メインテーマと思われるその言葉を紙の真ん中に描くのがどうも居心地が悪かったり,重要そうと思える言葉は赤よりオレンジ色で描きたくてしょうがなかったり。

「最初に決めたルールに従おう」と思えば思うほど,筆を持つ手が迷ったり,止まったり,決めた色のサインペンを探して無駄に時間が過ぎてしまったり。結局,大事な議論を拾い落としそうになり,やめました。

それに,何より,無理矢理,私が決めた"ルール"や"フレーム"に当てはめて描いてしまったとき,どこかその絵がとってもウソっぽかったんです。

Q3:ゆにさんの「GF」とは,絵を使って,議論を,ロジックツリーやピラミッドストラクチャーにプロットしていくような感覚ですか?

A3:「GF」では"フレーム"に
納まりきらないものも拾っていく

「ロジックツリーやピラミッドストラクチャーを使って絵を配置していく」なんて考えたことがなかったので,その発想がとても新鮮で「試してみよう」と思ったこともあったのですが,やっぱりうまく使えませんでした。

それに,そもそも「ホワイトボード」と同じことを,ただ絵に置き換えるだけなら,私がそこに居る意味も必要も無いんですよね。

あるコンサルタントの方の言葉を借りるとわかりやすいかもしれません。

  • 「僕達は"フレーム"を使って思考を整理していくけれど,ゆにさんのGFは"フレーム"からこぼれ落ちたものも,すべて拾っているんですね」

ファシリテーターの方や参加者のみなさんが「ホワイトボード」を使って議論を整理したり,構造化するのと,その傍らで描く「グラフィック」とは "役割"がまったく違うんですね。そして,お互い"役割分担"しているからこそ,⁠ホワイトボード」に書かれているものとは全く違う構造や関係性が見えてくることに,価値を見出して頂いているんだと思います。

Q4:ゆにさんはホワイトボードに描いたりもするんですか?

A4-1:「ホワイトボード」上の"1枚絵"と
「GF」で描く"絵巻物"とは目的・役割が違う

その日の議題やアジェンダ,ゴールが設定されている会議や研修で,⁠ホワイトボード」に書き出されるのは,ある明確な「目的」を達成するために書かれる"1枚絵"といえると思います。

一方,GFはその"1枚絵"をつくりあげるまでのみなさんの議論により添って描いていく"絵巻物"。そんな時間軸に従って描く"絵巻物"は,一枚の紙では足りません。また,議論の後,その描き取った時間を改めてみんなで共有したい,別の場で再現したい。そのためにも消さずに残しておける紙のほうが「ホワイトボード」よりも向いているんですね。

「目的」も持たずに描かせてもらっているとも言えます。そのおかげで,"絵巻物"には,⁠ホワイトボード」に書き出された発言の背景にある意図やストーリー,その場の盛り上がった空気や熱,そのときの議論の流れ,雰囲気などなど。なんでも拾って描かせてもらっています。

A4-2:まとめようと先を急ぐよりも
ときには「寄り添う」気持ちで

そもそも,みなさんの前に立って議論を進行・促進する方(コンサルタント,ファシリテーター,その組織や議事のまとめ役といった方達)とは"役割"が違うんですよね。でも,描いている対象は同じ耳に聞こえてくる議論です。それゆえ,ときどき,傍らで議論を絵にしている私には、流れが途中で無理な方向に変わってしまう違和感を覚えることがあります。議論がいい盛り上がりをしているなあと思って描いていた筆の勢いと,まとめに入って描き出した絵がガラッと変わる。全く色も絵も違うものになる。つながらない。⁠あれ? 今までの議論はなんだったの?」というぐらい。

会議の上手な進め方とは,上手く議論を"まとめる"こと,少しでも"早く"結論を出すこと,かもしれません。でも,ときにそれが、私が無理矢理 "ルール"や"フレーム"に当てはめて描こうとしてしまったのと似た感覚を受けるときがあります。どこか「上手に議論を⁠まとめよう,まとめよう”」とする気持ちが強くなってしまうとき。それは無意識のうちに「ホワイトボードという小さな紙に納めなくちゃ」という意識が働いているようにも見えます。

特に会議などでは結論を急ぎがちです。でも,⁠ホワイトボード」は一見きれいにまとまっていても,何か大事なものを削ぎ落しては,結局,堂々巡りの議論を繰り返すという大きな無駄が発生しかねません。また,研修という非日常の場でせっかく活発な意見交換をしていても,結論としてまとめたら,想定通りの模範解答になってしまっては,時間をとって議論をした意味がない,なんてことになりかねません。

GFでは実際,皆さんの議論に寄り添った時間を描き、改めて振り返り眺めるという作業(グラフィックフィードバック,ダイアログ)をします。一見,遠回りしているように思えるこの時間が,結局は,ゴールへの近道を描かせてくれていると思っています。人がそこに集まりライブで交わした時間には,その後,結論やゴールに向かう大きな推進力が秘められているんです。

そこで,ときに,あえて「まとめよう」とはやる気持ちを抑えてみてはどうでしょう? 流れのまま流されてみる。フレームに当てはめることを放棄してみる。きれいに構造化しようとすることを休んでみる。 そんなふうに、結論へ辿り着く時間の使い方を,⁠緩・急⁠で意識的に使い分けてみてはどうでしょう? スピードを求められるビジネスの世界で,本当のスピードと力強さを求めたときに,ときにあえて思いっきり,議論に寄り添ってみるのも1つの得策だと感じていますがどうでしょう。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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