モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第47回 その打ち合わせ「9つの表情」で見直してみませんか:絵巻物思考のススメ

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「解決すべき本当の問題」は,まだホワイトボードには書かれていない

なぜ,当初の会議で「一人一人の業務とかかっている時間をすべて記録して,見える化しよう」という解決策が生まれてしまったのか。

多くの会議が,⁠課題」を議論するのと同じぐらい,⁠ソリューション」の議論が大好きでした。 わたしがその場にいたら,もう少し課題について「だれがどう困っているか」まで踏み込んで話をしてほしいと思うところ,話はすぐに解決策(ポジ)に及んでいました。

けれど[表情とセリフ]を描くたびにわかることは,解決策を話し合う前に「本当の問題は別のところにあるのでは?」ということです。

前述の箇条書きされた3つの課題に対して, 当初の「業務をすべて書き出す」という対策とはまったく異なる解決策が生まれてきたのは,⁠だれがどう困っているの?」という問いによって,より具体的な問題が見えてきた結果です。

「箇条書きされている課題」「解決すべき本当の問題」は違うということを,わたしは「9つの表情」から教わりました。

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多くの会議では「課題」「ソリューション」を好み,⁠新しい価値」「あるべき姿」を議論するのが大好きなのですが,⁠箇条書き」されているホワイトボードの議論に,絵筆を持つわたしはいつも不安を感じています。

人に関わる課題やサービスを話し合っているはずなのに,⁠だれが」という主語が無い議論。

文字だけの箇条書きや数字の羅列するエクセル表が,人の頭の中から三次元の世界,現実世界を想像する力を奪っているようです。二次元の文字遊び・言葉遊びから,実態を伴わない(絵にならない)議論を引き起こしているように思えます。でも何より気になるのは,そんな論理的で左脳的な議論に,話している人たち自身がつまらなそう,苦しそうに見えることです。

「情報」の共有より先に「感情」の共有を

議論を「文字」ではなく,絵=[表情とセリフ]で描くとはどういうことか。一言でいうと「⁠⁠感情(気持ち⁠⁠』を表現している」と言えます。

「仕事量が多すぎる」という箇条書きではなく,⁠トイレに行くヒマもないぐらい辛い」とか「1人で仕事を背負って可愛そう」という『感情(気持ち⁠⁠』が表現できるということです。

『感情(気持ち⁠⁠』が表現できると何が起こるかのか。⁠箇条書き」のまま議論していたときと違って,先ほどのメンバーの中には「ヒガシさんをラクにしてあげたい」⁠自分たちももっと楽しく仕事がしたい」⁠これは本気でなんとかしないと」という気持ちが芽生えてきました。GFでいうハートが描けてくる発言の数々です。

[表情とセリフ]を描く
  • ⁠感情(気持ち⁠⁠』まで書ける
  • ⁠感情(気持ち⁠⁠』が伝わる
  • →みんなの「気持ち」も動く

結果,共感から自分事へとコミュニケーションがぐっと深まり,ずっと速く議論が進むのです。

普段の会議の「文字」⁠言葉」⁠図表」では,文字で「情報の共有」はされています。けれども,多くの会議で「みんなの気持ち」が置いてきぼりにされています。わたしは絵筆を通して,⁠感情の共有」がされていないことに気づきました。

議論を絵にする=[表情とセリフを描く]という作業は,⁠みんなの気持ち」を汲み取る作業。モヤモヤしている会議があったら,課題や解決策(情報)を列挙をするのではなく,⁠だれがどう困っている」⁠感情)を語りあってみませんか。箇条書きにはできない,うまく言葉にはできない,モヤモヤしているところにこそ,解決すべき本当の問題と思いもしなかった解決策が隠れています。それを掘り出す1つのツールとして「9つの表情」を使ってみてはいかがでしょうか。

頭の中で思い描くでOK。「だれがどう嬉しいの」「だれがどう困っているの」

「9つの表情」を実際,絵筆を使って描く必要はありません。頭の中で思い描くことで十分です。⁠だれが?」⁠だれがどう困っているの」⁠だれがどう嬉しいの⁠⁠,その想像力を広げてください。わたしは,そういった考え方を「絵巻物思考」と呼んでいます。

「絵巻物思考」ができると,実際,手を動かして描くよりも,頭の中のほうがずっと速く,かつ簡単に,二次元ではなく現実味のあるリアルな世界を想い描けます。奥行きがあって,色彩豊かで,温度感のある,表情表現も無限の,人間味あふれる世界が広がります。

「表情とセリフ」が思い描けないときには,⁠そもそも,だれがどう困っていますか」⁠それで,だれがどう嬉しいのですか」と会議メンバーに問いかけてみてください。

「9つの表情」から始めてみませんか

そもそも「9つの表情」が生まれたキッカケは,⁠絵心が無いけれど自分でも会議を絵にしてみたい」という声に答えたいという想いからスタートしました。絵筆でお手伝いした会議が120ぐらいを超えたころ,その120枚超の絵巻物を一つ一つ調べて,多用している絵を選び抜いてみました。

調べ始める前の予想としては,すぐに使える絵として,海外のグラフィックツールによくある,矢印や旗印や太陽や山といったアイコンマークのようなものが見つかるのだろうと思っていました。ところが結果は(わたしのGFの場合)いちばん描いていたのは[表情とセリフ]でした。これにはわたし自身も驚きました。でもこれが実は大事なバロメーターとして,今も議論に大きな役割を果たしてくれています。

「9つの表情」は基本に過ぎません。⁠眉」「目」「口」を入れ替えたりして,⁠表情」表現はどんどん増やしてみてください。わたしの描く「表情」の構造は簡単です。3つのパーツ「眉・目・口」で出きているだけです。それらを入れ替えたり,他にも顔文字やLINEスタンプやお気に入りの漫画を参考すると,さらに「表情」のパターンは広がります。

参考までに,金沢での「9つの表情」の活用実例を紹介しておきます。

  • 石川県庁にて子育て支援者たちの意見交換会で『表情9』
    • さて次回も「多くの会議で共通して起きているちょっと困った現象 GFあるある⁠⁠ をお届けします。すでに「9つの表情」「絵に描ける/描けない」という絵巻物思考を身につけたあなたなら,⁠こういう議論,やっちゃってるね?」と笑えるかもしれません。お楽しみに。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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