モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第21回 不平・不満は[紙に定着]させると消えていく~

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じぶんの[他責]を俯瞰できると,始まること

実際,そのうちに研修ではこんな声が聞こえてきました。⁠不満ばかり言っていても何も変わらない」⁠会社のせいにしてないで,じぶんたちで変えられること考えよう」という[自責]の言葉。⁠できることから変えていこう」⁠そもそもどうしてこんなに会議が多いの?」⁠本当に全部必要?」という議論から「すべての会議を書き出してみよう」ということになり,具体的に会議と資料を大幅に削減することをみんなで決めることができました。

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言葉を紙面に一度定着させると,発言がその人から切り離されます。すると,それはみんなのものになります。じぶんだけの個人的な不平・不満だと思っていたことも,⁠じぶんだけじゃなかった」⁠みんな思いは同じなんだ」ということを知ります。

そこで,一歩引いてそれらを俯瞰できるようになると,現状が手に取るように見えてきます。そしてそんな不平・不満が実は大していくつも種類がないということもわかってくるんです。⁠これはどの企業でも驚くことですが)これはものすごくみんなに安心感を与えます。ただ単純に知らないだけだったり,誤解が誤解を呼んだだけだったり。

グラフィックファシリテーションのように絵を描かなくても,文字だけで十分な気づきは得られます。ぜひやってみてください。ここまで研修の例を紹介しましたが,商品開発や新規事業のプロジェクトでも[ネガティブな発言をあえて紙に定着させる]ことをぜひオススメします。

自分の提案に対して耳が痛い指摘や異論,反論は,ホワイトボードの脇に書き添えるか,ポストイットに書いて貼っておく。できれば文字が消えない[紙に定着]させてください。聞き耳を立てて書き出してみると,実行を阻んでいる壁や上司の判断基準が見えてくることもあります。そのプロジェクトの意外な脆さにも気づける “感度⁠を磨くのにもいい練習になるはずです。

異論・反論から逃げない。聞き流さない。

「それって本当に必要なの?」⁠その機能があるとだれがうれしいのかなあ」⁠○○サービスがあったほうがいいよねえ」⁠でも△△部署が担当なので,無理なんですよね…」etc.

「ダメ出し」「否定的な指摘」には,ついつい人は耳を塞ぎたくなるし,反射的に「できない理由」を並べて,なんとかその場を乗り切ろうとしてしまう。深く議論せずにさらっと流して終わらせてしまう。でも,その時はうまく取り繕ってみても,いざ他部署にプレゼンに行ってみたら,結局同じところを指摘されたり。だれかがなんとなく「脆いな」と感じて指摘したポイントは,必ず別のだれかにもまた指摘されたりする。

実際に,ある新商品開発のプロジェクトに毎週参加していたとき,私の筆は「同じ絵を確か以前の会議でも描いたな」といったことを何度も体験しました。その会議には毎週入れ代わり立ち代わり関係部署の担当者が出席して,まだ企画段階であるその商品案に質問や指摘をしていたのです。⁠この絵を描くのは4回目です」と伝えたこともあったほど,みんなどこかそのコンセプトの同じところに脆さを感じていたのです。

そして,プロジェクトを押し進めて行くことができるリーダーはそういった問いかけや一1メンバーのつぶやきに驚くほど敏感に反応します。異を唱えた言葉が抱いた違和感を無視せず,さらっと流すことがありません。そして,脆さに気づいたら徹底的に強固なものにするまで逃げません。議論の相手も離しません。そんな感度を磨くのにも,[紙に定着]させる練習は本当におススメです。

不平・不満,異論・反論もすべては「好き」の裏返し

そして,紙に定着させて俯瞰してみると,もう1つ面白いのは,その瞬間は否定的に聞こえた発言も,⁠そのプロジェクトがダメ」だと言っていたわけではなくて,ただ「なんとかしたい」思いから出た言葉だったんだと見えてくるところです。

これはグラフィックファシリテーションで描いた絵を振り返って見るときに私が感じることと全く同じ感覚です。⁠社長が最後まで話を聞かない」という不平・不満も,絵にしていくと,⁠じつは,みんな会社のことも仕事のことも社長のことも大好き。ただ,今はちょっとスネた子どものよう?」そんな表情に見えてくるんです。同時に,社長の似顔絵が,子供に思いが伝わらず寂しそうな親の顔に見えてきて思わず涙を描き足してみたり。

安全な場で明るく聞こえてくる不平・不満の会話からは,特に「現状をもっとよくしたい」という前向きな気持ちがしっかり伝わってきます。 ただ,そんな前向きな気持ちも,紙に定着させないと,ただ言い放って消えていく愚痴と変わりません。心の中だけ,もしくは独り言のようにつぶやかれる不平・不満は,何の変化も行動も起こしません。せっかくの「好きだから」⁠もっとよくしたい」⁠なんとかしたい」という気持ちも伝わらない。

そして,だれにも共感してもらえなかった言葉や,解決されないまま流された言葉は,結局また繰り返されます。誰かにわかってもらえるまで人は無意識のうちに言い続けます。もしくはまた黙って蓋を閉じてしまいます。

とにかく,まずは不平・不満や異論・反論こそ,⁠例えそのときの議題に沿っていなくても,それがどこまで大事かわからなくても,取捨選択は後でいくらでもできるので)余白に書き留めてみてください。[紙に定着]させて受け取ること。不平・不満,異論・反論は繰り返されなくなります。

そして,[紙に定着]させて,改めて「みんなで」⁠俯瞰」することで,堂々巡りの会議や,なんとなく収束しない,意思統一がはかれない,そんなだらだらと長引く会議を短縮してみてください。⁠できない理由」「ダメ出し」⁠否定的な発言」をきっかけに,合意形成や決断を速めてみてください。紙に定着させることは,遠回りのように見えて,じつは未来への近道なんです。

ということで,第18回から会議を惑わす[他責な発言]について4回に渡って扱ってきましたが,次回はがらりと変えて,「お金のなる木」ならぬ,「お金のなる絵」について書いてみようと思っています。お楽しみに!

グラフィックファシリテーターのゆにでした(^-^)/

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • 不平・不満の共有???

    不平・不満を本音としてとことん出しつくす、という今回のテーマは、私にとっては「え?」という感じです。やはりちょっと違和感を感じます。

    それはこれまで私が進めてきた会議のやり方と、方法論が全く逆だからなんですね。

    会議ではみんなが本音で語れるようにしようということは私も意識してやってきましたが、それはひとの意見に対する批判はやめよう、ネガティブな発言はやめよう、という方向でした。

    できる限りポジティブな発言を引き出そうとしていたのです。

    今回の話しを読んで、不平や不満を語らせないという方針はメンバーを信頼しきれていないということなのかもしれないと思いました。

    しかし本音を引き出す手段として不平・不満をとことんまで語らせるという方法を実践できるかというと、正直、不安を覚えます。結果が予想できないからかもしれません。今回の話しを読んでも、自分がそれをやった時に同じようにうまくいくのか不安があります。

    自分の器が小さいのかもしれませんね。
    今までのやり方を変えることに憶病なだけかもしれません。変えることの大切さは分かっているつもりではあっても、それを実践することにはハードルを感じます。

    少し考えてみようと思います。消化できるまで。

    Commented : #1  くろめがね (2009/04/26, 18:37)

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