無関心な現場で始める業務改善

第4回 対象を決め,問題を共有する

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メンバーはどうする?

さて,対象部門が決まったけど,今度は誰が改善を行うかということは,しばしば問題になります。全員で行うのか,部課長は旗を振るだけで,行うのは一般社員だけなのか。正社員だけでやるのか,派遣や契約社員,アルバイトまで行うのか?

基本は業務に精通している人です。しかし,それだけではなく,異質な視点を持つ人の考えも大切です。業務に精通していなくても,このような異質な視点を持つ人もメンバーに含めるようにします。

基本的な選定基準

  • 該当業務の実務担当者であり,業務に精通していること
  • 課長,部長,マネージャなどのミドルマネジメント層を含めること
  • 正社員以外を含めること。派遣/契約社員/アルバイト/パートであっても実務に精通していれば雇用形態は問わない(ただし,派遣社員の場合は派遣元会社との派遣契約に注意)

異質なものを持っている人

  • 日頃から問題意識が高い人,トンガリ人材
  • 中途入社の社員 など

ほか,業務改善を次世代の成長,学習の場として若手や中堅をメンバーに加えることもあります。

理想は対象業務に関わる人,対象部門全員ですが,実務に支障をきたす場合もありますので,抜擢せざるを得ないでしょう。必要に応じて随時,参画してもらうようにし,メンバーから自部門への情報共有を常に図っておくことが重要です。

ここで,本連載のタイトルになっている「無関心な現場」を思い描いてください。業務に精通しているけど,改善意欲はない人だらけです。メンバーに入れて,果たして機能するのでしょうか?

異質人材は活性剤の役割を果たす

ここで,異質を持っている人の出番です。問題意識が高い人を入れることはわかるけど,トンガリ人材など入れてしまったら,文句ばかりでまとまるものもまとまらないと心配される方もいるでしょう。

一般に,⁠あいつはうるさい奴だ」と言われる・思われている人には,大きく分けると2つのタイプがあります。

中途入社のAさん

Aさんは,元々,中途入社で他社を経験していることもあり,社内業務の不備がどうしても目に付いてしまい気になってしかたがない。ついつい,こうしたほうがいいと,都度,課長に提案をする行動力もあり,部下からの信頼も厚い。しかし,無関心な課長は「うちにはうちのやり方があるから」と言い,うるさい奴だと思われ,まともに話も聞いてくれない。それがAさんの不満をさらに加速させる。

中堅社員のBさん

Bさんは,新卒で入社して10年目の中堅社員。職場のリーダーを任されており,若手にあれこれ文句は言うし,課長にも現場の問題点,不満を言う。しかし,自分は何も動かず,達者なのは口だけ。

Aさん,Bさん,どちらも共通していることは,周りから見ると⁠文句の多い人⁠であることです。上司からすれば⁠扱いにくい部下⁠とも言えます。ただし,問題意識の表現方法と,行動が伴う・伴わないの観点で見るとAさん,Bさんには大きな違いがあります。Aさんの問題意識は「職場を良くしていこう」という改善意欲が動機の源泉で,キッカケを上司である課長に求めている。Bさんは自分で動くことなく,ただ部下や上司に文句を言うだけ。共通していることは⁠問題意識が高い⁠ということですが,行動や動機の源泉は正反対です。

“うるさ型人材”は良い波風を立てる

文句の多い奴だからと避けてしまうと,改善意欲が強いあまりに,文句を言う行動を取ってしまうAさんが持っている「変革の芽」をつぶしてしまうことになります。

逆に,Bさんのタイプがメンバーで,それも中核(コア)メンバーとして据えてしまうと,周りにはあまり良い影響を与えません。

一概に,文句が多い奴はややこしいからとメンバーには加えないのではなく,Bさんのように,問題意識は高いけど改善意欲は低く,文句だけで動かない人なのか,Aさんのように,問題意識も改善意欲も高い人なのかを見極める人材の目利き力というものも必要となります。

Aさんのタイプのような⁠うるさ型人材⁠は,無関心な現場にとっては「良い波風を立てる」役割としてとても重要です。⁠文句を言う」⁠不満を言う」ことはエネルギーと勇気を持っていないとできません。変革型人材の特性とも言えます。

改善の理想は「改善意欲があり,興味があれば誰でも参加OK!」なことです。

自発的な組織や現場では,自ら手を挙げで,⁠まずはやってみる」という行動も多く見られますが,無関心な現場ではこのように,まずは最初の取っ掛かりとして,対象部門を決めて,メンバーの選出を行い,異質なものを持つメンバーを少し混ぜておくことがポイントとなります。

「問題共有」の前に「改善の思い」を伝える場を

対象の業務や部門が定まり,メンバーの選定ができたら,メンバーを集めるます。連載第2回でお伝えした「改善のグランドデザイン」が固まっていれば,まずはこのグランドデザインをしっかりとメンバーに伝えることが最初となります。そこには,コアメンバーで練り上げた「改善の思い」が含まれているはずです。

最初は⁠問題の共有⁠の場ではなく,⁠思いを伝える場⁠という位置付けにします。メンバー同士の信頼関係が築かれ,当事者意識が芽生えてこないと,そもそも問題を共有しようという状態にはなりません。

“場⁠そのもののコントロールも,ファシリテーションスキルなど必要となりますが,それは追ってお話をしましょう。

第5回では,⁠現状調査は,マニュアルと業務フローから」というテーマで,業務の実態を徐々に解き明かしていきます。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/