モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第46回 (会議あるある第二段)「シニア」「高齢者」「老人」と呼ばれて,未来のお客さまが「怒っている」絵が描けてくる! ハートをつかむためにも[ネガポジ設計]

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GFあるある③ 財布を狙う¥マークの目

シニア・高齢者にまつわる[GFあるある]をもう一枚ご紹介します。ハートとは正反対ともいえる,次のような絵も本当によく描きます。

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多くの企業が,シニアや高齢者の「お財布を狙う」という絵です。ポイントは,どの企業の目も「¥マーク」になっているところ。⁠退職金」「財産分与」⁠⁠孫のためなら財布の紐が緩むのではないか」といった話から描けてきます。

会議室で議論している人たちは,自分たちの目が「¥マーク」になっている意識は全く無いと思うのですが,絵筆がこれまでシニアや高齢者の気持ちを描いてきた記憶からすると─⁠─たとえば退職金の使い道について

  • 「これから貯金と年金でやりくりしていかないといけないので贅沢はできない」
  • 「もしものときにいくら必要なのかまだよくわかっていないから,しばらくは手をつけないで,勉強してから考えます」

といった声を思い出すと─⁠─,絵巻物の上には,財布の紐をぎゅっと固く結ぶシニアや高齢者の絵を描かずにはいられません。

「わたしたちはシニア・高齢者への思い=ハートを1番に議論をしているよ」というのなら,なんら問題無いのですが……。企業から「¥マーク」の視線でアプローチされても,未来のお客さまがハートが閉ざしてしまうのは,絵巻物の上では一目瞭然です。

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しかも,あまりに数多く「目が¥マークの企業」を描いているので,⁠一体どれだけの数の企業が,1人のお財布を狙っているの?」と途方に暮れるときがあります。とにかく多くの会議室が陥っている議論の流れです。

なぜこんな議論になってしまうのか

なぜ絵巻物の上でこうした「お客さまが怒ったり」⁠頑なに財布を閉じる絵」がたびたび描けてしまうのか。そこにはやはり共通点がありました。それは[ポジティブな]側面ばかりみて議論しているということでした。

この連載では何度も紹介していますが,⁠ポジティブな]側面ばかり議論しても,結果的に「他の会議でも描いたことのある絵」「どの企業でも使い回せる絵」にしかなりません。本来なら,その会社らしいハートのこもった絵が描けるはずなのに。 ありきたりな[ポジティブな]絵には,なかなか「ハート」⁠その会社「らしさ」やお客さまへの想い,⁠何としても実現したい」という社員の方たちの想いなど)は描けてきません。

そもそも, 他と同じような議論をしていて,いいものでしょうか。

圧倒的な差別化を図るためにも,じぶんたちの中に強いハートを目覚めさせるためにも,話し合ってほしいのは,お客さまがどんな[ネガティブな気持ち]を抱えているかということです。第40~44回で紹介してきました[ネガポジ設計]です。

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ハートはそう簡単に描けるものではありませんが,お客さまの抱える[ネガティブな気持ち]と向き合い,それを自分事として捉えている時間こそが,すでに他ではマネできない思考ルートです。その会社やその地域でしか生まれてこない独自の道をたどっています。

「ありたい姿がモヤっとしている」⁠メンバーが腹落ちしていない」と思ったら,ぜひ議論の流れを[ネガポジ設計]に変えてみてください。

GFあるある④ 「誰」を描けばいい?

[ネガポジ設計]で議論する際に,ここでも,よく会議で描ける困った絵があるのでご紹介しておきます。

「わたしたちはすでにネガから語り合っていますよ」とよく言われます。⁠ネガ」「課題」というのです。よくある「ネガポジ設計の勘違い」です。

例えば「我々の会議の議題は『高齢化が進む地域の課題』を議論しています」というのです。

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しかし,ここでふと絵巻物の前でわたしが困ること。それは

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  • 「高齢者って…だれ?」
  • 「男性?」⁠女性?」
  • 「65歳?」⁠70歳?」⁠75歳?」⁠80歳?」
  • 「だれを描けばいいの?」

と筆が止まることです。

多くの会議では「ネガ」「課題」と捉え,⁠高齢者」⁠シニア」という「三文字」のまま議論を進めています。しかし,⁠だれの」⁠どんな困ったこと(=ネガティブな気持ち)なのか」が具体的に描けないまま議論しているうちは,本当に大事な問題,本質的な課題は絵には描けてきません。

会議室で語られる「シニア」⁠高齢者」という三文字の言葉は,どこか「他人事」のように聴こえてなりません。

議論しているのは,20代,30代,40代,50代,60代,70代の方もいらっしゃいます。じぶんたちも,いつか,もうすぐ(すでに!)⁠シニア」⁠高齢者」と呼ばれるはずの人たちです。それでも,聴こえてくる言葉から,なかなか具体的な絵が描けません。

医療や介護,リハビリに従事する人たちの集まる会議でも(つまり,高齢者やシニアの方たちと日々接している方達が集まる会議であっても)⁠同じことが起きています。

「高齢者」って……だれを描けばいい? ⁠要支援1~2,要介護1~5」のうち,どの認定を受けた高齢者なのでしょうか?

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「要支援1」の女性と,⁠要介護3」の男性では,描ける絵はまったく違ってくるのです。高齢者本人だけでなく,高齢者を支える人たちも[ネガティブな気持ち(不安,不満,心配事,不明,不信など)⁠を抱えていて,その絵はまた違ってきます。

「高齢者」⁠シニア」という「三文字」で思考を止めず,もう一歩,具体的に「だれが」というところに参加者が共通の視点を持てると,まったく議論が変わってきます。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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