モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第22回 お金の音がチャリ~ンと鳴る絵

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"絵が広がる"のは,〈未来に向かっている〉証拠

この話をすると,よく「そもそもどうしたらそういった『いいね,いいね』と広がっていく商品を思いつくのか,そこが知りたい」と言われることがあります。絵が広がって,財布まで持ち出してくる人が描けるときと,絵が広がらないときの違いは何なんでしょう?

恐らく,そのとき,私の筆を動かしているのは,その商品やサービスを生み出す根本にあるその人の思いが〈未来を向いている〉かどうかの違いだと感じています。

その商品や事業を生み出すに至った,そもそもの気持ちの方向性の違いです。⁠なんとかしたい」⁠こんなのがあったらいいな」という思いが,どんなに提案が荒削りであっても,それが〈未来を向いている〉と,その気持ちに乗って筆は「いいね,いいね」とたくさんの人の絵を描かせてもらっているように思います。紙面の外からもワーッと人が集まってきて,結果として,みんなが未来へ連れてってくれるようなイメージです。

一方で,一見,斬新なアイデアのように見えても〈未来を見ていない〉もの,例えば改善・改良レベルの,他社と比較した目の前の差異にこだわった短期的な視野で語られているものや,自分たちの利益や儲けばかりに話が偏ると,たとえ「いいね」と言った人が居ても,それほど大きな人数が寄ってきてくれる気配もなく,他の商品が出たらすぐそちらへ浮気してしまいそうな危うさがあります。

グラフィックを見返すと,⁠それ,いいね!」⁠欲しい,欲しい!」⁠使ってみたい」⁠体験してみたい」と集まってくる人たちは,頭で考えて選んでいるわけではなく,その商品やサービスから伝わってくる思いやコンセプトに,心が触れて,直観的に心で選んでいるという感覚が伝わってきます。よく,その商品の「世界観」とか,事業の「ビジョン」とか,⁠実現したい未来社会シーン」とか,いろんな言い方がありますが,それに心が触れて反応した感じです。その「世界観」「ビジョン」は必ず〈未来を向いて〉描かれた世界です。

[お金の音がチャリ~ンと鳴る絵]を絵空事に終わらせない人の目線

実際に,会議で議論している人たち自身にも同じことが言えます。みんなが絵を見て「いいね!それ!」と言って,実際に決定,実行のスピードが速まるときのみんなの目線は〈未来を向いている〉。いくつもの障害・弊害があたまをもたげても「それでも当社がやるべきだよね」⁠我々が実現したいよね」という声が聞こえてくるときの目線は〈未来を向いている〉。そこには説明も説得もなく,⁠だって,いいでしょ,これ!」という直観的な共感で結束している感覚です。

一方で,お財布を持ち出してくる人の絵がいくらたくさん描けても,会議室が「いいね,いいね」とは盛り上がらないときもあります。複雑な社内事情で発言が濁る場合もあれば,非現実な世界を描いても意味がないと一蹴する声が聞こえてくるときもあります。

しかし「こんな未来はいいよね」と見定めてから,改めて具体的に,みんなが「買いたい」と思える金額やそのために何をしなければならないのかを議論して実行することと,最初から「そんな理想論は無理」と言って目の前の現実に議論を引き戻すことは,私の絵でいうと,目線が遠くの〈未来を見て〉議論するか,〈足元を見て〉議論するか,という違いがあります。

目の前の障害を回避しようと〈足元〉ばかり見ていると,細かく走っているうちにどこに向かっているのかわからなくなる恐れを感じます。それよりも,〈未来を見据えて〉踏み出す一歩のほうが,障害をまたいで,多少転んでも大丈夫という力強く大きな歩幅になると思うんです。

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「白紙に絵を描く」最大の魅力は,自由さです。紙面の上では何でもありなんです。そしてその突拍子もないように見える未来図が「本当に実現したらいいよね」⁠すてきだよね」という世界なら,その絵を目標にして進むほうが,迷いにくく,一歩一歩に力強さも増していくと思うんです。障害を乗り越えることに力を注ぐか,障害を避けることに力を注ぐか,その違いで,⁠いいね,いいね」と人が集まってくる絵が,絵空事に終わるか終らないかが決まってくるように感じています。

よく,上層部やクライアントに新しい提案を通すためには「売れる見込みがあります」と証明するために膨大な数字を用意する必要がありますが,そこでも同じように,〈未来に向いている〉彼らの目線とズレた提案だとしたら,たとえ説得力のある数字が出ても,なかなか通らないのではないでしょうか。最後の最後は,そんな頭でっかちな提案だけでは限界があることを一番よく見抜いているのは,じつは"絵を描くのが上手な"社長,経営のトップの方たちだと思います。⁠※第5回「優秀なリーダーの話は絵にしやすい!」最後のGOサインが出るかどうかは,⁠それ,いいね!」と心に触れるかどうかなような気がします。


「黙って白紙の前に絵筆を持って立つ」という1つの制約をじぶんに課しているおかげで,いろんなことが聞こえてきたり,見えてきたりすることを日々体感しています。そして,そんな私と似たような体験をしている職業の方たちを見つけて,すっかり「そうそう!」⁠あるある!」と盛り上がってしまいました。⁠黙って聞く」のプロの女性たちです。そこで次回は「聞く」をテーマに,そんな彼女たちとの三者座談会をする予定です。⁠聞く」のまだまだ知らない奥深い世界をのぞいてみたいと思います。

ということで,今日のところはここまで。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこでした(^-^)⁠

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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