IT勉強会を開催するボクらの理由

第10回 マニアックにもソフトにも! 「ぼくのかんがえた未来の家」が現実化する~おうちハック発表会

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そもそも「おうちハック」とは何なのか?

このように,第1回目から非常に盛り上がった「おうちハック発表会」⁠発案者の湯村さんは「趣味で家をハックしている人達が集まって,情報交換をする場を作ることが目的でした。参加者の反応を見ると,おおいに達成できたと思っています。基調講演+ライトニングトーク+懇親会という構成もちょうどよかったので,これからも継続したいです」と振り返りました。

大和田さんも「私の(会社での)プロジェクトでは,スマートハウス関係の勉強会やコミュニティ活動に大変力を入れています。⁠Kadecot』のAPI普及を図るうえで,APIの質を高めるだけではなく,⁠APIの存在を)知ってもらう場を作ることと,ユーザのフィードバックを得ることが重要だと考えているためです。会社もその路線を支持してくれています。今回のイベントでは,この目標にかなり近づけたと思います」と述べました。

そんなお2人に,それぞれ「おうちハック」に興味を持ったキッカケを聞いてみました。まず湯村さんはと言うと,⁠大学1年生のときに友人の影響でDIYにハマり,ホームセンターで木材を買ってきて部屋の家具(本棚,テーブル,クローゼット等)をほとんど自作していました」という答えが返ってきました。デジタルだけでなく,アナログの体験が最初からあったというわけです。

そのため「ハックされた理想の家」のイメージも「非プログラマでもプログラム可能で,ちょっとしたカスタマイズが気軽にできる家が理想です。最近では,スマートフォンアプリの『IFTTT』が出て,自分の行動や習慣に合わせて動作させるアプリケーションを簡単に作ることができるようになりましたが,ああいう感じでアプリだけでなく実世界も操作したいと思っています」という,かなりラジカルなものです。

一方で大和田さんにキッカケについて聞いたところ,⁠最初は『萌え木』という,植物とその妖精をAR(拡張現実)で愛でるというシステムを作りました。それを家電に拡張した『萌家電』を作り,それが縁でスマートハウス業界に入りました。もともとAPIやDIY文化に興味があったため,それらを組み合わせた活動をと考えたところ自然に今の形になりました」と言います。

また理想の「おうちハック」についても,⁠ハードコアなハッカー向けには,電子ブロックを組み替えるように宅内の要素をいつでも再構成・再配置し,自作ガジェットも自在に組み合わせられるようなイメージです。一般向けには,ソフトと市販製品を組み合わせたソリューションをベースに,各々の趣向に合わせてカスタマイズできるというイメージです。実際は二択ではなく,中間にさまざまなスタンスがあると良いと思います」という回答が返ってきました。

発表会の世話役を務めた湯村翼さん(左)と大和田茂さん(右)

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湯村さん,大和田さんに共通しているのは,⁠ハックされた理想の家」という完成形が存在するのではなく,ハックを通して状況が変えられるという,可変性が担保されている状態を理想としていることです。もともと理想の家屋や間取りは,家族の成長によって変化していきます。そのため間仕切りを変えたり,模様替えをしたり,場合によってはリフォームが行われるのです。⁠おうちハック」もまた,そうした行為の延長線上にあると言えそうです。

世界中で盛り上がりを見せる「おうちハック」

ちなみに他の勉強会やイベントにも,積極的に参加しているというお2人。湯村さんが独立するキッカケとなったのも,⁠International SpaceAppsChallenge(ISAC)⁠という,NASAのデータを使って宇宙のアプリケーションをつくるハッカソンでした。東京大会で優勝したときのアイディアが,今の事業に繋がったのです。現在はISACの事務局長としてイベント運営に携わっており,まさに人生を変える一大イベントでした。

これ以外に「ニコニコ学会β」の宇宙研究会でも運営に携わっており,プロ・アマ問わず「野生の研究者」を対象として,シンポジウムを開催している湯村さん。確かに言われてみれば,世の中の潮流とは無関係に,自分の興味を最優先させた開発事例を一堂に並べ,ショートプレゼンテーションを行うというスタイルは,⁠ニコニコ学会β」を彷彿とさせます。

湯村さんは「ホームネットワーク系のガジェットをつくるスタートアップは,いま世界中で爆発的に増えており,Kickstarterなどでも多数出展されています。もっとも,こうしたガジェットは日本の大手家電メーカーでも,10年以上前から考えられていたものばかりです。しかし大手は『コンプライアンス』⁠市場規模』⁠相互接続性』などを理由に参入するのをためらったり,参入しても失敗を続けていました」と振り返ります。

