無関心な現場で始める業務改善

第3回 目的なき業務改善は失敗する!

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現場のための大義名分を作る

経営の大きな課題を業務改善の目的にそのまま当てはめて現場が動ければ一番よいのですが,なかなかそうもいかないのは先の例のとおりです。

なんと,我々が過去に業務改善のお手伝いをした中で,⁠楽して儲ける組織とプロセスを作る』という目的を現場が作った会社があります。

この会社で,最初に出てきたのは「サボれる仕組みを作る」でした。カッコ良く言えば,効率的に仕事をすることですが,このような泥臭い言葉のほうが,現場はピンと来るわけです。具体的に何をやったかは,徐々にお話をしますが,業務プロセスを見直し,組織編制や意思決定のパスの再設計,情報システムの変更などを行ったのですが,動機は「サッサと帰りたい」でもいいわけです。

したがって,目的は現場がわかる言葉で作ってしまうこともアリです。⁠コスト削減のために業務改善を行う」と宣言すると現場は一歩引いてしまうので,⁠残業ゼロの職場を目指すための業務改善」⁠サボれる仕組みを作るための業務改善」など,業務改善を目的ではなく,目的達成のための手段とするために,大義名分を「残業ゼロ…」⁠サボれる…」としてしまうのです。

そのときに1つだけ注意!!

「みんながサボれるように」と書くと,だいたい,経営者からは「真面目にやれ!」と言われるので,やはりそこはそれっぽく「楽して儲ける組織を作ることが目的です」と言い,補足説明として「組織を利益体質にすること」と付け加えておきましょう。

ソフト改革も目的に入れよう

目的の中には,業務改善によって直接的に効果をもたらす性質のもの(いくらコスト削減ができたか)と,間接的に効果をもたらす性質のものがあります。

後者の間接的に効果をもたらすものとしては,⁠一緒に改善活動を行うことで,部門内に協力関係ができた」⁠部門間でコミュニケーションが取れるようになり,以前より問題解決が迅速に行われるようになった」などです。

これら間接的な効果は,業務改善の結果論としてもたらされたものですが,これを最初から改善の目的として定める場合もあります。実はこれが,第2回で述べたソフト改革の部分です。

先ほど述べた「楽して儲ける組織を作る」も,ソフト改革の目的と取ることもできます。しかし,ソフト改革だけでは効果が現れるまで時間がかかるなどの問題があるので,ハード改革が必要となります。

目的を定めたら,今度は具体的な改善目標を定めなければなりません。⁠目的」を実現するために,⁠いつまでに,どのレベルまで到達」していないといけないかを表す「目標」を定めます。

目標には2種類ある―定量的目標と定性的目標

目標には定量的な目標と,定性的な目標の2種類があります。

定量的な目標として,QCDなど,何がどれだけ改善されたか,それらは金額換算するといくらになるかという指標を定量的に設定し,改善による効果を目に見えるようにすることが必要です。

たとえば,Q(品質)であれば「不良品の発生率を1年間で50%削減する」⁠C(コスト)であれば「製造加工費を20%削減する」⁠D(納期)であれば「納期を半分にする」などです。

この定量的な目標を実現するために,改善指標としてKPI(Key Performance Indicator)を設定します。KPIについては本連載の後の回で詳しく述べますが,少しだけお話すると,定量的目標が1つのKPIだけで実現されることは,まずありません。

コスト削減10%が目標の場合,

  • 開発段階で,部品選定基準を変えて,部品コストで△1%
  • 製造工程の加工プロセスの見直しの最適化により△3%
  • 物流と購買機能の見直しにより△4%
  • 工程管理システム導入により△2%
  • で合計10%

    のように,さまざまな部門のさまざまな改善の集大成としてはじめて実現されます。

    製造部門の△3%を例に取れば,製造工程でも,パケットから取り出す工程,治具にセットする工程など細分化したプロセスのちょっとずつの積み重ねにより,実現されるものです。

    もうひとつ,定性的な目標は,前述したソフト領域の目的の実現などが当てはまりやすくなります。コミュニケーションを良くする,笑顔溢れる職場にするなどは,数値化できるものではありません。

    ハード改革で,⁠あるべき姿(To-be Model)⁠と言いましたが,ソフト改革では「ありたい姿」をイメージしてみるとよいでしょう。ポイントは「状態をイメージすること」です。こんな会社になったらいいな,こんな職場になったらいいなと思い描きながら,その中で仕事をしている自分や仲間をイメージすることです。

    これらをきちんと文言化して,定性的な目標として設定をします。

    改めて言いますが,定性的な目標を実現するために業務改善をするのではありません。企業課題である大きな目的を解決するために業務改善に取り組みますが,定性的な目標もあらかじめ定めてしまうことで,間接的な効果を狙ったり,組織の風通しを良くしていきます。

    業務改善の具体的な流れ

    業務改善の大まかな流れを図1に示します。この図では,業務改善を実行する前までしか書いていませんが,理由は追ってわかってくることでしょう。Plan-DoのDoが業務改善の実行ですが,きちんと仕掛けを作れば,業務改善はいくら無関心な現場であろうと,自然に回るようになります。

    図1 業務改善の流れ(実行前まで)

    図1 業務改善の流れ(実行前まで)

    さて,次回以降はいよいよ業務改善の本題に入ります。

    具体的に対象を絞り,どのようにメンバーのアサインを行うか,現状分析に入る前までの準備について,第4回は「対象を決め,問題を共有する」というテーマでお話をします。

    著者プロフィール

    世古雅人(せこまさひと)

    メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

    2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

    株式会社カレンコンサルティング

    URL:http://www.carren.co.jp/

    コメント

    • Re:

      なるほど、元凶は、手段と目的の混同ですな!
      しかし、問題は、そこではなくて混同が頻繁に見落とされること。
      企業でも政府でも駄目組織に見られるのはセクションや階級が違うと、その都度、手段や目的が異なること。
      これでは分裂病状態!

      特に駄目な日本政府は、自分らが「何のために存在するのか」という初歩的な自覚がないから納税者の利便無視の様々なムダが肥大化するところ!
      税制でも行政サービス供給の代金であることを認識しないで、ひたすら「欲しいから、もっとよこせ」になる!
      値段を上げるならば、どこをどう改善したのか示さなければならない。
      足りないならば、頭が足りないということで行政リストラで対処しなければならない。
      やることをやらないで「納税は義務だ」は通らない!!!
      いずれは「日本政府よ廃業せよ」と外圧誘導や内戦として発展するリスクが生じる。

      Commented : #1  石井静香 (2012/07/15, 20:07)

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