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第39回 結果を出す人には、強い「ハート」が描ける

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結果を出している人には,強い「ハート」が描ける

凄腕セールスマンの本で思い出しましたが,⁠売れる営業と売れない営業」の話を絵にしたときも,そこに「ハートが描けるか/描けないか」ということが起こりました。

ある出版社で,営業部長から日々売り上げ拡大の発破をかけられる営業マンたち。営業Aさんは「いい本なら売れるけど…,この本の売りは何ですか? 売れる要素は何ですか?」と企画担当者に聞き返しています。一方,営業Bさんは特に何も聞き返しませんでした。そして,どちらの営業マンが売り上げを上げているかというと,Aさんより,Bさんだという話。

Bさんは「わたしは中身を読まずに売ります。いいものだと信じて売る」のだそうです。⁠中身を読んでしまうと,好き嫌いといった個人的な感想にも左右されそう。中身はもう変えられない。自信を持って売るという気持ちが揺らいでしまう」からだそうです。

営業の腕に覚えのある読者の方は「そもそも営業マンとしてどうなんだ」⁠まったく顧客視点になってない」とひっかかる点があるかもしれませんが,今回それについては脇に置かせてください。とにかく見てほしいのは,この2人の営業マンの絵なのです。同じ書店に出かけて行く絵なのに,明らかにBさんの絵にだけ「ハート」が描けたのです。

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「いいものだと信じている」⁠必ず売る」という「ハート⁠⁠。しかもかなり強いエネルギー満タンの「ハート」です。Bさんの思いが書店にまで伝わる様子まで描けてきます。一方,Aさんには迷いがあるので「ハート」は描けませんでした。その代わり「売れないのは商品のせいだ」と言うAさんの声が描き足せそうでした。

この絵を見ていたら,なるほどなあと思ってしまいました。Aさんには「ハート」がないのだから売れないのも当然かも,と。"心から"売りたいと思っているか,いないかの差が,同じ行動をしているようで,明らかに結果に差が出るのだと思いました。

営業に限らず,結果を出している人には必ず,強い「ハート」が描けるのです。成果を出せるあの人とじぶんとでは何が違うのか。そこにどんな「ハートがあるのか/ないのか⁠⁠。探ってみるのは効果的だと思っています。

ちなみにわたしは,⁠ハートが描ける/描けない」を何度も体験するおかげで,自分自身の「ハート」の有無を振り返るようになりました。特に,若かりし会社員時代の未熟さを振り返るとわかりやすく「あの企画が通らなかったのは,この「ハート」がなかったからか」とか「上司が問いつめていたのはわたしに「ハート」があるかないかということだったのか」とか。今さらですが,"心から"気づいて,反省したりしています。

「ハート」を語り合えてないと,絵空事で終わってしまう

多くのリーダーは,メンバー一人一人には,未来に向かって「じぶんから」走り出してほしいと願っています。言い換えれば,言われたことをやるだけの現状に歯がゆさを感じています。でも,⁠ハートがあるか/ないか」という観点で,今一度メンバーを見なおしてみると,その歯がゆさの原因も明らかなのではないでしょうか。

ある会議では,新規顧客獲得の方法を議論していました。新商品を売り出す前から,開発途中の様子をブログで紹介するというアイデアが有力になっていました。

  • 「我が社も,開発担当者のブログを開設して,開発途中の様子を随時紹介していくのはどう?」
  • 「他社はすでにやっている。わたしたちもやらない理由は無い」
  • 「書くのも10分ぐらいでできるでしょう?」
  • 「とにかく顧客獲得,囲い込みの出来る施策の1つとして,早急にやるべき」

でも,実質作業するのは開発チームの3人です。とにかく日々,残業続きの人たちです。そこで描けたのは,ブログを夜中に更新している担当者の後ろ姿でした。思わず深夜を想定して描いてしまったのです。いくらやると決めても,負担が大きそうです。

  • 「本当にブログ書けますか? 更新できますか? 続けられますか?」

そして絵を振り返ってよく見てみると,その中にはどこにも「ハート」が描けていませんでした。お客さまに「伝えたい」⁠知ってほしい」という「ハート」はどこにも描けていなかった。このままの状態で,他社の手法を真似ても,そのとおりの成果は得られないのではないかと思いました。

会議でさまざまな決定がされていきますが,どこか盛り上がりに欠ける。⁠よし,やろうやろう」という勢いが感じられない。そんな会議のときは,たいてい「ハート」が描けていません。堂々巡りする会議や結論がなかなかまとまらないときも同じです。たいてい,⁠やり方」「方法論」について「できる/できない」とか,⁠儲かる/儲からない」という「do」の会話を繰り返しているときです。そんなときは一度,方法論の話を横へ置いて「ハート」を確認しあう作業を,最優先するといいと思います。

いくら「コレをやりなさい」と命令しても,そしていくら相手は「やります」と返事をしていても,⁠ハート」が描けてこない限り,人は「じぶんから」は動いていません。動いているようにみえても,本来の力を発揮していないのだと思います。⁠ハート」が描けないままいくら時間をかけて話し合っても,絵空事で終わってしまいます。また同じ会議を開かなくてはいけません。かえって遠回りをしていることになります。

「わたしたちはどうしたいのか」⁠どうありたいか(be)」という会話が,大事な「ハート」を描かせてくれます。このほうが,ずっと未来への近道を辿れる会議になると思います。 一人一人が「心から」行動を起こせる組織ほど強いチームはありません。


さて次回も,⁠ハート」について書きたいと思います。⁠そうはいっても,どうしたらハートが描けますか?」という質問は,よく聴く声です。みんな思っていることがバラバラで,⁠ハート」なんて描けないと思っている人も多いようです。でも,とにかく「ハート」を見つけたチームや組織は強いのです。みんなが1つになれる「ハート」がどういう議論から描けてきたのか,紹介したいと思います。

ということで今回はここまで。

グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこでした。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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