モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第20回 みんなが欲しいのは,ホンネを言える[安全な場]

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3.5 分

こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこです。前回は,会議や研修の参加者たちの[本音]を押さえ込んでいる[蓋]の絵を描きました。今回は,その[蓋]をどう外すのかについて,書いてみます。

ホンネを言うのはキケン?!

「変革だ!」「イノベーションだ!」と発破をかけても,反応が薄い。実行・行動に力強さがない。そこで「腹を割って議論をしよう」と呼びかけてみても,この[蓋]がなかなかはずれない。多くの経営トップやリーダーが共通に,苛立ち,悩み,危機感を抱いている状況です。

しかし,参加者側からすると,それは長い間,上から押さえられてできた[蓋]かもしれません。そして「言ってもしょうがない」「会議で言うことではない」「黙っていたほうが安全だ」「楽(らく)だ」と,内側から強く[蓋]に鍵をしてしまっている。外に出る危険に比べたら「本音を言わない」のは当然の防衛本能のようにも見えてきます。

そんな[蓋]の重さは,その[場]から感じる雰囲気=温度として伝わってきます。たとえば,参加者同士が挨拶もなく黙って開始を待っている時というのは,緊張感や堅さがあって[場]は"冷えている"状態です。そんな温度差に敏感な[場]の主催者は,本音で語り合える"暖かい"状態にするために,あの手この手と取り組んでいるわけです。

[場]を温める

主催者であるプロジェクトの長や組織のリーダー,または研修会社やコンサルタント会社,進行役のファシリテーターの方が,[場]を暖めるために,次のようなことを行っていることを見てきました。特に最近多いのは,

  • リーダーが自らお菓子やコーヒーを用意している
  • 高層ホテルの海の見える会議室といった特別な場所で行う(そのための予算を組織長があえて確保してくれたり!)
  • 会議の始まる前から,音楽をかけたり,参考書籍や写真集を並べている
  • 「チェックイン」といって本題に入る前に,全員が自由に話をする時間をとる
  • 最初に,頭の体操や体を動かす簡単なゲームなど「アイスブレーキング」を必ず行う

私が不平や不満を絵に描くことができるのもすべてはこうした取り組みのおかげです。本当にいろんな手法・ワークがあって、個人的にも「今回はどんな手法かな?」と楽しみです。

しかし一方で,いざ本題に入ると,途端に[場]があっという間に冷めてしまう。今開きかけた[蓋]が一気に閉じてしまい,私の筆も止まってしまうことも,よくあるんです。

温めても,すぐ冷める

いくら同じ手法でも(ホテルの会議室に場所を変え,お菓子やコーヒーを用意してみても)筆が進まない。「これは面白い」と思ったユニークなワークであっても筆はどこか楽しくない。その逆に,いつもの殺風景な会議室であっても,今まで聞こえてこなかった本音が溢れ出て筆が止まらない場もあります。この差は何なのでしょうか。

一言で言えば,目的が「いつもと違う雰囲気を作り出すため」で終わってしまうか,最後の最後まで[蓋]が外れることに焦点を当てているかの違いと言えそうです。危険を感じるとすぐに[蓋]をしてしまう場を相手に,どこまで取り組み続けるか,その根気の差とも言えそうです。

そこで,いろんな取り組みがある中で,手法の面白さだけに惑わされない大事なポイントを,私の勝手な"筆判断"でまとめてみました。名づけて『みんなが[蓋]をはずせる安全な場づくり10箇条』! 日頃「会議が盛り上がらない」「みんなどこか閉じている」と感じていている人に,どれか1つでも参考になればと思います。

温め続けて,安全な場をつくるには

~最初に,参加者同士の間にある〈壁〉を扱う~

  • (1)〈お互いを知る〉機会をつくる
  • (2)〈今の気持ちを打ち明ける〉機会をつくる
  • (3)〈会話のルール〉を決めておく
(1)〈お互いを知る〉機会をつくる

