無関心な現場で始める業務改善

第9回 コンサルティング会社や専門家がやってはいけない業務分析

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コンサルティング会社や専門家がやってはいけない業務分析

ほとんどのコンサルティング会社は,現状調査から業務分析まで行ってしまいます。さらに,改善計画も細かく作成します。

しかし,業務改善そのものはコンサルティング会社がやってくれるものではありません。ところが,コンサルタントが調査・分析し,改善計画まで作り上げて,⁠実行するのはあなたがた現場です!」というパターンもかなり見られます。

一般に,コンサルティング会社はノウハウや独自のツールを山ほど持っているので,彼らからスキルやノウハウのトランスファーを受け,自分たちの糧にすると考えれば,支援を依頼することはプラスと言えます。

コンサルティング会社の多くは,一般にギャップ・アプローチという手法をとります)⁠⁠あるべき姿(As is Model)はAです,現状の姿(To be Model)はBです。したがって,このギャップが御社の課題であるCです」と,偉そうなことを言います。基本,終始,⁠べきだ論」に徹します。

 ギャップ・アプローチとステート・アプローチ

図 ギャップ・アプローチとステート・アプローチ

ギャップ・アプローチと対極的なものがステート・アプローチです。⁠べきだ論」ではなく「ありたい姿論」です。どちらも大事であることは,第2回で述べました。それぞれ,ハード・アプローチとソフト・アプローチと呼びました。

現状調査から調査,分析までコンサルティング会社に任せてしまうと,⁠コンサルティング会社=業務改善をやってくれる会社」と勘違いします。この瞬間に,コンサルティング会社に依存してしまう構図ができあがります。これはよろしくない状態です。仮に我々が,⁠何でもかんでもやってくれ!」と言われたら,⁠それじゃ御社のためにならないですよ」とお断りすることになるでしょう。

自分や自社の業務なのに,他人に良くしてもらうという考え方がそもそもいかがなものか?と。人間の体の体質改善と同じで,健康を気にする人なら健康を害する前に自分の体を気にかけるものです。

少し遠回りをしましたが,コンサルティング会社が業務分析を行ってしまったらダメです。現場にやらせるのもダメです。一緒にやることがベストです。

自分でやるから意味がある

当社,株式会社カレンコンサルティングは,自社のアプローチを「プロセス共有型」と呼んでいます。お客様にやらせることはしない,逆に我々が全てを行うわけでもない。一緒に作り上げるプロセスを共有する。わかりやすく言えば,一緒に汗水流す過程(プロセス)を共有することを大事にしています。

自分でやるから意味があります。他人が作り,他人が調査・分析した結果を用いて,改善だけ実行するのはつまらないでしょう。

自ら業務フローを作り,現状調査を行い,問題発見,原因分析を行うことで,将来的に同じ改善が必要な場面に出くわしても,自分たちで解決できるようになります。

アナログ的な作業と場が重要

さて,解決策を考える場は意図的に仕掛ける必要があります。模造紙や付箋紙を使いながら,アナログ的にワイワイガヤガヤと進めます。

そのとき是非,自分たちで書いた業務フローを大きくプリントアウトし,じっくりと眺めながら進めてみてください。手元に何もないままディスカッションを行うよりも,はるかに地に足がついた有意義なディスカッションになるはずです。

また,ノートパソコンなどはあえて使わないで,⁠自分の業務」⁠自部門の業務」を前工程・後工程を受け持つ他部門の人へ伝え,抱える問題点と自分なりに考えた解決策を伝えましょう。自部門のアウトプットが,後工程でどのように役立っているのか?自分の担当業務で不備が残ったまま後工程に流すと,どんな手直しが発生し,どのくらい無駄なコストが発生するかなども,このアナログ的な場を通じて見えてきます。

相手の業務プロセスと,それを担当する担当者の顔と業務が一致すると,皆さん自身の仕事のアウトプットも高くせざると得ないでしょうし,何かあったときには一人で悩まずに,みんなで解決する。このような協力体制もアナログのメリットです。

カッコいい問題解決手法はいらない

解決策を論じる際には,我々も問題解決を効率良く進めるために,ロジックツリーをはじめ,様々な手法を取り入れます。MECEのような横文字が入るとカッコよく見えたりするので,つい真似をしたくなりますが,現場ではほとんど必要ありません。

ツールや方法論に走りすぎると,これらに頼り切ってしまったり,ちっともできていないのに,できたような気になってしまいます。その結果,どうしても小手先の対処療法ばかり出てきて,使い物にならないケースがほとんどです。

したがって,カッコいい解決手法よりも,現場が理解し進めることができる問題解決手法が望ましいです。是非皆さんも,アナログ的な場を持つことをオススメします。

自らPlan,自らDo!(考えたことを実行に移すために)

無関心な現場を当事者にするため, "気づきのプロセス"と"自分が困るプロセス"の飴と鞭を使い分けてきました。そしてようやく,

  • 自分でフローを作り現状調査を行う
  • 自分で業務分析を行い,原因を見出す
  • 自分で解決策を考える

ところまで来ました。

「自分で考え,自分で実行する」⁠その次は具体的なスケジュールを立てながら,細かくタスクに落とし込んでいきます。これが改善計画です。この改善計画も今回のテーマと同様に「コンサルティング会社や専門家がやってはいけないこと」です。なぜなら,改善計画を立てたら,やがては改善実行のフェーズに入ります。

「自らPlan,自らDo!」がポイントです。ここまで自分たちで問題発見から原因分析まで行ってきたので,⁠自分たちで作った計画は自分たちでやろうよ!」が原則です。

業務改善の初期段階から"当事者"としてしまうプロセスは,意図的にやらざるを得ない環境を生み出し,無関心な現場に対するレバレッジは非常に強いものがあります。

次回は,⁠タスクに落とし込み,改善スケジュールを立てる」というテーマで,実務寄りのお話をします。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/