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第42回 [未来からの問い]を忘れずに!ネガティブ議論で当事者意識に火をつける安全設計(1)

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4)[未来からの問い]がないとどうなるか―2

[未来からの問い]がないと,視野が狭くなる。可能性が見えなくなる。

「未来目線になれる問い」を立てましょうと伝えると,よくこうも言われます。

  • 「3年も先のことなんて参加者は考えられないよ」
  • 「半年後のこともわからないのに10年後なんて実感が湧かない」

しかし目線を未来ではなく,⁠今月」「今週」と手前に置けば置くほど,じぶんが今守らなければいけないものから離れられなくなります。たとえば先ほど例に挙げた会議も,以下のような状態に陥りました。

  • 長期視点に立たないまま「議題:新生○○事業部 4組織の横連携」を議論しても,現場から聴こえてくるのは「そもそもどうして連携しないといけないの?」⁠各組織はそれなりに売上は上げている」⁠連携と言われても何をどうしたら…」という声。(a)
  • 「ビッグデータ活用推進」に全社各部門からメンバーを募っても,未来を見据えていない限り,参加者はじぶんの部門の目の前の利益になる話にしか興味がない。結果,一向に新しいものは生まれてこない。(b)

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短期的視野のままでは,じぶんの部門や組織の利害を手放せず,いつまで経っても新しい会話も発想も生まれてきません。

[未来からの問い]があると,視野が広がる。可能性が見えてくる。

そこで[未来からの問い]という旗を立てると,参加者の顔が,目線が上がります。

目線が上がるということは,自分の立場から抜け出せて,全体を見渡し,長期的な視点に立てるということ。自分を取り巻くいろんな立場の人たちを俯瞰できるようになります。

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するとようやく自分の事業部の利益や自分の役割を手放して,全社目線に立って「本来のあるべき姿 to be」を語り合うことができるようになるのです。⁠未来]から何度も[問い]かけるということは,参加者の「俯瞰力」を上げていく作業でもあります。

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参加者自身が「未来」を見据えて,目線を高くして,⁠俯瞰」できるようになると,自ずと未来への行き方は1つではないことも見えてきます。そして,いくつも選択肢がある中で,どの道を辿るかという選択に,その会社らしさも見えてきます。

5)[未来からの問い]の一文にこだわる

今日の会議は「何のために」議論しているのか。ゴールの焦点をどこに置くかが大事になります。

  • 「会議の終了時点」に留めるのか(会議室を出たら忘れてしまう⁠⁠。
  • 「目線は未来に向いているが,居るところはcan'tの壁を越えない現在の延長線上」にするか。
  • 「今居る場所とはまったく違う,ワクワクする未来」に置くか。

それらは[問い]という初期設定次第で決まります。同じメンバー,同じテーマでも,⁠問い]次第で聴こえてくる発言はまったく変わってきます(描ける絵巻物もまったく変わってくる⁠⁠。

わたしは,どうせ同じ時間を費やすなら,会議が終わった後に「参加者に[未来行動]が起きたかどうか」で,会議の本当の効率の良さをはかりたいと思っています。それを問えるのが[未来からの問い]です。

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そんな[問い]の一文づくりは,とても大事です。実際,会議を主催する側のみなさんは,前日ぎりぎりまで,こだわって唸って創っているほど大事な一文です。

そこで実際,⁠問い]をつくるとき,いつも主催者にお願いしていることが2つあります。これだけは外さないでほしいという2つです。

まず1つめは,安全設計にも書いたとおり「未来目線になれる」言葉選びです。

参加者の目線を向けさせたい未来とは,会議室を出た先にある,明日,明後日,半年後,1年後,5年後,10年後です。先ほどの例に当てはめてみると,次のような事柄です。

  • 連携した先に,どんなことを実現したいのか。そのありたい状態や行動とは。(a)
  • ビッグデータを活用した先で,だれをどう喜ばしたいのか。(b)

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参加者の目線を向けさせたいのは,目の前の方法論や課題ではなく,その先です。まだ良い方法論はわからないけれどそれを実行した先にある,ありたい姿やシーン。それらを思い浮かべたくなる[問い]を立てることが「未来目線になれる」状態です。

