モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第31回 よく描く絵「得体の知れないモノに翻弄されるヒト,されないヒト」

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

こんにちは,グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこです。

今回も「あれ? この絵は以前にも描いたことがあるぞ」⁠あれ? また同じ絵を描いているぞ」という現象を取り挙げます。

グラフィックファシリテーションで描く絵巻物では,出席者もテーマも全く違う会議ではもちろん,たとえ参加者が同じでも,同じ会社でも,1つとして同じ絵巻物が描けたことはありません。3時間,4時間…,8時間…,と描き続ける絵のほとんどは「その会社でしか描けない絵」⁠そのときの議論でしか描けない絵」ばかりです。

でもだからこそ,ふとその絵巻物の中に「他の会議や会社で描いた覚えのある絵」が描けたとき,しかもそれが一度や二度ではなく,三度も四度もあると,

  • (これはこの企業や業界だけの特別な問題ではないのかも?)
  • (この不安はこの会社の経営者だけではないのかも?)
  • (どの会社でも,課長クラスのミドル層は同じ悩みを抱えているのかも?)
  • (もしかしてコレって社会全体に蔓延していること?!)

などなど,いろいろな気付きに出あうのです。

リーマー⁠ーー⁠ーー⁠ーン!

昨年(2009年)の会議や研修で本当に「よく描いた絵」がこれでした。

画像

※上記画像はクリックすると拡大して見ることができます。

「リーマンショックの影響で…」

新商品や新サービスの開発現場でマーケット動向を語るうえで,または,会社のビジョンを改めて描き直す研修の場でも,事業の未来予測の難しさを語るとき,必ず聞こえてきた言葉「リーマンショック」⁠

そのときのわたしのイメージは,得体の知れないアメーバお化けの絵になりました。どの議論も,どこか共通していて,このアメーバお化けがおどろおどろしい声で「リィィィィマァァァァ~~~~~ン」と言って覆いかぶさるように襲ってくるイメージで描けました。

アメーバーのように,ドロドロウネウネと。わたしたちを飲み込もうと,もしくは蝕ばもうと,どこまでも広がり覆い尽くしてくる…。いずれの会議でも議論を聴いていて感じたそんな気持ち悪さを,気持ち悪い紫色のイメージで塗っていました。

そしてたいてい同時に描けるのが,この得体の知れないアメーバお化けに怯えるヒトたちの絵でした。

でも,ここで,このアメーバお化けに怯えた後に,このヒトたちがとる行動パターンが必ず2タイプ描けました。それが「走り回るヒト」「動かないヒト」です。

走り回るヒトvs動かないヒト(実例1)

次の絵は「走り回るヒト」の一例です。

得体の知れないリーマンというアメーバお化けの登場に,左はオロオロオロオロと,とりあえず動き出すヒトの絵。右は,⁠今リーマンショックの影響もあって,就職活動をする学生が90社も100社も回っても決まらない」という話を聴いて,ヘロヘロと目を回している学生の絵を描きました。走り回りすぎてもう身も心もフラフラです。

次の絵は「動かないヒト」の一例です。

左の2つの絵のように,不安で動けなくなっているヒトを描くこともあれば,一番右の絵のように,特に危機感もなく,どこか他人事のように動かないヒトたちを描くこともあります。ただ共通しているのは「走り回るヒト」とは対称的に,無駄な行動は起こさないでじっとしている絵になっています。

これら「走り回る」もしくは「動かない」2タイプの行動パターンをとる人物たちを描くのは,じつは振り返ってみると「リーマンショック」という言葉が聴こえてきたときだけに限りませんでした。ほかの議論でも,この2タイプの行動パターンを,しかも同時に描くことが本当に度々あるのです。

走り回るヒトvs動かないヒト(実例2)

例えば,⁠最近の情報収集の仕方」について議論していたとき。ネットでいろんな情報を得られるようになった今,⁠どんどん自分から情報を取りに行く」タイプと,⁠必要なときに最低限の情報だけでいい」タイプがいるという話がよく聴こえてきます。

そういう議論の場で描いた「どんどん情報を取りに行く」タイプの絵の一例が次の3つです。

最初は「知りたい」⁠もっといい情報が欲しい」と走り回って情報を集めていた人たちですが,いつしか,上から降ってくる情報量の多さにそれらを拾いきれなくなってきて,ハアハア息を切らして目を回している,という絵です。いかにも「情報に踊らされている」という言葉が当てはまりそうな絵です。

一方で,⁠必要なときに最低限の情報だけでいい」タイプの一例が次の絵です。

左の絵は,⁠情報を取りに行くのが面倒くさい」という無駄な行動は一切しないヒトの絵です。中央の絵は,必要なときに探せば情報はあると考え,必要に迫られない限り動かないヒトの絵です。一番右の絵は,⁠最近の大学生は論文をネット上からコピー&ペ―ストして作っているらしい」といった話から描いた絵です。

彼らは「情報に踊らされていない」というよりは,どちらかといえば「踊る気力もない」⁠踊れるパワーもない」といったところでしょうか。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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コメント

  • 議論の表層

    今回のお話しはなんだか耳が痛いです。

    果たして自分はピンチの時に走り回る人なのか、動かない人なのか。う~む。なかなか悩ましい。

    そしてまた本質についての議論の点もまた。

    議論が果てしもなく堂々巡りを繰り返して一向に本質に向かわないということは実際、何度も何度も経験しています。そもそもこの連載のテーマにもつながるものですよね。

    実際、最近も孫正義さんと佐々木俊尚さんや池田信夫さん、夏野剛さんが、ネット上で堂々巡りの長時間論争をやっていました。同じ話を延々と繰り返すその様子に、あらためて議論というものの難しさを感じたのでした。

    Commented : #1  くろめがね (2010/06/20, 14:44)

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