モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第24回 聴き手座談会(2)意外と知られていない“聴く”の世界~聴けるとは~

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

[聴く]を仕事にする女性達との三者座談会。まずは,通訳者 奥山ちとせさん,メディエーター 田中圭子さん,そしてわたしを含む,3人の[聴こえている世界]の話を中心に会話が広がっていきました。

座談会参加者:
  • ●通訳者 奥山ちとせさん(以下,奥山)
  • ●メディエーター 田中圭子さん(以下,田中)
  • ●グラフィックファシリテーター やまざきゆにこ(以下,ゆに)
  • 〇読者代表&記録係り ワタナベアキコさん(以下,ワタ)
  • 〇オブザーバー 本連載担当 タカハシさん(以下,タカ)

※それぞれのプロフィールは,第23回をご覧ください。


チャネラー? 口寄せ? 降りてくる,降りてくる~?!

ゆに:みなさんにも,発言者の"本当の声"みたいなものが聴こえているという体験があると思うんですが,いかがですか? 本当はその人は「こうしたい」と思っているという声

奥山:通訳者として,アメリカの研究所と日本のメーカー,日本の研究所の共同プロジェクトで,私が目になり耳になりということをしていましたが,そのときアメリカ側のある方に「チャネラー」と呼ばれ,私は自分の役割を「口寄せ」とか言ったりしました。

ゆに:チャネラー?

奥山:あの…,「降りてくる,降りてくる」なんて…。

全員:(笑)

ゆに:その感覚,わたしもあります!

奥山:ただ,たとえばプロジェクトの中で,ニックさんになり,クドウさんになりというのは,すごいキツイところもあって。お互いのもどかしい思いを,その人になって言っている状態と言ったらいいかな。時には夢にでてきましたね。

ワタ:1分1分,違う人になっている!

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田中:すごくわかります。メディエーションでの話し合いは,1対1の近隣問題もあれば,家族問題で兄弟親戚が集まる十何人の話し合いもあります。メディエーターは当事者のみなさんが顔をあわせたテーブルで一緒に話を聴きますが,最初は顔も見たくない相手と席をいっしょにするので,ワーッと言葉を一方的に言う方もいるし,黙っている方もいる。

ゆに:うんうん。

田中:すると,AさんがBさんに対して発言していることに対して,メディエーターはまるで自分が責められているように感じてしまうこともあるぐらい,それぞれの気持ちに共感してしまうところもあるんです。それはそれで,第三者としてメディエーターは自分自身が何に共感して,何を思っているのかを感じなければならないのですが,AさんやBさんにとってはじつはそんな第三者が一緒にいるからこそ安心できる場になっているというところもある。

わたしたち,「必死で」聴いてます

奥山:通訳は,純粋に言葉だけを追いかけていて。ものすごくメモは取ります。逐次通訳なら,徹底的にメモするというのはもう通訳訓練の1つ。

ゆに:グラフィックファシリテーションとそっくり。

奥山:それで,すごく面白いのが,エンジニア研修の通訳をよくやっていて,内容が専門的・技術的なものだから本当は分からないはずなんですけど,私は本気で聴いているじゃないですか。とにかく聴くしかないから必死で聴いている。そうすると,そのエンジニアの人たちよりも,問題の答えが先に分かるときがある。

ゆに:わたしも,あります!受講者よりも先にわかること。

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奥山:聴き方が半端じゃないから。メモを取っているし,理解しようとしているし,そして繰り返して言っているからだと思うんです。人の言ったことを自分の口で繰り返している。だからものすごく中身が頭に入ってくる。ゆにさんも「記憶力がすごい」と誉められることがあるって書いてたでしょ。あれも自分で聴いたものを消化して表現しているからだと思うんです。それをしている人間の頭の中の焼きつき方は,だいぶ違うんじゃないかと。理解とその残り方は明らかに違うと思います。