「アイスブレーキング」でも,一人体操といった個人ワークでは,本音を言う場へのウォーミングアップにはなっていません。一人よりも二人,二人よりグループ。チーム対抗で取り組むゲームには笑いもあって,無防備な会話が聞こえてきます。知っているつもりの職場仲間でも「こんな人だったの?!」という意外な発見が,無意識に抱いていた警戒心を取り去るんでしょうね。「隣りの人とまずは挨拶をしましょう」「1分ずつ自己紹介しましょう」といった,たった5分の時間を取るだけでも同様でした。

(2)〈今の気持ちを打ち明ける〉機会をつくる

じぶんを知ってもらう/相手を知るということは,[蓋]を外す第一歩。 そこでさらにぐっとお互いの距離が縮まるのが見えたのは「なぜここに来たのか」という質問に対する答えを,自己紹介代わりにグループで共有したときです。

「いやあ~上司が行ってこいって言うので来ただけです」「この忙しい時期になぜ今この研修を受けなければいけないのかと思ってます。今朝も電話が何本も入ってて…」「まだ眠くてボーっとしてます」etc。

皆さんグチグチ言っているようにも聞こえますが,これぞ[蓋]を外して皆さんの本音が出てきた瞬間。筆が進みました~! 本当は皆さん「最初に一言,じぶんの気持ちを言いたい!」「聞いてほしい!」んですね。ほとんどの研修や会議では一方的な話を聞くことから始まりますが,[蓋]を閉じている状態にはじつはなかなか入っていっていないかもしれません。スタート時に参加者の「今」の心理状態を吐き出させるのはなかなかよかったです。

(3)〈会話のルール〉を決めておく

ただ,不平・不満ばかりでは,議論の進む方向を狂わせる可能性があります。第17回のコメントでも"rascal"さんから「相手も自分も否定しない。そういう健全な議論が世の中には足りないのかもしれません」(抜粋)とありましたが,まさに最近はそうならないよう〈会話のルール〉を決めてスタートする場が増えてきました。例えば,

「相手の言葉を否定しない」/「発言する人はテーブルの中央にある人形(花・石etc.)を持つ」(ずっとそれを持ち続けていると一人で長くしゃべっていることが一目瞭然!)/最初に「今から3時間はあらゆる意見も出し切る発散の時間」と決める etc。

実際,だれかの発言が否定されても,他の人が「否定せず,ですよ」とルールを掲げることで,言われたほうも「あ,やっちゃった」と楽しく場が進みました。遠慮やためらいが取れた発言は,筆も本当によく反応します。一見,これらの〈会話のルール〉は,会議を時間通りに,予定通りに進めるためのものに見えますが,あくまでも「本音を発言しやすくするため」のルールです。上手にまとめる,結論を出すことを目的にしているとズレます。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • Re:

    なるほどね。場を温めるというのもわかる言葉ですね。
    堅さをほぐすということですね。

    私は会議の進行役を務めていますが、時々、進行役ではなくいちメンバーとして参加する方が会議の雰囲気作りにはやりやすいかもしれないと感じることがあります。

    自分のキャラ的に、ツッコミとか、茶々を入れるやり方で場を和ませるのがあっているように思うんですね。

    また、参加メンバーとか、場所とか、会議の時間とか、いろいろ条件的には難しい条件下で今の会議はやってるんだなーと思いました。テーマには直接関わる訳ではない、組織も役職も違う多数のメンバーで行うアイデア会議をうまく仕切ることなんて、誰にとってもきっと難しいことなんだろうな、と思いましたね。

    やり方を変えるか、自分の中でのゴールの設定を変えるか、悩むのをやめるか、どうするのがいいのか考え直した方が私の場合はいいかもしれない。運営の仕方というか、進行の仕方とか、自分のやり方ばかり考えてきたけれど、外部条件を変えることを考えた方がいいのかもしれない。

    Commented : #1  くろめがね (2009/02/28, 18:42)

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