モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第44回 会議ですぐ使える!ネガティブを[吐き出し切る]安全な方法

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②吐き出されて来たネガを,いかに速く止めるか

次に,吐き出されて来たネガを,②いかに速く吐き切らせて止めるか。⁠これだけは外せない」という具体的な方法は次の2つです。

  1. 紙(付箋紙や模造紙)に手描きで書き留める
  2. 収束させない

1.紙(付箋紙や模造紙)に手描きで書き留める

ネガを速く止めるには,とにかく発言を「紙に書き留める」ことです。絵でなくてもいいのです。文字でいいので付箋紙に書いていくこと。詳しくは以前第21回「不平・不満は[紙に定着]させると消えていく⁠⁠)で説明しましたが,原理はグラフィックファシリテ―ションと同じ,⁠ネガは紙に定着させると止まる」なのです。

どんな愚痴や不満でも一度,紙に書き出してみること。署名は不要です。ポイントは, 付箋紙に書くのは「キーワード⁠⁠ ではなく,心の声をそのままに「気持ち」を書くことです。一度「目に見える」ようにしてみると,そのうち必ず共感者が現れます。

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だれかがそれを指差して「そうそう」と言ってくれます。そうすると書いた人は「受け取ってもらえた」⁠言ってもいいんだ」という感覚になれますし,指差した人は「こんな嫌な思いをしていたのはじぶん一人だけではなかった」という嬉しさを得られます。そんな「共感」が,あっという間にみんなの「気持ち」を1つにします。

さらに付箋紙に書くことは,これまでのじぶんにまとわりついていたモヤモヤした「気持ち」を,切り離して行く作業でもあります。付箋紙がいくつも貼られた状態を眺めていくうちに,あるとき「じぶんを第三者目線で俯瞰できる」感覚がつかめてきます。俯瞰できるとネガから抜け出せてきます(参考:第42回「俯瞰力⁠⁠。

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ネガのほとんどは「だれかのせい」⁠何かのせい」にしている自分たちの「他責」です。自分たちの他責な発言を俯瞰して見られると「上司のせいばかりにしていて,自分たちは何もしていない」といったことに自分たちで気付きます。すると抜け出せるのです。課題や問題には居続けません。

しかし,これらの現象はあくまでも「紙に定着」させて「みんなで目で見て共有」するからできること。その作業を怠ると起こりません。付箋紙に書くのが面倒な人もいるでしょうが,ぜひ手を動かしてほしい大事な作業です。

紙に定着させて「なかったこと」にはしない

ホワイトボードではなく,紙に書くが大事です。消すことのできるホワイトボードでは,なかったことにできてしまいます。目の前にその文字がなくなると,まただれかが同じことを言い出します。受け取られていないと止まらない。同じ愚痴や不満を繰り返す居酒屋議論は,紙に定着させていないから止まらないのです。

「付箋紙」に書く,がおススメ

模造紙に直接書くのもいいですが,少し大きめの付箋紙に書くのがオススメです。付箋紙だからこそ「後で並べ替え」たり「グルーピング」したりという作業が可能となります。その作業は「じぶんたちの気持ちをじぶんたちで整理していく」過程でもあり,そこから新たな原因や本当の問題点が見えてくる。じつはとても大事な作業になります。

同じ気持ちのボリュームを,付箋紙の「数」から測ることもできますので,⁠すでに書いてあるから書かなくてもいいや」ではなく,同じ気持ちを,あなたも,あなたの手書きで,付箋紙に書くことを薦めています。

また「いきなり模造紙に書くのは,抵抗がある」⁠書いて消せない模造紙は緊張する」という参加者も見受けますから,付箋紙のほうが書き出しが速いという利点もあります。

あえて「じぶんの手で」書く

「付箋紙に書き出してください」と言っても,実際は,なかなか書いてくれない人がいます。⁠書くのが苦手」⁠字が汚いから嫌だ」⁠書くより喋りたい」など理由はいろいろ。

けれどあえて「じぶんの手で書く」をうるさく言うのは,⁠肉体労働」を伴わせるのが実は何よりもネガを効率よく止められるポイントだからです。これも原理はグラフィックファシリテ―ションと同じです。

話し手は,腕を組んだまま喋っていると,まさか「自分が何度も同じことを言ってる」とは思ってもいなかったりします。けれど同じ愚痴や不満を描き続けさせられるわたしはいつも「その不満,いくつ描いたら気が済みますか~!?」と絵筆を持って叫んでいます。

「じぶんの手で書く」という「肉体労働」が伴うとすぐに「もう何度も同じこと書いてるなオレ」⁠あっちのテーブルにも同じ付箋が4枚もある」と言って自然と止まっていくのです。⁠じぶんの手で書く」「じぶんで気が付く」が一番速いです。

「あえて手で書いてほしい」この理由を伝えれば,参加者の皆さんも書いてくれています。参加者の方に遠慮せず,まずはきちんと伝えてみてください。

ただ,⁠喋りながら書く」のは慣れていないと難しさもあります。その場合,いきなり対話を始めるのではなく,まずは最初の2~3分,一人一人が各自で付箋紙に書き出す時間をとってあげてください。

また,⁠喋っていない人が代わりに書いてあげましょう」という呼びかけも効果的です。じぶんの発言をだれかが書いてくれると,じぶんの気持ちを受け取ってもらえた嬉しさが生まれます(これもグラフィックファシリテ―ションと原理は同じです⁠⁠。各テーブル内の参加者同士の関係性を良くすることにも貢献しますので一石二鳥です。

2.収束させない

多くの主催者が「待てない」で失敗しています。ほとんどが,急かしてはいけないところで対話を止めてしまったり,慌てて結論を求めています。一方,⁠短い時間でネガを吐き出し切れた」⁠思ったほど時間がかからなかった」という会議に共通するのは,主催者が「今日は,議論を収束させるつもりはありません」⁠何か結論を出したいという場ではありません」と最初に宣言したところでした。話し合いの流れをコントロールしたり,想定した結論に導こうとしたりすることを,主催者が思い切り手放したとき,うまくいっています。

時間配分としては,もし時間が4時間しかとれなければ,ネガの吐き出しには3時間30分ぐらい使う気持ちで設計します。⁠アウトプットを何か残さないと…」と思っている主催者にとって「残り30分で何か案を出すのは短過ぎる…」と感じるかもしれません。けれど,ここが耐えどころです。

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ネガティブな気持ちを吐き出し切れないままでは,結局,アイデアもありきたりなもの,それほど数も出てこないし,アクションプランもほとんど実行されないでしょう。 けれど,せっかく,ネガティブな気持ちを共有するという,今まで扱ったことのない会議を開くのですから,ここは主催者の度量の試されどころ。信じてみてください。

その代わりネガが吐き出し切れたら,その反動で思わぬアクションプランやアイデアが飛び出してきます。かつそれは必ず心から「これを実行したい」という本気のハートがこもっています。

長くなりましたが以上で[事前の安全設計]のために「これだけは外さないで」でした。

次回は実際,これまでの会議が[事前の安全設計]をすることで,どんな場に変化するのか,実例を元に[before/after]で紹介します。今予定している会議も[事前の安全設計]の視点から見直したくなると思います。どうぞお楽しみに! ということで今回はここまで。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこでした(^.^)/

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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