無関心な現場で始める業務改善

第15回 「職種別業務改善のポイント」と「やめる勇気と決断」

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生産性を高め,効率も上がったがために,余計に仕事が増えて忙しくなることもあります。今回は,具体的に「本社・管理系業務」「開発・設計系業務」の2つを例に,業務改善のヒントをお伝えします。

生産性を高め,効率化したら余計に忙しく?

直接部門,間接部門に関わらず,経営者からは「生産性を高めろ!」⁠もっと効率的に仕事をしろ!」と言われるのは,昔も今も変わりません。言われ続ける現場の身としては,⁠これ以上,どう効率化しろと言うのか?」と喉元まで出かかった声をグッと堪えることもあるでしょう。

現在はIT化も進み,業務そのものは情報システムの恩恵にあやかって,システム的には効率化は進んでいます。その一方で,システムで解決できない仕事はむしろ増えてきています。「人間が頭を使い・考え・判断し・行動する」部分は,決してシステムではできないことです。

業務改善は,ミス・トラブルなどの後追い的な仕事をなくすことで,コストを下げる・品質を高める・納期を短縮することを実現していくものです。結果として,仕事の上でも,気持ちの上でもゆとりもでき,できた時間を使ってより付加価値の高い仕事を行う,このような理想論は誰しも描きます。業務改善のモチベーションの1つにもなります。

しかし,⁠1つ山を越えると次の山がすぐ待っている」状態に陥ることも,過去に改善で失敗をしてきた人は学習してしまっています。効率化を進めた分,余計な仕事が割り当てられて,結局はトータルの仕事量は何も変わらず,時間に追われるというケースです。

景気の低迷などにより,どこの会社も現場は時間短縮を強いられるものの,仕事そのものが減るわけではありません。もっと時間が欲しいと嘆きつつ,取り組んだ業務改善で生まれたゆとりの時間……,さぁこれまでできていなかった付加価値を生み出す仕事も着手できるぞと思いきや,余計な仕事を突っ込まれるわけです。結論から言えば,あなたが部門トップや経営者でない限り,これを現場側で防ぐ術はありません。ただし,これまで14回に渡る本連載を読まれて実践をされていれば,⁠どうすればできるようになるか?」と考える習慣や部門間の連携もできあがっているはずです。したがって,山を越えたときの次の山の高さは高くとも,より容易に超えられるようになっています。

さて,本題に戻します。最初は本社・管理系業務で考えてみましょう。

本社・管理系業務の場合

本社や管理系,いわゆるスタッフ部門の業務は製造現場のようなライン業務とは異なり,大きく分けると⁠ルーチン業務⁠⁠ルーチン業務以外⁠に大別できます。

"ルーチン業務以外"は,さらに「企画業務」「管理業務」に分けることができます。これらの業務は,本社・管理系業務の中でも特に中枢業務として位置づけられます)⁠

本社・管理系業務

図 本社・管理系業務

「企画業務」には,戦略立案,経営計画策定などの経営企画業務,アライアンス・提携に関わる調整交渉業務のような全社に影響を及ぼす比較的規模の大きな業務から,事業単位ごとの商品戦略,販売戦略などを練る事業企画,商品企画の業務もあります。

「管理業務」には,専門的知識とスキルにより財務的な計画や運用,全社の人事制度設計,情報戦略立案と運用,重要な法務に関する業務が該当します。

"ルーチン業務"は日常的にそれほど大きな変化がなく,かつ繰り返し発生する比較的単純な定型業務のことを言います。高度なプロフェッショナル性は求められず,作業・処理的な要素が強くなります。また,"ルーチン業務"は先の企画業務や管理業務の中にも存在し,人事部門であれば福利厚生や給与計算業務が,経理部門であれば月々の請求書発行業務などは毎月,同時期に同じ業務を行います。また,どの部門にも共通して,資料収集や庶務的な業務があります。

以上を踏まえ,本社・管理系業務の業務改善の対象は,ルーチン業務が大部分を占めます。ルーチン業務を効率化する際には,一般的に次の視点で考えます。

ルーチン業務の効率化

ルーチン業務の効率化の視点は下記の6つが基本です。

  • (1)やめる
  • (2)簡素化
  • (3)システム化
  • (4)集中化
  • (5)標準化
  • (6)移管

1つずつ,順番に見ていきましょう。

(1)やめる

業務がなくなれば,業務改善の対象の存在がなくなるので,改善をする必要はありません。大事なことは,⁠なぜ,この業務が必要なのか?」と問い,考えることです。

特に付加価値を生むこともなく,何となく昔からやっていたものの,誰も利用しない社内的なサービス,無意味で複雑な決裁承認や稟議プロセスなどが意外と身近に見つかるものです。

あとは,⁠やめる勇気と決断だけ」になります。このように書くと,それができれば苦労しないよ!と思われることでしょう。詳しくは後述します。

(2)簡素化

業務をやめることはできないが,簡単にするということです。

手間や工程が減ることでミスやトラブルも減らすことができます。社内で用いている報告書の書式への工夫や,社内回覧を全員に回すのではなく1部だけ誰でも閲覧できるようにすることで無駄が省けます。また,簡素化することで通常はスピードも向上します。

(3)システム化

システムや装置に置き換えられる業務は置き換えます。イントラネットの活用,データや情報の共有を積極的に進めることを検討します。

こう書くと,いかにも教科書的であり,企業実態としては既に一般的な業務に関わるシステム化はほぼ,できあがっています。

ここで考えたいことは,⁠システムに置き換えられないと思い込んでいる人間系の業務」のシステム化です。現状業務の可視化を最初に行っているので,業務プロセスのどこからどこまでをシステムに置き換えられるか,おおよその見当も付けられるだけの技量は身についているはずです。

(4)集中化

共通点が高い業務,似たような処理のルーチン業務は1ヵ所1部門に集約します。

各事業部で管理や庶務の業務はほとんど変わりませんが,分散して行われているケースが多く見られます。1ヵ所に集約することで,規模の経済性が働き,かつ業務品質も向上します。

大手の企業では関連会社などに対するシェアードサービスの形態で見られます。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/

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