これに対して,そうした「大手の事情」をまったく気にしないスタートアップが,時代の追い風を受けてガンガン進んでいるのが,世界の潮流なのだとか。本イベントの発表者も,まさに「野生のホームネットワーク研究者」であり,本職の研究者より実践面で先を行っているのではないか……そんな風に説明してくれました。

また,大和田さんも「国内の組織としては我々(Facebookのグループページや,⁠おうちハック発表会」⁠が先端を行っていると思っています。しかし,単独でブログなどに家のハックについて言及している人は,とても増えてきています。関連製品(たとえばスマホから操作可能な赤外線学習リモコン)が増えてきたことも,ひとつのシンボルとして挙げられるのではないでしょうか」と現状を分析しました。

本イベントの集客もFacebookのグループページを中心に,TwitterとFacebookでなされました。ライトニングトークの発表者も,ほとんどが参加者のなかから自発的に決まったとのことで,コミュニティの活性化ぶりが感じられます。そもそも,今回のようなイベントがスピンアウトして開催されたことが,その「熱さ」を物語っていると言えるでしょう。

一方で海外では,ホームオートメーションが市場としてある程度確立しており,ヨーロッパではknxというプロトコルが大きな市場を形成しているとのこと。これに対してアメリカではControl4など,高所得者階層向けのシアターシステムが昔からたくさんあり,さまざまなベンチャー企業も生まれてきていると言います。これまではデジタルの中で閉じていた行為が,どんどんアナログの世界に浸食してきているのです。

企業とコミュニティの良い関係とは?

このように,まさに世界規模で成長を続けるスマートハウスやホームネットワーク業界。それらがいち早く日本でも勉強会として立ち上がり,企業と連携してコミュニティを形成しつつある様は,日本のコミュニティ文化の成熟ぶりを示す一例と言えそうです。

湯村さんは「主催者本人が『コミュニティを盛り上げたい』と本気で思っていることが大事だと思います。企業として企画する場合も同じで,担当者が仕事だから仕方なくやっていたりすると,盛り上がらないと思います」と回答し,企業人として本気で取り組まれている大和田さんは素晴らしいと賞賛しました。

終了後も飲み物を片手に交流が続いた

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しかし,なかには企業とコミュニティの論理がぶつかり合い,不幸な結果になってしまう例も少なくありません。湯村さんも「ハッカソンやアイデアソンが『流行ってるらしい』⁠低コストで良い事業企画が生まれるらしい』という理由で開催されていますが,そういうイベントは大抵悲惨になっているようです」と警鐘を鳴らします。

また,大和田さんは「ハッカソンではなく『発表会』という形は初めてでしたが,コミュニティ活動の路線としてはずっと変化しておらず,これからもこの路線でやって行きたいと思います。Kadecotの普及という目標もありますが,そこにこだわり過ぎず,これからさらに盛り上がるであろう『ホームハック』の世界をユーザ側から盛り上げるのに貢献するような活動がしたいです」と抱負を語りました。

ハッカソンの成功例として,大和田さんは「Yahoo! Open Hack Day」を挙げました。世界各国のYahoo!で開催されている開発イベントで,24時間でプロトタイプを開発し,Web上で発表するというもの。日本でも2013年から一般参加者を交えて開催が始まりました。自身が主催するハッカソンとは,規模も目的も違うとしつつも「そもそも論に陥ったときには,いつも思い出して参考にしています」と語ります。

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※募集はすでに終了しています

企業が規格を独占する時代から,コンソーシアムを設立して共有する時代,そして広く規格を解放し,コミュニティを巻き込んで浸透させていく時代……。IT業界はそうした移り変わりの最先端に属しています。そこで求められるのはエバンジェリズムやコミュニティマネジメントであり,⁠おもしろがって人を巻き込む力」です。湯村さんと大和田さんの取り組みも,まさにその1つなのかもしれません。

著者プロフィール

小野憲史(おのけんじ)

特定非営利活動法人国際ゲーム開発者協会日本(NPO法人IGDA日本)代表。ゲームジャーナリスト。3匹の猫の世話をしながら,奥さんの弁当を作って仕事に送り出す日々。

メール:ono@igda.jp
Facebook:https://www.facebook.com/kenji.ono1

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