ただ,ひとつ気をつけてほしいのが,未来を「未来」「Future」といった言葉で曖昧にしないこと。⁠3年後」とか「2020年」と具体的な数字を入れることです。曖昧な未来ではいつまでたっても「他人事」の議論から抜け出せません。⁠10年後」とすれば,35歳の人も「45歳になったとき…」「自分事と」して考えるようになります。旗に書く内容だけでなく,旗を立てる場所を具体的に決めるのもポイントです。

そしてもう1つお願いしているのは「ワクワク感」を盛り込んでほしいということです。

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「ワクワク? なんて曖昧な」という印象を受けるかもしれません。けれど「ドキドキ」でも「トキメキ」でも「ニコニコ」もダメなのです。⁠ワクワク」でなければいけないのです。

6)[ワクワク]する問いかどうかを確認

参加者がその[問い]を読んで,未来に対して「ワクワク」するかどうか。これはどうしても外せないポイントです。

なぜそう強く言うのか。それは,次のような名前の会議にのぞんだときのこと。⁠未来に目線を向ける」だけでは力不足だったと思い知らされた経験からです。

  • 「未来会議」
  • 「フューチャーセッション」
  • 「未来のあるべき姿を考える ビジョンワークショップ」

会議の名前に「未来」とか「フューチャー」という単語がついているので,初めて参加したときのわたしは,それだけで「ネガティブ議論になっても未来目線に戻れる」と思ってしまい,特に「会議全体の問いを立てましょう」とは提案しませんでした。

実際,会議の前半では,未来を思い描く[問い]がありました。

  • 「10年後どんな未来がやってくる?」
  • 「どんな10年後20年後にしたい?」

未来予測に関するデータや資料が紹介されたり,専門家による講演など「未来目線になれる(慣れる⁠⁠」情報のインプットがあり,対話に参加した人たちも,未来への想像を膨らませていきました。

  • 「お金があってもエネルギーが買えない時代になる」
  • 「医療技術・予防医学が進んで健康な高齢者がますます増える」
  • 「ロボットが老後の相手をしてくれる」
  • 「日本の良さ,地域の祭りや縁側の暮らしが見直される」

暗い未来が入り交じりながらも,だからこそ明るい未来にしたいねと対話は盛りあがっていきました。

しかし会議後半,テーマが変わった途端,対話がトーンダウンしてしまったのです。

  • 「では,そんな理想の未来をどう実現しますか?」
  • 「現実に戻って具体的にあなたは何をしますか?」

先ほどまでの未来に向いていた目線はうつむいてしまいました。そのうち(前回:第41回に紹介した)⁠can'tの壁」が描けてきました。

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  • 「いろいろ可能性は見えたが,我々は会社として何に取り組むべきか…」
  • 「現実は日々の業務で余力なし。だれがどう進めるのか…」

ムリ,できない,ムズカシイ…と多くの発言が「can'tの壁」を超えられず,跳ね返されてきました。

しかし,新しい未来をつくりだすには「できる/できない」だけの議論では終われない話し合いがあります。いくら明るい共通の未来を語り合えたとしても,それを実現するための「未来行動」まで引き起こせなければ,話し合いの意味はありません。

「can'tの壁」を飛び越えるには,単に「未来目線で」未来を見ているだけではなく,ネガをポジにひっくり返す原動力が必要でした。それが参加者の未来に対する「ワクワクする気持ち⁠⁠。グラフィックファシリテーションでいうなら第40回で紹介した)⁠♡」です。

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「⁠⁠ワクワク』なんて言葉,なんだか子供みたいではずかしい」と言われたこともありますが,一方で次のような会議の場面に何度も居合わせます。

  • 「そのアイデアは,悪くないけど…なんだかワクワクしないなあ」
  • 「みなさんこの決定でいいですか? みなさん自身ワクワクしてますか?」

そう問われると,沈黙が一瞬,会議室に流れます。⁠ワクワクするか?」という問いかけには,心を動かす力,内省を引き起こす力があると実感しています。

一人一人の「ワクワクする気持ち」を喚起すること。⁠ワクワクする力」[問い]続けること。それこそ,⁠未来行動」を引き起こすには欠かすことのできない[問い]の構成要素でした。

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著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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