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第10回 AWSもBaiduも採用! クラウド/データセンター市場に拡がるFPGAブームを牽引するXilinxの強み

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FPGA関連の開発環境をひとまとめにしたアクセラレーションスタック

Xilinxは2016年11月14日,FPGAをベースにした「リコンフィギュレーション可能アクセラレーションスタック」を発表しています。これはマシンラーニングにおける推論,ビデオトランスコーディング,SQLによるビッグデータ分析など,クラウドネイティブなFPGAアプリケーションを開発するために必要な環境をひととおり提供するもので,開発ボード,リファレンスデザイン,ライブラリ,フレームワーク,OpenStackサポートなどが含まれます。開発ツールやライブラリはすべて業界標準のもので,アプリケーションの開発から導入までを最短ルートで進めていくことを目指しています。なお,OpenStackをサポートするFPGAは現時点ではXilinxのみで,4月にリリース予定の「OpenStack "Ocata"」より,OpenStack側からアクセラレータとしてのFPGAの管理とプロビジョニングを容易に行うことができるようになります。

Xilinxが発表した"リコンフィギュレーション可能アクセラレーションスタック"の構成。マシンラーニングやビデオトランスコーディング,データアナリティクスといったアプリケーションワークロードにハードウェアを最適化させるための開発環境がひととおり提供される

Xilinxが発表し

競合はIntel - 正式リリースが待たれる待たれる14nmの新FPGA

「XilinxのFPGAはマシンラーニングにおける推論で,競合の2 - 6倍の演算効率を実現している」― Xilinxのクラウドコンピューティング部門でディレクターを務めるアンディ・ウォルシュ(Andy Walsh)氏が言う"競合"とはずばりIntel + Alteraのことです。

Xilinx クラウドコンピューティング担当 ストラテジックマーケットデベロップメント ディレクター アンディ・ウォルシュ氏

Xilinx クラウドコンピューティング担当 ストラテジックマーケットデベロップメント ディレクター アンディ・ウォルシュ氏

Intelは2015年,2兆円近い金額を支払ってFPGAベンダのAlteraを買収し,これを母体にしてFPGAの開発に取り組んできました。現行モデルで20nmの「Arria 10」はCPU(Xeon)とFPGAをMCPで統合した製品で,XilinxのUltraScaleのように複数のFPGAをプーリングするタイプではありません。このためウォルシュ氏は「CPUパッケージにFPGAを集積すると,プーリング構成とは異なり,アプリケーション使用率が大幅に下がることになる」と批判しており,アクセラレータとして中途半端な役割しか果たせないと強調します。

一方,Intelが現在サンプル出荷中の「Stratix 10」は,IoTによるニーズの拡大をにらんだデータセンター向けの14nmのFPGAで,Intelが「業界最高の性能と電力効率」⁠データセンター/クラウド事業者にかつてないパフォーマンスとイノベーションをもたらす製品」と強い自信をもって世に送り出そうとしているものです。ウォルシュ氏はこうしたIntelの主張に対し,少なくともマシンラーニングの推論(INT8を使用)においては,⁠演算効率においてXilinxのほうが上」と反論しています。Stratix 10は2017年中に出荷が開始される予定ですが,正式リリース後にあらためて両者の性能を比較してみたいところです。

マシンラーニングの推論におけるXilinxのFPGAとIntel + AlteraのFPGAの性能比較。Xilinxは「2~6倍の性能差がある」と主張するが,Startix 10は現在サンプル段階なので,詳細は未定。リリース後の検証が待たれる

マシンラーニングの推論におけるXilinxのFPGAとIntel + AlteraのFPGAの性能比較。Xilinxは「2~6倍の性能差がある」と主張するが,Startix 10は現在サンプル段階なので,詳細は未定。リリース後の検証が待たれる


クラウドが多様化し,多くのアプリケーションワークロードが稼働するようになるにしたがい,ハードウェアの最適化が課題として議論されるケースが増えてきました。FPGAやGPUに対するニーズの増大もそうした影響を受けています。クラウドはハードウェアの呪縛からユーザを解放する存在と言われてきましたが,やはりクラウドであってもアプリケーションに適したハードウェア構成で動かしたいとユーザが思うのは自然の流れでしょう。アプリケーションやアルゴリズムに応じて自由に回路を書き換えられるオールプログラマブルなFPGA,そしてF1インスタンスのようなクラウド版FPGAの登場は,本当の意味での"Infrastructure as Code"の時代が到来したことのあらわれだといえそうです。

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Twitter(@g3akk)やFacebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。

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