ゆに:本気で聴いてますよね。やっていることの9割は耳をダンボのように大きくして聴いているという感覚。「話しかけないで!」というくらい,もう,聴くことで精一杯。よく「描き方を教えて下さい」と言われますが,描き方なんて気にしてられない。逆に描き方を気にしていると,話が聴けなくなる。

田中:(笑)

ゆに:「こんなに必死で聴いているから,出来た絵になんと言われてもへっちゃら」みたいな覚悟で描いてますね。そのために,体力温存してのぞむだけ!というぐらい。

「感情のもつれ」をほどいてます

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田中:メディエーターの役割は,例えば「2階の洗濯機の音がうるさい」という苦情があったとして。今までの紛争解決では,「騒音が何デシベル」とか,「何時から何時までは音は出してはいけません」とか,法律とかルールの枠の中で解決する方法だったのですが,それだけではなくて。やっぱりお互いの事情を理解し合って,では,次にどうすればよいのか,お互いがじっくりゆっくり話し合っていきましょうと。

ゆに:「じっくりゆっくり」というのがいいな~。

田中:そのためには,当事者同士だと感情的にエスカレートしてしまったり,言えなくなってしまうことがあるので,お互いが安心できる場を作って,一緒に話し合いましょうと進めていくのがメディエーターですね。

ゆに:日本メディエーションセンターのホームページを拝見したときに,感情のもつれという言葉が新鮮でした。「もつれ」を絵に描こうとすると,本当にぐちゃぐちゃになっちゃって。

田中:ある家族の中で,兄弟親戚がお母さんの面倒を誰が看るんだともめている。兄弟の中で何十年も鬱積していたものが爆発して出てきたり,兄弟や親族の中で派閥ができたり,いろいろこじれにこじれてしまって,もうどうしようもない。お母さんを助けるためには,その何十年間の確執を,まずお互いの解決の糸口をなんとかしないといけない。

ゆに:「解決する」ではなく,「解決の糸口」を探すんですね。

田中:みんな心ではお母さんに感謝しているけれど,言葉では「おまえがやれ,おまえがやれ」と,否定的なことばかり出てきてしまう。そこを「本当は皆どう思ってるのか」「何が問題なのか」「どうしたいのか」をどう引き出していくのがメディエーターですね。

ゆに:奥山さんや私が会議室で付き合っているのも,「ぐちゃぐちゃもつれた」時間なのかもしれない。その「もつれ」をほどかず,目標や解決策に急いでも,みんなはもつれて引っかかったままだから進まないのかも。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • コミュニケーション

    今回のお話は、これまでとちょっと視点が違っていて面白かったです。(でも本質的にはコミュニケーションについてのテーマなのでつながっているのかもしれませんが)

    皆さんの、会議メンバー以上に真剣に全力で聴いているという言葉が印象的でした。

    どーも、コミュニケーションに対する努力が足りない人が多いような気がします。コミュニケーションがどれ程難しいことか、相互理解がどれ程大変なことであるかについて、認識が甘い人が。

    それは説明する側も、聴く側もお互いに。努力が足りないのではないかと思うことがあります。

    人はもともとお互いにわかりあうことが非常に難しいことであるという認識が足りない気がします。だからわかりあうための努力が足りない。伝える側も伝えられる側も。

    相手の言いたいことがわからない、或いは自分の言いたいことが伝わらない時の見切りが速い。そんな気がする。伝わらないとなると簡単に諦める。スピード最優先な時代の弊害なのでしょうか。

    お互いがわかりあうためにじっくりゆっくり時間をかけてコミュニケーションをとるという発想はあんまりないような。

    価値観なんて当たり前のようにひとりひとり違うのだから。議論のレイヤつか階層をすり合わせなきゃそもそも議論にならない。

    それこそ、お母さんのために一番いい方法を考えようよ、という基本線で合意できなければいつまでたっても平行線ですね。

    すり合わせることって、なんか大人の文化っていうか、知恵なのですね。

    Commented : #1  くろめがね (2009/07/05, 19:34)

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