モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第49回 みんな実は大好き! ホンネが見える[ネガティブな表情+セリフ]

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練習2)「部下の話を傾聴します!」

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この研修の現場で,わたしは正直,ハートが描けずホトホト困っていました。

「本当にやるのかなあ」わたしの心の中の[ネガティブな表情+セリフ]は上の絵のとおりでした。

「傾聴」という言葉だけが一人歩きしていて,具体的な話は何も聴こえてこない。部長さんたちが「傾聴」⁠傾聴」と言えば言うほど,わたしの耳には「ケーチョー」⁠ケーチョー」とカタカナにしか聴こえてこなくなり,まるでカラスが「カーカー」と言っているようで……次のような絵になってしまいました。

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  • 「みなさん本当に部署に戻ったら,部下の話を黙って聴けますか?」

そんな私の問いかけに,その日はみなさん苦笑いしたまま,研修は終了しました。その後,行動変化が見られなかったその研修は,内容そのものの見直しがされたのですが,そのとき人事部との振り返りの中で,受講生のホンネは,次のようなものだったのではないかという話が挙がりました。

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[ネガティブな表情+セリフ]に書けるホンネには,実行されない理由が見えてきます。

練習3)当社は女性活躍を推進します!

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「女性活躍推進」というテーマの会議は本当に増えました。社外からロールモデルとなる女性を呼んでの講演会や,社内の先輩女性社員を囲んで話をする機会など,さまざまなプログラムが,あの手この手と用意されています。しかし,本気で彼女たちの活躍を応援するなら,まずは[ネガティブな表情+セリフ]を共有してあげてほしい。

次の絵は実際に,ある大手企業で「女性活躍推進プロジェクト」をお手伝いしたときに描けたものです。全支店から集められた女性社員80人のワークショップで,まずは思い切り[ネガティブな感情]の共有からスタートしました。

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この共有はとっても盛り上がりました。各テーブルから笑い声が聴こえました。

「そうそう!」⁠わかる!」⁠わたしもそう思ってた!」

同じ[ネガティブな感情]を共有できると,必ずといっていいほど皆さん笑顔になります。みんなの心を一気に1つにするネガとは,本当にいいものです。

もちろん「愚痴って終わり」ではありません。この連載ではさんざんお伝えしていますが,ネガこそポジの裏返し。なんとかしたいポジがあるから愚痴も不満も出るわけです。ネガティブな気持ちを吐き出し切った先に,じぶんたちが心から望むありたい姿がこの日も見えきました。

  • 「下駄を履かされたと言われないよう,だれもが認める実績をあげて管理職になりたい」
  • 「男性陣たちも戸惑っているんですね」
  • 「しょうがない! わたしたちがリードしてあげるか(笑)⁠

なんとも頼もしい声の数々でした。⁠ネガティブな表情+セリフ]にこそ,本当のポジ,自責に立ったハートが見えてきます。

練習4)当社のクラウドサービスで御社のワークスタイルの変革を促進します!

これは前回紹介した営業部門の悩み事です。営業がいくら提案してもクライアントの心がつかめない理由は,⁠ネガティブな表情+セリフ]を探れば見えてきます。

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実際,営業戦略を話し合う会議では,システム導入のメリットをいくら聴いても,そのシステムを使って喜ぶ社員の絵が描けず,本当に困りました。⁠業務効率や生産性があがるとは具体的にどんな絵を描けばいいの?」という疑問が湧いてくるばかり。そこで描けたのは,ふと思い出した次の絵でした。それは,ある別の会議で海外出張の多い商社の方たちが,自分のパソコンに搭載されたWeb会議システムのアイコンを指差して話していたことです。

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すると,この絵を見て,営業の方たちから失笑が漏れました。⁠確かにね!」⁠オレも嫌だね!」⁠喫茶店にいるときぐらい1人にしてほしい」という声も挙りました。

[ネガティブな表情+セリフ]を書くというのは,なんだか意地悪な気持ちになるかもしれませんが,その人をラクにしてあげられる魔法のツールでもあるのです。ビジネスライクな話ばかりではなく,みんな本当はホンネの会話がしたい。それは恐らくクライアントさんも同じ気持ちなのです。⁠本音はそうだよね」というところから始まると,クライアントの心も開いて,もしかしたら向こうから「大事なのは使い方だよね」⁠介護を理由に辞めていく人を引き留めることができるかもしれないな」なんて話を聞かせてくれるかもしれません。一方的に提案するのではなく,会話のキャッチボールから,営業チャンスが見えてくるのではないでしょうか。

多くの会議が陥っている「のっぺらぼう」なヒトの会話

4つの実話はいずれも,絵に描こうとしたら[人]が描ける話です。⁠ご近所さん」⁠部下」⁠女性」⁠社員」⁠けれどこうして「絵にならない」議論に多くの会議が陥ってしまっているのはなぜか。

その原因の1つは,それぞれの会議でもらった営業パンフレットや研修資料,未来ビジョンに描かれた絵にあると思いました。それは「人」は描けているのだけれど「表情がない」⁠次のような絵であることでした。

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もちろん中には,きちんと洋服を着ていて,顔もあって,髪の毛も描けている絵もあります。しかし表情はいずれも1つです。

こうした絵からわかるのは,⁠人]の話をしているつもりでも,頭の中では表情が一つか,もしくは表情すらない「のっぺらぼう」のまま議論をしているのでは?ということです。つまり[情報の共有]はしているけれど[感情を共有]はできていない。だからその[人]の気持ちも,どこかつかみきれないでいるのでは。

相手にどうも伝わっていないなと感じたら,せっかく[人]が描ける話をしているのだから,もう一歩つっこんで[表情+セリフ]にまで落とし込んで話をしてみてください。特に[ネガティブな表情+セリフ]というホンネの見える話し合いは,⁠人]の心をつかむ近道になるはずです。

さて次回は,⁠表情9]にもう1つ便利な絵を追加します。究極の感情共有ツールといってもいいでしょう。それを使って,深く思いを共有できた組織や地域の実行力には目を見張るものがあります,という話です。お楽しみに。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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